【脊柱管狭窄症の治し方】腰と足の付け根の痛みには腸腰筋のセルフケア

腰狭窄さん

脊柱管狭窄症せきちゅうかんきょうさくしょうって診断されたけど腰も足の付け根も痛いんだよなぁ…これも坐骨神経痛なのかなぁ…。

宮森

腰も足の付け根も痛いとなると大変ですね…ところで足の痛みがあると坐骨神経痛って言われる方が多いですが、痛みの部位的に坐骨神経痛じゃないと思いますよ。

腰狭窄さん

へぇ、そうなんですか…まぁ名前とかはどうでも良いので、何か解決策はありますか?

宮森

確かにどうでも良いですね^^;
では今回は腰痛や足の付け根の痛みがある時に狙い目の腸腰筋ちょうようきんについてお伝えしていきますね。いろいろとトラブルを起こしやすい筋肉なので、ぜひブログ記事を読み進めながらケアを試してみてくださいね。

脊柱管狭窄症を治すための基礎知識(最初にご確認ください)

脊柱管狭窄症せきちゅうかんきょうさくしょうとはその名の通り「脊柱管」が「狭窄(狭くなった)」状態を意味しています。

脊柱管狭窄症は腰周辺組織の退行性変化たいこうせいへんか(加齢による変化)や腰周辺の疾患などにより発症し、進行していきます。50歳代から徐々に増え始め、特に60〜70代以上で多く見られる疾患です。

神経を収納する脊柱管がさまざまな要因で狭窄して神経を圧迫してしまうことで腰や足の痛みやしびれと言った症状が出てしまい、特に腰部脊柱管狭窄症では歩いているとだんだん足のしびれが強くなってしまい休み休みではないと歩けなくなってしまう間欠性跛行かんけつせいはこうというの症状が現れます。また、泌尿器を支配する神経がダメージを受けると失禁・便秘など排尿・排便のコントロールができなくなってしまう膀胱直腸障害ぼうこうちょくちょうしょうがいといった症状も生じてしまい、こうなってしまうと手術適応となってしまいます。

しかし、発症年齢を考えると多かれ少なかれ骨・関節の変形があることが多く、画像検査で見られる神経の圧迫部位と症状が必ずしも合致しないこともあることから症状の本当の原因が別の部位にあり、対処が可能なこともあるということをこちらのブログでお伝えしました。

また、脊柱管狭窄症に限らず下半身の痛みやしびれには末梢神経の圧迫が関係することがあります。下半身の主要な3本の神経を知っているとご自身との症状との照らし合わせにもなりますのでこちらのブログもぜひご覧ください。

ただし、こんな症状があったら特に注意!

以前に腰痛をテーマにブログ記事を挙げた(ブログ記事:眠れないほどの腰痛に潜む命の危機 〜 Red Flag Sign〜)のですが、体からのサインを見逃してしまうと命に関わる病気が潜んでいる場合もあります。これをRed Flag Signと言います。

腰部脊柱管狭窄症では腰痛や足の痛み・しびれが主に生じますが、痛みやしびれが常にある場合感覚の麻痺が重度な場合膀胱直腸障害ぼうこうちょくちょうしょうがい(排尿や排便のコントロールができなくなり、失禁や便秘になった状態)がある場合、明らかな脱力感・筋力低下がある場合はすぐに医療機関を受診した方が良いでしょう。

Red Flag Signに当てはまらないことを確認してから以下のブログを読み進めてください。

腸腰筋とは

正面および右側面からの見た腸腰筋。左側の腸腰筋を水色で強調しています。図はVISIBLE BODY®︎ HUMAN ANATOMY ATLASより。

腸腰筋は大腰筋だいようきん小腰筋しょうようきん(50%くらいの人にしか存在しません)、腸骨筋ちょうこつきんの3つの筋肉の総称です。

腸腰筋は腰椎・骨盤から股関節(足の付け根)を越えて大腿骨に付着します。このため股関節を曲げる(足を持ち上げる)作用腰・骨盤を前に引いて体を直立に保持する作用または腰を反らせる作用があります。また、股関節の前側に位置していることから股関節の安定化にも作用します。

