
イテテ…。じっと座っていて、立ち上がる時に腰が痛くなっちゃうんだよなぁ…。血流が悪くなってるんだろうなぁ…。
文明が発達してあらゆるものが便利になった現代ですが、それに伴ってヒトは動かなくなったように思います。何を隠そうこのブログも座りなががらパソコンで書いております。そして、デスクワーカーやドライバーのように1日の大半を座りながら過ごす方も多い現代において、座ることに対する知識を持ち、対策を実践することは大切だと思います。
先に私なりの答えをお伝えすると、座ること自体は悪いわけではありません。ただし、体に優しい座り方や気をつけた方が良いことはある思います。医学的な知識をなるべく簡単にまとめましたので、座る機会と時間の多い方はぜひお読みいただけたらと思います。なお、今回のブログは以下の動画をもとに作成しております。
ブログ記事では動画で触れていない部分もありますので、どうぞ読み進めてください。
もくじ
はじめに:座ることは悪いこと?
数行前に座ることは悪いことではないとお伝えしました。これが今回のブログの1つの答えなのですが、そもそもヒトが座るシチュエーションや目的を考えてみると以下のようなものが挙げられます。
- 疲れた時や落ち着きたい時などの休息としての姿勢
- 仕事をする時の作業姿勢
- 落ち着いたコミュニケーションを取る時など

このように座る姿勢(坐位姿勢)にはさまざまな目的や意味があります。そのため、目的を達成するために坐位姿勢を取ることは問題がないはずです。ただし、あくまで体にとって負担のない範囲であれば…です。
現代人と座り姿勢の問題:なぜ座るだけで体が不調になるのか?
冒頭でも触れた通り、現代人の生活では仕事中にパソコンを使ったり、スマホを操作したり、車の運転をしたりと、座る時間がますます長くなっています。実は、この「長時間座る」という行為自体が体に大きな負担をかけているのです。

座ることで起こる体への影響
一般に長時間座ることで次のような問題が生じるとされています。
- 腰痛:椎間板(背骨と背骨の間にあるクッション)への負荷が増える。
- 肩こり:猫背など不良姿勢によって肩周辺の筋肉が緊張する。
- 血行不良:同じ姿勢を続けることで血流が滞りやすくなる。

特に問題なのは、腰椎前弯という腰骨特有の前に反ったカーブが失われることです。この腰椎前弯が崩れると背骨全体が丸まることになり、長時間・長期間に及ぶとさまざまな不調につながります。
人間の背骨構造:健康的な姿勢には「S字湾曲」が重要
前回ブログで詳しく書いたのですが、ヒトの背骨はS字カーブをしています。この背骨のS字カーブは重力に適応しながら完全な直立二足歩行を可能にする、ヒト特有の重要な構造です。

以下から背骨の構造について復習していきますが、より詳しく知りたい場合は前回のブログをご覧ください。
復習:背骨の構造
前回のブログでも触れていますが、簡単にヒトの背骨の構造について復習していきます。ヒトの背骨は以下のようになっています。

- 頸椎:首の部分で前方向にカーブ。
- 胸椎:背中部分で後方向にカーブ。
- 腰椎:腰部分で再び前方向にカーブ。
- 仙骨:お尻部分で後方向にカーブ。
このS字カーブによって、私たちは立ったり座ったりする際に効率よく体重を支えることができます。しかし、不良姿勢や長時間の座位によって、このカーブが崩れると以下のような問題が起こります。
- 腰椎前弯が減少し、背中全体が丸くなる。
- 椎間板への負荷が増加し、腰痛やヘルニアのリスクが高まる。
ところで、よく聞く椎間板とは背骨の間にあるクッションのような構造物です。そして、椎間板の中にある髄核という組織が飛び出た状態を椎間板ヘルニアと言います。

