随分と広い範囲の痛みがあるようですね…それ、もしかしたら上腕三頭筋が原因かもしれません！
上腕三頭筋…？上腕二頭筋は聞いたことがあるけど…今日も教えてください！
もちろんです！上腕三頭筋は肩だけでなく、腕全体の特に裏側（後ろ側）の痛みに関わりやすい筋肉なんです。今回のブログ記事も参考になれば幸いです！
もくじ
四十肩・五十肩を治すための基礎知識（まずお読みください）
以前のブログ（【四十肩・五十肩】痛む場所は肩だけ？腕も痛いのはなぜ？）でもお伝えしたように、四十肩・五十肩は何らかのきっかけで肩関節の組織が傷つき、その傷の修復を行うべく起きる炎症を本態とする病気です。炎症が起きている間に生じる強い痛みやそれに伴う可動域制限、また炎症後には組織がカサブタのように硬くなってしまうことによる可動域制限などが生じます。
また炎症による痛みが生じると関節がずれないように（傷口がそれ以上広がらないように）筋肉が強く収縮し、炎症が治った後も収縮が持続してしまうことがあります。この筋肉の持続的な収縮は血行障害や神経の挟み込みなどを引き起こし、二次的・三次的な痛みや可動域制限を生じさせます。ここまでのお話は以下の関連記事にて詳しくお伝えしています。
こういった知識を前提とし、今回は四十肩・五十肩でトラブルが起こす筋肉として肩関節の筋肉の中から烏口腕筋をピックアップし、四十肩・五十肩の治し方として烏口腕筋のセルフケアなどをお伝えしていきます。
上腕三頭筋とは
上腕三頭筋は名前の通り、長頭・外側頭・内側頭という３つの線維（これを解剖学的に頭と言います。ちなみに解剖学用語は基本的に音読みです）に分かれています。上腕三頭筋は二の腕の後ろ側にあり、長頭は肩甲骨から起こり、外側頭・内側頭は上腕骨から起こり、全ての線維が肘にある尺骨という骨に付着します。
長頭はその付着部から肩関節にも作用し、腕を後ろに伸ばす・内側に閉じる作用もありますが、外側頭・内側頭を含む上腕三頭筋全体としては肘を伸ばす作用があります。
起始部：長頭）肩甲骨の関節下結節、外側頭・内側頭）上腕骨の後面
停止部尺骨の肘頭
支配神経：橈骨神経（第６〜８頸神経）
作用：長頭）肩関節の伸展・内転、全体）肘関節の伸展
上腕三頭筋の特徴
上腕三頭筋は四十肩・五十肩においてかなりの確率でトラブルを生じやすい筋肉の１つである印象があります。実は以前のブログ記事で五十肩の治し方として小円筋、大円筋をテーマにした際にも取り上げているのですが、これらの筋肉と上腕三頭筋長頭の隙間を２つの神経が通過します。
１つは肩周りに枝を伸ばす腋窩神経で、腋窩神経が通過するのは上腕三頭筋長頭、小円筋、大円筋、上腕骨で形成される外側四辺形間隙と言います。
そして、もう１つは腕全体の後ろ側に枝を伸ばしていく橈骨神経で、橈骨神経が通過するのは上腕三頭筋長頭、大円筋、上腕骨で形成される三角間隙と言います。
ご覧の通り上腕三頭筋はどちらの神経にも関与するため、上腕三頭筋にトラブルが生じるとどちらか、もしくは両方の神経を挟み込み、肩周りの痛みや二の腕や前腕、ときには手の甲や指までの痛み・しびれを引き起こすことがあるのです。
このような構造的な特徴から、四十肩・五十肩を治していく上では上腕三頭筋へのアプローチが大切になってくることが多い理由の１つがここにあります。
上腕三頭筋と痛み・可動域制限
上腕三頭筋による痛みはさまざまなパターンがありますが、主に肘関節周囲の痛みを生じます。ただし、上述したように神経の挟み込みを起こしていると肩周りの痛みや上腕や前腕の後ろ側、手首や手の甲、指先の痛みを発生させることがあります。
また、上腕三頭筋のトラブルでは肩関節を上げる動作や肘を曲げる動作において可動域制限が認められます。また、コリが強くなっていると肘を伸ばすような動作（テニスのバックハンドや腕立て伏せなど）でも痛みが生じて力が入らないなどのことが起きることがあります。
上腕三頭筋にコリができるきっかけ
上腕三頭筋は持続的な負荷（長時間の運転や支えがない状態でのデスクワークなど）や、筋肉の酷使（テニスや腕立て伏せ、杖の使用など）でコリができやすいです。
ただし、上記のような明確なきっかけがなくても加齢によって筋肉の水分量が減ってしまっていたり、筋力低下があったりすると、日常生活の何気ない動作の反復でも傷ついて炎症につながることが考えられます。
上腕三頭筋の検査（必ず行いましょう）
上腕三頭筋のセルフケアをする前に検査を行うことをおすすめします。
主には肩や肘を動かした際の痛みや可動域をチェックしておきましょう。万歳をした時や肘を曲げた時に二の腕の後ろ側の痛みやつっぱり感で可動域制限が認められることが多いです。また、コリが強くなっていると肘を曲げた時だけでなく、強く肘を伸ばした時にも痛みが生じることがあるので、肘の動きもチェックしておきましょう。