起始部:大腰筋)第12胸椎〜第5腰椎の横突起・椎間板・椎体
    小腰筋)第12胸椎〜第1腰椎の椎間円板
    腸骨筋)腸骨窩

停止部:大腰筋および腸骨筋)大腿骨の小転子
    小腰筋)腸恥隆起

支配神経:大腰筋および小腰筋)第1〜3腰神経前枝
     腸骨筋)大腿神経

作用:全体)股関節の屈曲、体幹の直立化、股関節の安定化
   大腰筋および小腰筋)腰椎の前弯
   腸骨筋)骨盤の前傾

腸腰筋の特徴

腸腰筋は体のほぼ中心に位置しており、さまざまな解剖学的特徴からトラブルが生じやすい筋肉の1つでもあります。

例えば大腰筋の後方には腰方形筋ようほうけいきんという筋肉があり、この筋肉もトラブルを生じやすい筋肉の1つです。

正面および右側面からの見た腸腰筋と腰方形筋。正面から見た図では左の大腰筋と透過して腰方形筋を水色で強調。図はVISIBLE BODY®︎ HUMAN ANATOMY ATLASより。

そして大腰筋と腰方形筋の隙間から下半身の前側や内側に枝を伸ばす神経がたくさん出てきます。以下の図をご覧ください。

大腰筋と腰方形筋の間から出てくる神経の図。左側を水色で強調しています。図はVISIBLE BODY®︎ HUMAN ANATOMY ATLASより。

これらの神経の中には前ももの筋肉を動かしたり、太ももの前側や膝関節の前側・内側、さらにスネの前側・内側にも枝を伸ばして最終的には親指の方まで枝を伸ばして皮膚の感覚を担当する大腿神経(その枝である伏在神経)太ももの内側の筋肉(内転筋群)を動かしたり、太ももの内側の皮膚の感覚を担当する閉鎖神経があります。その他にも下腹部や骨盤の周辺、足の付け根、太ももの外側の皮膚の感覚を担当する腸骨鼠径神経・腸骨下腹神経・陰部大腿神経・外側大腿皮神経なども含まれます。

簡単に言えば、腸腰筋や腰方形筋のトラブルによってこれらの神経が挟まれればこれらの神経が担当する領域に痛みが生じる可能性があるということです。

また、腸腰筋は足を持ち上げる作用があるため瞬発力を要求されるアスリートなどでは特に発達しています。逆に言うと、瞬発力を求められない環境下で生活していると弱化していきます。筋肉量は30歳前後をピークにして落ちていきますので現代人のほとんどは腸腰筋が弱化していると捉えて良いでしょう。筋トレが重要な筋肉の1つでもあります。

腸腰筋と痛み・可動域制限

大腰筋による痛みは背中または腰、お尻に放散する傾向にあります。一方、腸骨筋による痛みは太ももの前側や鼠径部(足の付け根)の周辺に放散する傾向にあります。

特に大腰筋由来の腰痛は激しいことが多く、ぎっくり腰の原因の1つとも言われています。

腸腰筋のトリガーポイント(筋肉のコリ)による痛みの例。図はMuscle Trigger Point Atlasより。

腸腰筋のトラブルでは立ち座り動作やイスに座った状態でも症状が出ることがあります。また、足を伸ばしていることがつらいため、例えば股関節を曲げた状態(膝を立てた状態)のあお向けだと楽になることが多いです。その他にも便秘の場合や女性では月経時に症状が増悪することがあります。

また上述した通り、大腰筋と腰方形筋によって神経が挟まれている場合はそれらの担当領域に痛みが放散することがあります。

腸腰筋にコリができるきっかけ

腸腰筋はさまざまなことでコリができます。以下に例を挙げます。

①膝を曲げた姿勢で長時間座る
長時間のデスクワークや車の運転、赤ちゃんのように丸くなって眠るなど

②背骨にズレがある
大腰筋および小腰筋の付着部である背骨にズレがある場合など

③筋肉に損傷がある
妊娠、激しい腹筋運動、過呼吸などで腸腰筋が傷つくことがあります

④月経痛がある
月経痛をきっかけにして腸腰筋が緊張してしまうことがあります

⑤脚の長さに差がある
骨格的に脚の長さが違う場合、背骨のズレにもつながって腸腰筋が緊張することがあります

この他にも上述した大腰筋と腰方形筋の間から出てくる神経が担当する領域に起きたトラブルが間接的に腸腰筋にトラブルを生じさせることもあります。

腸腰筋の検査(必ず行いましょう)

腸腰筋のセルフケアをする前には検査を行うことをおすすめします。

この後ご紹介するストレッチでもやる方法ではありますが、股関節の前側を伸ばす時の痛みや可動域を確認してみてください。ただし、激しい痛みがある場合は無理に行わないようにしてください。

腸腰筋のストレッチの例。足の付け根に伸び感が出ると思います。

また上画像のようなストレッチを行うと上述した大腰筋・腰方形筋の間を通過してくる神経などにトラブルがある場合にはそれらの担当領域に痛みやしびれが生じることもあります。