坐位姿勢と腰への負担:どれだけ負担がかかる?
椎間板への負荷については何十年も前から研究が重ねられています。例えば、5つある腰椎のうち、中央に位置する第3腰椎の椎間板の負荷は姿勢によって以下のように変わるというデータがあります。
- 立位(基準値):100%
- 仰向け:30~40%(最も負担が少ない)
- 坐位:140%
- 坐位で前かがみ:180%
つまり、「ただ座るだけ」で立っている時よりも40%も負担が増加します。さらに猫背などで前かがみになると、その負担は180%にも達します。この状態が続くと、腰痛や椎間板ヘルニアなどにつながるリスクがあります。

前かがみで負担がかかるという点から腰を丸くする(腰椎屈曲)ことで、腰の椎間板に負担が増えることがお分かりになると思います。つまり、腰を丸くしないようにできれば、腰の椎間板への負荷を減らせることになります(あくまで丸くした時と比較して、ですが)。
では、腰が丸くなるシチュエーションを股関節との関係から紐解いていきましょう。
腰が丸くなるのはどんな時? 〜股関節との関係〜
少しだけ専門的な話になりますが、足の付け根にある股関節はさまざまな方向に動きます。股関節の動きの中でも前に曲げる動きを股関節の屈曲と言います。

この関節可動域には参考可動域というものがあり、股関節屈曲の参考可動域は0〜125°とされています。ところで、実際に股関節屈曲をやってみると、股関節を深く屈曲させればさせるほど、骨盤が後ろに倒れ、腰も丸くなることがお分かりになると思います。
つまり、股関節屈曲とは股関節自体の曲げる動き(股関節屈曲)+骨盤の後ろに倒れる動き(骨盤後傾)+腰の丸くなる動き(腰椎屈曲)の複合運動であるということが言えます。

では、股関節屈曲がどれくらい深くなると骨盤や腰椎の動きが伴うのかというのが気になるところです。個人差がありますが、股関節屈曲70〜90°が境界線とする報告が多いようです。つまり、太ももが体幹に対して直角になる角度を超えると腰が丸くなると覚えておいて良いと思います。

この後に体に優しい座り方の実践になりますが今一度、股関節屈曲70〜90°が骨盤・腰椎の動きが出るかどうかの境界線という点を覚えておいてください。
日本において関節可動域は日本リハビリテーション医学会、日本整形外科学会、日本足の外科学会が共同で「関節可動域表示ならびに測定法」としてまとめています。
ところで関節可動域には各部位ごとに測定法が決められており、可動域はあくまで“参考”可動域となっています。“正常”可動域ではないわけです。そもそも人の骨格には個体差があり、他にもさまざまな要因によって参考可動域よりも可動域が狭い場合、広い場合、左右差がある場合などがあります。
また、可動域は基本軸と移動軸の位置関係で測定されます。つまり、これは関節の動きそのものの可動域ではなく、軸と軸の位置関係(言い換えれば体節の位置関係)の角度ということになります。
SNSを見ていると、体が非常に柔軟な人を見て「人の関節可動域はそんなに広くない。柔らかすぎると怪我をする」と言った意見を見ることがあります。もちろん、さまざまな意見があり、真面目に議論(時には議論と呼べるかどうか分からない何か)をしていると思いますが、議論をしている当人同士の前提条件が違うのだな…と思う今日この頃です。誰に向けているわけでもないつぶやきでした。
関節可動域表示ならびに測定法については日本リハビリテーション医学会のHPで一覧や注意点を見ることができます。
体に優しい・正しい座り方とは?医学的視点から解説
それでは、体への負担を軽減するためにはどのような座り方をすれば良いのでしょうか?いくつかポイントがあるので順番に挙げていきます。

①座面の高さを工夫する
腰が丸くならないように股関節の屈曲角度を70~90度程度に保つ高さがおすすめです。

そのため、高さを調整できるような高めのイスを選択するか、座面に座布団を敷いて高さを調整するなどの工夫をすると良いでしょう。
②座面の硬さを選択する
ふかふかのソファのように座面が柔らかいとお尻が沈み込んで骨盤が後ろに倒れて腰が丸くなりやすいです。