事前に肩や肘を動かして可動域と痛みの具合を覚えたら以下のセルフケアをお試しください。
四十肩・五十肩の治し方 上腕三頭筋のセルフケア
筋肉に対するセルフケアは①ほぐす、②伸ばす（ストレッチ）の順番で行うことをおすすめいたします。
これは筋肉に持続的な収縮やコリが発生している場合、いきなり伸ばそうとしても筋肉の全長が伸びずにある部位は縮み、ある部位は伸びるといったことが起こり得ます。すると、伸びすぎた部位に傷がつくと行ったことが起こり得ますので、まずは硬そうな部位を探し出してほぐすのが良いでしょう。
しかし、上腕三頭筋のストレッチは可動域がないとかなり難しいです。むしろ、今回ご紹介する上腕三頭筋のストレッチができる場合は四十肩・五十肩がかなり改善してきているはずです。お体の状態に合わせてになりますが、ほぐしを中心に取り組んでいただければと思います。
手前味噌ですが、ほぐし・ストレッチをまとめた動画があります。以下に動画から画像を切り抜いてほぐし方の手順もお伝えします。
上腕三頭筋のセルフケア（初級編）：ほぐし方
まずは肘を伸ばし、硬くなる二の腕の後ろ側にある上腕三頭筋を確認しましょう。触ってみて気になるところ（硬くなっていそうなところ）を見つけ、つまんだり押したりしてみてください。
脇の下で他の筋肉と交差する場所は触り分けが難しいです。セルフケアでは大雑把でも良いので、気になるところを中心にほぐしていってください。
30〜90秒くらいを目安にほぐしていきます。痛みなどが出る場合は許容範囲内にとどめて行うようにしてください。
上腕三頭筋のセルフケア（中級編）：ストレッチ
手を挙げ、肘を曲げて、余裕があれば写真のように体の後ろに持ってきてさらに反対側の手を使って深めていきます（これができるようであれば四十肩・五十肩はかなり改善できているはずですが…）
ストレッチも30〜90秒を目安にし、痛みは出さずに伸び感や気持ち良い感じを大切にして行ってください。
上腕三頭筋のセルフケア（上級編）：ほぐし＋ストレッチ
上級編のセルフケアでは上腕三頭筋をほぐすために使う硬めのボール（テニスボールなど）や結び目を作ったタオルをご用意ください。
横向きに寝て上腕三頭筋のストレッチのポジションを作り、伸びた上腕三頭筋で硬いと感じる部分にボールもしくはタオルの結び目を当てて体重を乗せます。
腕や体を動かしてボールやタオルの結び目を当てる位置を変えたりしながら、上腕三頭筋をストレッチしながらほぐしていきます。
ほとんどの方はかなり痛いと思いますので、痛みに耐えられる範囲で30〜90秒を目安に行ってください。
上腕三頭筋のセルフケアは以上になります。
セルフケアを行った後に事前にやった検査（可動域や痛みのチェック）を再度行い、改善が見られるようであればぜひ継続してみてください！
その他の注意点
繰り返しになりますが、上腕三頭筋長頭は小円筋・大円筋・上腕骨と構造的に近い関係にあり、神経の挟み込みが起きやすいという特徴があります。
このような特徴から、その他の筋肉のセルフケア（小円筋、大円筋）も行うと良いでしょう。
また、上腕三頭筋の中でもより奥にある内側頭の下を橈骨神経が通っていくため、ここのケアも重要になってきます。このような特徴もあることから、ほぐしやストレッチをしっかりと行っていくことが大切です。
今回の参考サイト、参考書籍
Valerie DeLaune 著, 伊藤和憲 監訳（2015）. トリガーポイント治療 セルフケアのメソッド 株式会社緑書房
本日のまとめ：上腕三頭筋のケアは重要！
今回は四十肩・五十肩の治し方をテーマにして問題を起こしやすい筋肉の１つとして上腕三頭筋をピックアップし、検査やセルフケアの方法をご紹介しました。
上述した通り、上腕三頭筋は構造的に神経の挟み込みを生じやすかったり、日常の何気ない作業でも負担が蓄積してコリやすかったりなど、トラブルを起こしやすい筋肉の１つです。「肩が痛いのになんで二の腕まで痛いのぉ…」とお悩みになっている方は上腕三頭筋が原因の１つであることが考えられますので、この機会にご紹介したケアをお試しください。
今後も四十肩・五十肩において問題の起こしやすい筋肉を取り上げながら、その検査やセルフケアの方法をご紹介していきます。今回のブログ記事も四十肩・五十肩の改善につながれば幸いです。
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五十”肩”とは言うけど、二の腕とか肘の裏側、なんなら手の甲まで痛いのは何でなんだろう…。