
お尻の痛みもたくさん原因が考えられますが大殿筋が原因のこともありますよ!

大殿筋ってお尻の筋肉ですよね?聞いたことがありますが…今回もぜひ教えてください!

もちろんです!大殿筋は表面にある特徴的な筋肉なのでケアもしやすいです。ぜひ一緒にやっていきましょう!
もくじ
脊柱管狭窄症を治すための基礎知識(最初にご確認ください)

脊柱管狭窄症とはその名の通り「脊柱管」が「狭窄(狭くなった)」状態を意味しています。
脊柱管狭窄症は腰周辺組織の退行性変化(加齢による変化)や腰周辺の疾患などにより発症し、進行していきます。50歳代から徐々に増え始め、特に60〜70代以上で多く見られる疾患です。
神経を収納する脊柱管がさまざまな要因で狭窄して神経を圧迫してしまうことで腰や足の痛みやしびれと言った症状が出てしまい、特に腰部脊柱管狭窄症では歩いているとだんだん足のしびれが強くなってしまい休み休みではないと歩けなくなってしまう間欠性跛行というの症状が現れます。また、泌尿器を支配する神経がダメージを受けると失禁・便秘など排尿・排便のコントロールができなくなってしまう膀胱直腸障害といった症状も生じてしまい、こうなってしまうと手術適応となってしまいます。
しかし、発症年齢を考えると多かれ少なかれ骨・関節の変形があることが多く、画像検査で見られる神経の圧迫部位と症状が必ずしも合致しないこともあることから症状の本当の原因が別の部位にあり、対処が可能なこともあるということをこちらのブログでお伝えしました。
また、脊柱管狭窄症に限らず下半身の痛みやしびれには末梢神経の圧迫が関係することがあります。下半身の主要な3本の神経を知っているとご自身との症状との照らし合わせにもなりますのでこちらのブログもぜひご覧ください。
ただし、こんな症状があったら特に注意!
以前に腰痛をテーマにブログ記事を挙げた(ブログ記事:眠れないほどの腰痛に潜む命の危機 〜 Red Flag Sign〜)のですが、体からのサインを見逃してしまうと命に関わる病気が潜んでいる場合もあります。これをRed Flag Signと言います。
腰部脊柱管狭窄症では腰痛や足の痛み・しびれが主に生じますが、痛みやしびれが常にある場合、感覚の麻痺が重度な場合、膀胱直腸障害(排尿や排便のコントロールができなくなり、失禁や便秘になった状態)がある場合、明らかな脱力感・筋力低下がある場合はすぐに医療機関を受診した方が良いでしょう。
Red Flag Signに当てはまらないことを確認してから以下のブログを読み進めてください。
大殿筋とは

大殿筋(Gluteus Maximus)はお尻にある最も大きな筋肉です。他の霊長類(サル、ゴリラなど)と比較すると直立二足歩行を獲得したヒトで大きく発達していて特徴的な筋肉でもあります。
大殿筋の付着部は広く、骨盤の腸骨・仙骨、尾骨、仙結節靭帯に付着しています。そして大殿筋上部は太ももの外側で筋膜が肥厚した腸脛靱帯に付着し、大殿筋下部は太ももの骨(大腿骨)の後方で股関節に近い殿筋粗面に付着します。
大殿筋は足を後ろに伸ばす(股関節伸展)、足を外に開く(股関節外旋)、足を横に開く(股関節外転)といった作用があります。この中でも特に股関節伸展作用は大きく、走る時や坂道や階段を登る時などにパワフルに活躍します。
起始:中殿筋を覆おう筋膜、後殿筋線より後方の腸骨外方、脊柱起立筋の筋膜、仙骨下部の背面、尾骨の外側縁、仙結節靱帯の外面
停止:腸脛靱帯の後面と大腿骨近位部の殿筋粗面
神経支配:下殿神経(第5腰神経〜第2仙骨神経)
作用:股関節伸展、外旋、外転
大殿筋の特徴
このことから大殿筋は膝関節の安定にも関わるという点は見逃さない特徴だと言えます。
大殿筋はお尻の表面にある筋肉で皮膚と皮下脂肪の下にあるため触って確認しやすい筋肉です。パワフルな筋肉であり股関節の運動と安定に関わりますが、実は大殿筋の付着部の1つである腸脛靱帯は膝関節を形成する脛骨の前外側にあるGerdy結節に付着します。