そのため、仕事用のイスなどであれば座面が柔らかすぎず、硬めで安定感のあるものを選択しましょう。
③足裏を接地させる
足先だけついている、もしくは足が床についていない状態だと下半身が不安定になって姿勢が崩れやすいです。そのため、足裏全体が床につくよう調整すると良いでしょう。

④座る位置を工夫する
背もたれとお尻に隙間がある状態で背もたれに寄りかかった浅座りをすると背中が丸くなるので注意が必要です。そのため、背もたれ(バックレスト)にお尻や背中をピッタリとくっつけると背筋を伸ばしやすいです。もしくは下のイラストのように浅めに座ることで背筋を伸ばしやすくなります。

⑤肘かけを利用する
肘かけ(アームレスト)がないイスや、あっても使用せずに前腕(肘から先)の重みを支えないと上半身の支えがなくなり、背中が丸くなりやすくなります。そのため、肘かけに前腕を乗せるようにすると上半身が安定して背筋を伸ばしやすくなります。

アームレストがない場合は机の上に前腕の乗せるか、太ももの上に分厚いクッションなどを用意し前腕の重みを支えられる環境を整えましょう。
⑥目線を下げないように注意する
パソコンのモニターなどが下にあると頭の位置がずれて姿勢が崩れやすいです。背筋を伸ばした状態の目線の先にモニターなど作業する目標物があることが理想です。

⑦スタンディングデスクもおすすめ
立った状態で作業のできるスタンディングデスクを利用できる方はおすすめです。立ったり座ったりと高さを調整できると体の負担を軽減することができます。

長時間同じ姿勢はNG!小まめな動きを取り入れよう
どんなに体に優しい・正しい座り方をしていたとしても、「長時間同じ姿勢」でいること自体は避けたほうが良いです。また、作業内容や周囲の環境などから体に優しい・正しい座り方の工夫を全て実行できる方は決して多くはないと思います。
一般的には20~30分ごとに体を動かすと良いとされています。

イスから立ち上がって軽くストレッチ、歩き回れるタイミングで積極的に移動する…などができれば良いですが、「そうも言ってられないよ」という方も多いはずです。そこで、座った状態でできる運動などを試してみてはいかがでしょうか?
座りながら背骨を整える方法
座りながら体幹の前後・左右・円運動をしていきましょう。以下の動画を参考にしてみてください。
以下では動画を画像で切り抜いてステップバイステップで運動方法をお伝えします(切り抜き画像のみだと分かりにくい部分もあるかもしれませんので、一度は動画をご覧いただけると良いかもしれません)。
まずは前後の運動です。骨盤を後ろに倒して背中を丸くしていきましょう。

骨盤を前に起こし、背中を反らせるように動かしていきます。STEP1の動きと交互に5往復くらいやってみましょう。

続いては骨盤を前に起こし、その状態から片方のお尻に体重を乗せるように横移動をしていきます。この時に体重が乗った方の脇腹が伸びるように意識できると良いです。この左右の動きも5往復くらいやってみましょう。

体幹の前後・左右の動きをミックスさせて、時計回り・反時計回りとそれぞれ5周ずつ行ってみましょう。なるべく大きく回すことで体幹をほぐすことができます。

以上です。
まとめ:体に優しい・正しい座り方を意識しましょう!
今回は座ること・坐位姿勢についての意味・目的から問題点、改善案などを書いてきました。どれだけ体に優しい・正しい座り方を意識できていても、長時間同じ姿勢でいることは体にとっては不利益が生じるのは間違いありません。対策案としては:
- 正しい座面の設定(高さ・硬さ・足裏接地)
- 長時間同じ姿勢にならないよう小まめな動きを取り入れる
- スタンディングデスクなど環境改善も検討する
などの実践が大切だと考えています。もちろん、全てを日々実践できる方ばかりではないと思いますが、1つでも良いので何か取り入れられるものがあれば、まずはお試しいただければと思います!
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デスクワーカーだから仕方ないけど、ずっと座っているのも疲れるのよね…。