医学の常識?非常識?理学療法士が語る健康の都市伝説8選【エビデンス解説】

昔から言うけど、筋肉って使わないと脂肪になるんですよね?

私って視力が悪いんだけど、やっぱり暗いところで本を読んでいたからですよね?

職業柄なのか、こういった質問をよくお聞きします。私も子どもの頃からこのような体や健康にまつわる俗説を常識と思っていましたが、実は科学的・医学的には誤りだったりするものもあります。

今回はお客様からよく質問される健康にまつわる俗説(都市伝説や噂話、言い伝えに近いもの?)について最新の医学研究に基づいてお答えしていきます。ぜひ最後までお読みいただき、健康への誤解を解消していただければ嬉しいです。

俗説1. 筋肉が脂肪に変わる

若い頃と比べると運動もやめちゃったし、筋肉が脂肪に変わって太った…。

と悩む方は多いと思います。

「振袖が立派になっちゃった…」なんて。

もちろん、運動習慣が変わったり食習慣が変わったりすれば脂肪は増えているかもしれませんが、「筋肉が脂肪に変わる」は医学的には完全な誤りです。

筋肉と脂肪は別物

そもそもが筋肉と脂肪は全く違う組織です。簡単に言えば、水と油のように互いに変換することはできません。

  • 筋肉は主にタンパク質でできた”収縮する組織”
  • 脂肪は主に脂質でできた”エネルギーを蓄える組織”

繰り返しになりますが、この2つは細胞の種類からしても全くの別物です。

では何が起きているのか?

運動をやめたり年齢を重ねたりことで実際に起こるのは、主に以下の2つの変化です。

  1. 筋肉量が減少する(筋萎縮)
  2. カロリー消費が減って脂肪が増える(運動量や筋肉量の減少、代謝の変化など)

このような変化が起きると、「筋肉が脂肪に変わった」ように見えるだけ。つまり、これは見た目の問題です。筋肉が直接的に脂肪に変化することはないのです。

運動をやめても体重は変わらなかったけど、なんか体型が変わってきちゃった…。

というお客様がいましたが、これも同じ理由から起きていたのかもしれません。

俗説2. 暗いところで本を読むと目が悪くなる

暗いところで本を読んじゃダメ!目が悪くなるわよ!

と、子どもの頃に注意されたことはありませんか?この暗い環境と視力低下についての関係も現代医学では否定されています。

一時的な疲労は起こる

暗い場所で本を読むと、目にある毛様体筋もうようたいきんという筋肉が緊張し続けるため、確かに目の疲れは生じます。ただし、これは昼間でもパソコンなどで長時間目を酷使した時にも起こりえます。実感としても「目が痛い」「かすむ」と感じることもあるでしょう。

私もパソコン作業を長時間行うとこんな感じになります。

それでも視力低下の直接原因にはならない

研究によると、暗所での読書が直接的に視力を低下させるという証拠はありません。近視などの視力低下の主な原因は

  • 遺伝的要因(親も近視なら子も近視になりやすい)
  • 長時間の近距離作業(スマホ、PC、読書など)
  • 屋外活動時間の不足

特に成長期のお子さんの場合、長時間のスマホやゲーム使用に注意した方が視力保護には効果的かもしれません。

何かに夢中になれることはそれはそれで良いことですが…。

とは言え、暗所での目の酷使で疲労が溜まることも事実です。目の健康を維持するためには、十分な明るさのもとでの読書、定期的な休憩(20分ごとに20秒間遠く(20フィート:約6メートル先)を見る20-20-20ルール)、適切な姿勢の維持などが重要です。

俗説3. 毛を剃ると濃くなる

毛を剃ると濃くなるから、女の子は高校生になるまで脚の毛を剃っちゃダメ

なんて言われた方はいませんか?これもよく耳にする都市伝説です。

見た目の変化は確かにある

毛を剃ると、確かに「濃くなった気がする」体験をします。これには理由があります。

  • 毛は元々先端に向かって細くなっているのに、剃ると断面が出るので太く見える
  • 生えたての毛は色が濃く見える(日焼けなどしていないため)
  • 触った感じもザラザラしやすい

これは男性ならば分かりやすいと思いますが、ヒゲを剃るとこのような感じになりますよね。

私もヒゲが濃い方ですが、一定以上は濃くなっていない気がします。

毛自体は変わらない

毛の太さや色、生える速度は主に遺伝子年齢ホルモンバランスで決まります。剃るという物理的な刺激で毛根の構造そのものが変わることはありません。

臨床的な研究では、定期的に毛を剃った部位と剃らなかった部位で、一定期間後の毛の太さや密度に有意差はなかったそうです。つまり「剃ると濃くなる」は科学的には正しくないのです。

毛を剃ることで皮膚へのダメージが考えられますのでスキンケアを大事にしましょう。

俗説4. 健康のために1日1万歩は必要

健康のために1日1万歩は歩きましょう!

