
転んで擦りむいちゃった…腫れてきたけど冷やした方がいいのかしら?
ケガをした時に多くの場合、熱を持ち腫れた患部を冷やすという寒冷療法(アイシング)は長年正しい処置だと信じられてきましたが、実は最新の研究で、寒冷療法の効果とリスクが見直されていることをご存知でしょうか?今回の記事では、最新の医学研究を元にアイシングの正しい知識と実践法を分かりやすく解説します。
なお、今回は以下の動画の内容を一部参考にしています。
また、ケガをした時などの急性期対応は以前に記事にしておりますので、今回の記事と併せてお読みいただけると理解が深まると思います。
しかし、いずれにしても知識不足だったり、知識があっても自己判断が危険なこともあるので、ケガをして処置や対処に迷う時は速やかに医療機関(整形外科や接骨院・整骨院)を受診するようにしてください。
もくじ
アイシングの2つの顔:救世主か敵か?


長年ケガをした時の正しい処置とされてきた寒冷療法ですが、まずはそのメリットとデメリットを見ていきましょう。
従来のメリット:痛みと腫れを抑える即効性
ケガをした直後に冷やすことで得られる効果として、以下の3つがあります。
- 血管を収縮させて内出血や腫脹を抑える
- 神経の感覚を鈍らせて痛みを和らげる
- 炎症反応を一時的に抑える
特にスポーツ現場では選手をすぐに復帰させるために重宝されてきました。実際、ケガ直後などの急性期の痛みに対し、寒冷療法を行うことで痛みが軽減する効果は多くの研究で確認されています。
デメリット:最新研究が明かす意外なリスク
近年の動物実験では、過度な冷却が組織修復を最大30%遅らせる可能性が指摘されています。これは冷やすことにより血流が低下し、組織修復に必要な免疫細胞や栄養素が患部に集まらず、また老廃物の除去も進まずに炎症が起きないためとされています(以下に専門的なお話もありますが難しいので専門家の方以外は読まなくても良いです)。
寒冷療法による炎症が遅延するメカニズムとして、マクロファージ(Mφ)の筋損傷部への遊走・集積がアイシングによって遅れることが研究により確認されています。
マクロファージは損傷筋の再生において重要な役割を果たしており、M1型マクロファージは壊死組織の貪食、M2型マクロファージは筋衛星細胞の増殖・融合・成熟化に関わるサイトカインを放出することが分かっています。アイシングはこれらのプロセスに影響を与える可能性があります。
また、アイシングによってIGF-1(インスリン様成長因子)の放出が妨げられる可能性や、血管収縮によってホルモンの流れが阻害される懸念が指摘されています。
炎症が起こらないような遺伝子操作をしたマウスでは筋の回復が見られなかったという実験結果もあり、組織回復における炎症反応の重要性を示唆しています。
失敗しない!アイシングの「新」基本ルール


基本的にはケガをして患部が熱を持ち、赤くなり、腫れて、痛みが持続しているようであれば医療機関(整形外科や接骨院・整骨院)を受診することをおすすめします。しかし、医療機関に受診するまでの時間がかかってしまうケースもあると思いますので、まずは冷やすべきシチュエーションや冷やしてはいけない場合を以下に記します。寒冷療法を行うか否かの1つの基準として覚えておいてください。
冷やすべき3つのシチュエーション
- 動けないくらいの激しい痛みがある場合(例:足首をひねって立てない)
- 患部の腫れが明らかに進行している場合(例:1分ごとに腫れが広がる)
- 医療機関を受診するまでの間
特に①②がある場合は③医療機関への受診が必須と言えますので、それまでの間は患部を冷やすようにしてください。
冷やさない場合・ケース
- 受傷から4日以上経過している(4日目以降は温める温熱療法を検討します)
- 慢性的な症状(腰痛や肩こりは基本的には温熱療法を検討します)
- 皮膚が青白く感覚が鈍っている場合(すでに血流が低下している可能性があります)
- 血栓症や糖尿病などの疾患がある場合(血流低下により症状が悪化する可能性があります)
特に③④のような血流の低下によるリスクがある場合は基本的に寒冷療法を行いません。医療機関で指示を仰ぐようにしてください。
安全なアイシング実践法