このことから大殿筋は膝関節の運動と安定に関わることが言えます。私の経験上ですが、股関節の不調から膝関節の痛みなどに発展しているケースもよく見られます。
大殿筋と痛み・可動域制限
大殿筋のトラブルでは主にお尻、仙腸関節に近い部分(お尻の割れ目の付近)、尾骨のあたりに痛みが生じることがあります。痛みが出るタイミングとして長時間座った時や、坂道を登る時など大殿筋が動員された時、前屈みになって大殿筋が伸ばされた時などが挙げられます。

大殿筋のトラブルでは主に股関節を前に曲げる(股関節屈曲)や股関節を内側に回す(股関節内旋)などに可動域制限が認められます。
大殿筋にトラブルが生じるきっかけ

大殿筋はさまざまなことでトラブルが生じます。以下に例を挙げます。
①姿勢が悪い
うつむいた姿勢(前傾姿勢)で長時間坂を登る、度々前屈みになる、
②長時間圧迫される
同じ姿勢で座り続ける、後ろのポケットに財布などを入れたままにしている
③筋肉に損傷がある
大殿筋への直接的な衝撃を受ける、転倒を防ごうと強く踏ん張った、大殿筋に筋肉内注射を受けた
④身体構造に異常や左右差がある
この他にも大殿筋に関連する周辺の組織の影響を受けてコリが発生する可能性があります。
大殿筋の検査(必ず行いましょう)

大殿筋のセルフケアをする前には検査を行うことをおすすめします。
以下は大殿筋というよりも大殿筋の付着する腸脛靱帯の硬さを検査するOber Testというものがあります。ただし、腸脛靱帯には大腿筋膜張筋(後日ブログで書きます)という筋肉も付着しますし、その他にも周辺組織の影響を受けるので大殿筋の硬さだけが反映されるという訳ではありません。
また、以下のイラストのように足をもう一方の膝にかけるようにしてお尻の伸び感をチェックしても良いでしょう。ただし、くれぐれも検査は現状把握として無理をせずに行っていただき、以下のセルフケアを行う際も注意点をご確認いただきながら痛みは許容範囲内にして行うようにしてください。

大殿筋をチェックしたら以下のセルフケアに進んでください。
脊柱管狭窄症の治し方 大殿筋のセルフケア
大殿筋に限らず、筋肉のセルフケアは①ほぐす、②伸ばす(ストレッチ)の順番で行うことをおすすめいたします。また、大殿筋は股関節だけでなく全身のバランスを取るためにも重要な筋肉の1つであり、年齢を重ねると筋力低下している人もいらっしゃるので③筋トレもご紹介します。
これは筋肉に持続的な収縮やコリが発生している場合、いきなり伸ばそうとしても筋肉の全長が伸びずにある部位は縮み、ある部位は伸びるといったことが起こり得ます。すると、伸びすぎた部位に傷がつくと行ったことが起こり得ますので、まずは硬そうな部位を探し出してほぐすのが良いでしょう。
大殿筋のセルフケア:ほぐし編
手前味噌で恐縮ですが動画があります。写真でも解説いたしますので以下を読み進めてください。なお、注意点もありますので必ずご確認ください。
以下では動画を画像で切り抜いて大殿筋のほぐし方をご紹介していきます。
大殿筋の左右差を確認するために足を後ろに伸ばす可動域や足の動かしやすさを確認しておきましょう。動画・画像ではうつ伏せで行なっていますが立って行なっても良いです。

まずはお尻と太ももの境目あたりを確認します。

境目を触れたらつまんで引き上げるようにします。大殿筋の表面には分厚い脂肪があるので思っているよりもギュッとつまむと良いと思います。

ギュッとつまんで引き上げるほぐしを徐々にお尻全体に行なっていきます。ウエストに近い部分も行ってください。硬くなっている部分は痛みが出ることもありますが、痛みが許容できる範囲にとどめながら行ってください。

あらかたほぐしたら再度足の動かしやすさを確認してください。ほぐした方が動かしやすくなっていたら上手にできていると思います(元々ほぐれている方は変化が少ないかもしれません)。ぜひ反対側の大殿筋もほぐしてみてください。