このフレーズ、健康指導の定番ですよね。最近はそこまで必要ないことが見直されてきてご存知の方も多いと感じます。ところで、この「1万歩」という数字はどこから来たのでしょうか?

1万歩説の起源

調べてみたところ、実は「1万歩」という数字、1960年代に日本の歩数計メーカーがマーケティングのために名付けた「万歩計」から広まったものだそうです。医学的根拠からスタートしたわけではないということにびっくりしました。

何気なく知っている「万歩計」から一万歩説がきていたようです…。

実は重要なのは歩数より質

最新の研究では、単に「歩数」だけでなく、歩き方の「質」も重要だと分かってきました。

  • 中強度の身体活動(少し息が上がる程度)を1日30分
  • 週に150分の有酸素運動

これらの方が1日1万歩よりも健康指標の改善に効果的という研究結果もありました。また、ご高齢の方なら4000〜5000歩でも十分健康効果があるとする研究もあります。大切なのは「自分に合った活動量」ということになります。

歩く能力を維持することは重要ですが、現在の自分の身体能力に見合わないことをしてケガをしたり調子を崩してしまっては元も子もありません。ご自身のペースと量で歩けると良いですね。

他にも歩いている時の姿勢や体の動かし方もとても重要です。例えば、「前に出した側のお尻や内腿でしっかりと支えられているか?」なども重要なポイントになります。

1つの参考にご覧ください。

俗説5. 飽和脂肪は体内で固まる

バターとか肉の脂って常温で固まってますよね。だから体の中でも固まって血管を詰まらせるんですよね?

確かに直感的にはそう思うのも気持ちは分からなくはなりです。しかし、実際はどうなのでしょうか…。

脂質の消化・吸収の複雑なプロセス

食べ物に含まれる脂肪(脂質)は、体内では次のようなプロセスをたどります。

  1. 胃から小腸に移動
  2. 胆汁酸によって乳化される
  3. リパーゼという酵素で分解される
  4. 小腸から吸収される

このように、体内に入った脂肪は元の物理的な状態(固体か液体か)とは無関係に、化学的に処理されます。そして①〜③の過程で細かく分解(消化)されてから④小腸から吸収されるため、食べた脂肪が固体のまま吸収されることはあり得ません。

バターを見たらこのまま吸収されそうな気もしないでもないですけれど…。

飽和脂肪の本当のリスク

確かに常温で固体の脂質(飽和脂肪酸)の摂りすぎは心血管疾患のリスク因子です。しかし、それは「体内で固まる」からではありません。

  • 血中コレステロール値(特にLDLコレステロール)を上げる
  • 炎症反応を引き起こす可能性がある
  • インスリン感受性に悪影響を与える可能性がある

などの複雑なメカニズムによるものです。もちろん、常温で液体の脂質(不飽和脂肪酸)でも摂りすぎればHDLコレステロール値を下げたり、炎症反応を引き起こしたりもします。絶対的に「体に良い食べ物」は(おそらく)存在しません。

「体に良い」とされるオメガ3系脂肪酸でも摂り過ぎは良くありません。

俗説6. 中性脂肪が高いのは脂質のせい

中性脂肪が高いので、油ものは控えています!

という方も多いです。しかし、中性脂肪上昇の主原因は実は油だけではありません。

中性脂肪上昇の犯人

中性脂肪値を上げる要因として特に大きいのは

  • 糖質(特に単純糖質)の摂りすぎ
  • アルコールの過剰摂取
  • 運動不足
  • 肥満

実は体内で中性脂肪に変換されやすいのは糖質です。砂糖やパン、白米などの単純糖質を摂りすぎると、余った糖が中性脂肪に変換されます。

見るからに中性脂肪(それ以外も)が高そうな感じですね。

中性脂肪対策で大切なのは

  • バランスの良い食事
  • 適度な運動
  • アルコールの適量摂取
  • 総カロリーのコントロール

結局は食生活全体のバランスが大切となります。

ちなみに中性脂肪は食後30分から4〜5時間かけて上昇し、アルコールを摂取した場合は12時間かけて上昇するとも言われています。逆に絶食をすると数値が速やかに下がります。健康診断などでいろいろと策を弄する方もいらっしゃいますが、速やかに反映される中性脂肪くらいのものなので無駄な抵抗はやめましょう。

俗説7. ブルーベリーは視力を回復させる

目に良いって聞くので、ブルーベリーを食べています!