ところで…アイシングって具体的にどうやるの?
という疑問もあるかと思いますので、基本的なアイシングの実践法についてお伝えしていきます。
準備するもの
- 氷のう(袋に氷水を入れます。なければ冷凍野菜などでも可。)
- 薄手のタオル2枚
- タイマー


アイシングの実践手順
- 氷のうをタオルで包み、患部に当てる
- 15分間冷やしたら、45分休む(1時間で1セット)
- 1日3セットまで(冷やすのは合計45分)
- 受傷より72時間(3日間)続けて様子を見る
寒冷療法の重要なポイント
- 患部の感覚が「ジンジン(炎症による痛み)」から「ビリビリ(血流低下による痛み)」に変わったら即中止する
- 就寝中の冷却は凍傷の危険があるので厳禁
- 冷却後は患部を心臓より高く上げる
以上のように実践手順や時間を守り、そして体の声(患部の感覚)を確認しながら行うようにしてください。
温熱療法が効果的なケース
本記事では患部を冷やす寒冷療法にフォーカスしてきましたが、反対の患部を温める温熱療法についても簡単にまとめておきます。


温めるべきタイミング
- ケガから3日以上(4日目以降)経過した場合
- 慢性的な筋肉の硬直
- リハビリ前の準備
ただし、以下の温めてはいけないケースもあるのでご注意ください。
温熱療法の禁忌
- 急性期のケガ(受傷後72時間以内):捻挫直後に温めると、内出血が2倍広がる危険性があります。お伝えしてきたように腫れや熱感がある間は寒冷療法が基本です。
- 感染症の進行期:細菌感染による発熱中に温めると、病原菌の増殖を助ける恐れがあります。体温が38℃以上ある場合は温熱療法を避けましょう。
- がんの転移が疑われる部位:原発巣とは別の部位に痛みがある場合、温めることで転移巣の成長を促進する可能性があります。必ず画像検査で状態を確認してから実施します。
- 感覚障害のある部位:糖尿病による神経障害などで感覚が鈍っている部位は、低温やけどを起こすリスクが3倍高まります。温度管理が難しい場合は温熱療法も寒冷療法も控えてください。
- 出血傾向のある場合:抗凝固剤(血液をサラサラにする薬)を服用中の方や血友病の方は、温めることにより出血が悪化する恐れがあります。特に頭部や腹部の加温は厳禁です。
- 重度の心臓病:心不全の方が全身を温めると、心臓への負担が急激に増加します。入浴は38℃以下・10分以内に留め、胸元への直接加温は避けましょう。
寒冷療法よりは用いることの多いと思われる温熱療法(入浴もその一種と言えます)ですが、体に変化を起こす以上はリスクもあります。不安な場合は医師・専門家の指示を仰ぎましょう。
現場で使える!判断チェックリスト
これまでのまとめとして、簡単なチェックリストを以下に記します。


- ケガをした直後 → 動ける場合:積極的には冷やさず安静
- 腫れがひどい → 冷やす(15分冷却、45分休憩を3回/日)
- ケガから3日以上経過 → 温めながら軽く動かす
- ケガから1週間経過 → 通常の生活に戻る
*あくまで目安のため、判断に迷う場合は医療機関を受診してください。
よくあるQ&A
ここではよくあるQ&Aを記載しておきます。


まとめ:寒冷療法は適切に行いましょう
「ケガをしたらすぐに冷やす!」とされてきた昔と違い、現代のアイシングは炎症反応の『完全停止』ではなく『速度調節』のための手段として用いられている傾向にあります。自動車のアクセルとブレーキのように、状況に応じて使い分けることが大切です。


とは言え、基本的にはケガをした直後で腫れがひどい場合は寒冷療法が適応されることが多いでしょう。実践手順や注意点などを確認しながら行うようにしてください。
※この記事は医療行為を推奨するものではありません。症状が改善しない場合や判断に迷う場合は必ず専門医に相談してください。
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