大殿筋のセルフケア:ストレッチ編
大殿筋のセルフケア:筋トレ編
大殿筋をほぐし、ストレッチもできたら筋トレにチャレンジしてみましょう。
大殿筋のすぐにできる筋トレとしてスクワットがありますが、負荷を少なく・大殿筋にターゲットを絞って行える方法として膝立ちスクワットがあります。
膝立ちスクワットの基本姿勢は以下の通りです。まずはお尻を踵に近づけたポジションでセットします。

STEP1の姿勢からお尻を持ち上げ、骨盤を前方に移動させます。この時にお尻(大殿筋)をギュッと硬くします。大殿筋の収縮は意識しにくい方も多いので手で触ると確認がしやすいと思います。動画では30秒間行っていますが、この大殿筋の収縮感を歩く時なども意識できるとより良いです!

大殿筋のセルフケアは以上です。
その他の注意点
これまでお伝えしてきた意外にも大殿筋のケアをする上で知っておいていただき点をまとめます。
大殿筋のケアには梨状筋が外せない
大殿筋を担当する神経は下殿神経なのですが、下殿神経は大殿筋の奥にある梨状筋(Piriformis)の下を通って大殿筋に枝を伸ばします。

大殿筋だけをほぐしても梨状筋が硬いままだと十分にほぐしきれない場合があるので梨状筋のケアも同時に行えると良いです。
骨盤・お尻まわりの痛みはいろいろなところからくる
骨盤・お尻まわりの感覚を担当する神経は複数あります。

例えば骨盤の前方や外側は腸骨下腹神経や大腿外側皮神経が担当しますし、お尻の上部では上殿皮神経が担当します。これは元を辿ると腰椎の上部から出てくる神経で腰方形筋の前を通ったり、背中にある脊柱起立筋を貫通して出てきます。
また、お尻の真ん中のあたり(お尻の割れ目の横あたり)は中殿皮神経が担当しますが、この神経はお尻の割れ目にある仙骨から出てきてその上にある脊柱起立筋を貫通して出てきます。
また、お尻の下の方は下殿皮神経が担当しますがこれは梨状筋の下を通って出てきます。
このことからお尻まわりの痛みを考えた場合、腰回りや背中の筋肉、お尻の筋肉の状態を考慮しないといけないこともあります。今回ご紹介したケアで効果が感じられないとしたらその他の部位にも目を向けられると良いと思います。
参考までに以前投稿した腰方形筋のセルフケアのブログ記事はこちらです。
① Vlerie DeLaune 著 . 伊藤和憲 監訳 . トリガーポイント治療 セルフケアのメソッド . 株式会社緑書房 , 2015 .
② 秋田恵一 訳 . グレイ解剖学 原著第4版 . エルゼビア・ジャパン株式会社 , 2019 .
③ ジョセフ・E・マスコリーノ 著 . 丸山仁司 監修 . 改訂新版 筋骨格系の触診マニュアル 第2版 . エルゼビア・ジャパン株式会社 , 2017 .
まとめ
今回は脊柱管狭窄症の治し方として主にお尻や骨盤の痛みに効果的な大殿筋のセルフケアをご紹介してきました。
脊柱管狭窄症でもお尻・骨盤周囲にも痛み・しびれがある方もいらっしゃいます。その原因の1つとして今回ご紹介した大殿筋が関わっていることもあるため、セルフケアをぜひお試しください!
また大殿筋は痛みがなくても意識して使うことが苦手な方が多い印象のある筋肉の1つで、特に運動不足気味の方では筋力低下を起こしている方もいます。その場合は全身のバランスに影響が出るため、しっかりと鍛えておくことが大切です。ぜひ、面倒臭がらずに膝立ちスクワットなどから筋トレも取り入れてみてください!
今後も脊柱管狭窄症において問題の起こしやすい筋肉を取り上げながら、その検査やセルフケアの方法をご紹介していきます。今回のブログ記事も脊柱管狭窄症の症状改善につながれば幸いです。
また、当院では脊柱管狭窄症をはじめ、腰痛や足のしびれなどにお悩みの方を多く施術させていただいております。当院のホームページは以下の画像をタップしますとご覧いただけます。

脊柱管狭窄症っていろんなところが痛むのかなぁ…骨盤というかお尻が結構痛いんだよなぁ…。