これもかなり多いと思います。TVCMでも強調されていますし、健康食品の定番になっています。しかし、実際のところはどうなのでしょうか?

色合い的にも目に優しい気もしますが…。

ブルーベリーに含まれる成分と効果

ブルーベリーに含まれるアントシアニンには、確かに次のような効果が期待できます。

  • 抗酸化作用がある
  • 網膜細胞の保護に役立つ可能性がある
  • 目の疲れを軽減する効果がある可能性がある

だからと言って、視力回復は期待できません。

残念ながら、すでに低下した視力を回復させる効果は科学的に証明されていません。「ブルーベリーを食べれば視力が良くなる」というのは、残念ながら誤解です(おそらく「目に良い」とはTVCMでも言っていますが「視力が回復する」は勝手に広まったような気がします)。視力低下の主な原因である近視は、眼球の形状変化によるものなので、食品で改善することは難しいのです。

目の健康に本当に効果的なこと

目の健康維持には、ブルーベリーだけでなく

  • バランスの取れた栄養摂取
  • 適度な休息(20分画面を見たら20秒遠くを見る「20-20-20ルール」など)
  • 適切な照明環境
  • 定期的な眼科検診

など、食事だけでなく、生活習慣全体で目の健康を守ることが重要です。

俗説8. 筋肉痛や筋疲労は乳酸のせい

うぅ…筋肉痛がきつい…乳酸が溜まってるぜ…。

運動後の筋肉痛、おそらく1度は経験されたことがあると思います。限界付近まで運動した時の筋肉が動けなくなる時や、翌日の筋肉痛は「乳酸が溜まっているから」と乳酸が犯人扱いされてきましたが、これも実は古い説なんです。

運動は大事ですが、筋肉痛になるのは億劫ですよね…。

乳酸は悪者ではない

最新の研究では、乳酸(正確には乳酸塩)は筋疲労や筋肉痛の主要な原因ではないことがわかっています。むしろ

  • 乳酸は重要なエネルギー源として再利用される
  • 運動後の乳酸は数時間で代謝されるのに、筋肉痛は翌日から出ることも
  • 乳酸はむしろ筋肉の発達を促進する働きもある

このようなことが分かっています。

筋肉痛の本当のメカニズム

現在の研究では、筋肉痛の主な原因は:

  • 筋線維の微小損傷
  • 炎症反応
  • カルシウムイオンの調節異常
  • 活性酸素の増加

などが複合的に関わっていると考えられています。

効果的な回復方法

筋肉痛から効率良く回復するには:

  • 適切な水分補給
  • タンパク質と炭水化物のバランス良い摂取
  • 軽いストレッチや動的なクールダウン
  • 十分な睡眠

などが大切です。痛いので嫌ですが、理屈で言えば軽く動かした方が回復が早いです。そして特に睡眠中は成長ホルモンが分泌され、筋肉の回復が促進されます。

筋肉痛の時は軽めに体を動かして血を巡らせましょう。

まとめ:科学的知識で健康生活を送ろう!

いかがでしたか?「昔から言われていること」が必ずしも科学的に正しいとは限らないんですね。健康情報は日々更新されていますので、定期的に最新情報をチェックすることをおすすめします。

  • 筋肉が脂肪に変わることはない
  • 暗所での読書が直接視力低下の原因になることはない
  • 毛を剃っても毛自体が濃くなることはない
  • 1日1万歩よりも運動の質が大切
  • 固体の脂肪が体内でそのまま固まることはない
  • 中性脂肪上昇は糖質の摂りすぎも大きな原因
  • ブルーベリーで視力回復はできない
  • 筋肉痛の原因は乳酸だけではない

昔から何となく信じていたものが実は全く違った、なんてことはよくあることです。健康に関する知識をアップデートして、効率的で効果的な健康管理に繋げていただければ幸いです。何か気になることがあれば、いつでも当院にご相談ください。

前回は靴下の形状・タイプが足に与える影響についてを記事にしました。靴下という身近なアイテムも足、ひいては全身に影響を与えます。こちらの記事もぜひお読みいただければと思います。

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