くれぐれも検査は現状把握として無理をせずに行っていただき、以下のセルフケアを行う際も注意点をご確認いただきながら痛みは許容範囲内にして行うようにしてください。

脊柱管狭窄症の治し方 腸腰筋のセルフケア

腸腰筋のセルフケアは①ほぐす、②伸ばす(ストレッチ)の順番で行うことをおすすめいたします。

これは筋肉に持続的な収縮やコリが発生している場合、いきなり伸ばそうとしても筋肉の全長が伸びずにある部位は縮み、ある部位は伸びるといったことが起こり得ます。すると、伸びすぎた部位に傷がつくと行ったことが起こり得ますので、まずは硬そうな部位を探し出してほぐすのが良いでしょう。

腸腰筋のセルフケア:ほぐし編

私の自撮りで恐縮ですが骨盤周辺から腸腰筋のほぐす方法を写真でご紹介します。

STEP

膝を立てたあお向けになります。
次におへそから手の指4本分くらい横の位置に指先を当てて体の中央に向かって押圧していきます。以下の画像は骨盤の模型を用いて腸骨筋のあたりほぐしているイメージです。

STEP

服装が分かりにくいですが実際にやると以下のようになります。

トラブルを起こした腸腰筋を押した場合は鈍い・重い痛みが出ることが多いですが、ぎっくり腰などの場合はかなりの激痛が出ることがあります。痛みは許容範囲で行うようにしてください。

ただし、写真のように右側をほぐしているときに強い痛みがある場合は虫垂炎(いわゆる盲腸)の可能性もあるため、その場合は医療機関の受診をおすすめいたします。

腸腰筋のセルフケア:ストレッチ編

手前味噌で恐縮ですがストレッチ編には動画があります。写真でも解説いたしますので以下を読み進めてください。

股関節ストレッチの動画です。以下では切り抜き画像で解説していきます。
STEP

まずは片足を立膝にしてください。
今回は後ろ側の足(画像では左足)の腸腰筋を伸ばしていきます。

STEP

STEP1の状態から体を前に移動させ、股関節(足の付け根)を伸ばしていきます。ただし、痛みに注意してください。

STEP

ストレッチは短くても20〜30秒、できれば1分〜1分半くらいを目安に行ってください。

また、余裕があれば以下のように膝を伸ばして行うと強度は高まりますがより強く腸腰筋を伸ばすことができます。

以下、STEP4では注意点をお伝えするので必ずご確認ください。

STEP

注意点①
上半身が前に傾かないようにしましょう。

注意点②
伸ばす方の骨盤が回転しないようにしてください。

以上の注意点2つは腸腰筋のストレッチ時によくあるミスで、これらをやってしまうと腸腰筋をうまく伸ばすことができませんのでお気をつけください。

腸腰筋のセルフケアは以上になります。

その他の注意点

実はこれまでお伝えしてきた意外にも腸腰筋は解剖学的特徴からさまざまなトラブルが生じやすいです。いくつかご紹介していきます。

腸腰筋と内臓

腸腰筋は内臓の影響をかなり受けやすい筋肉の1つだと言えます。まずは腎臓との位置関係を見てみましょう。

腸腰筋と腎臓および尿管の図。左側の腎臓を水色で強調しています。図はVISIBLE BODY®︎ HUMAN ANATOMY ATLASより。

このように大腰筋の上に腎臓が位置しており、腎臓は呼吸に合わせて大腰筋の上をスライドレールのように動きます。つまり、腎臓のトラブルから大腰筋に刺激がいき、大腰筋由来の痛みやしびれが生じることがあります。

また、大腸(専門的には結腸けっちょうと言います)との位置関係も見てみましょう。

腸腰筋と大腸の図。大腸を透過し、腸腰筋を水色で強調しています。図はVISIBLE BODY®︎ HUMAN ANATOMY ATLASより。

このように腸腰筋の前には大腸(右は上行結腸じょうこうけっちょう・盲腸、左は下行結腸かこうけっちょう・S状結腸)が位置しています。このことから便秘や下痢、ガスが溜まっている状態など大腸の不調から腸腰筋に刺激がいき、痛みやしびれが生じることもあります。

以上のことから内臓の不調からも腸腰筋のトラブルに発展する可能性があるため、今回のセルフケアをやってみて改善がイマイチだった場合は内臓のトラブルも疑ってみると良いでしょう。

腸腰筋と横隔膜

次には横隔膜との関係も見てみましょう。

腸腰筋と横隔膜の図。中央にある横隔膜と左の大腰筋を水色で強調しています。図はVISIBLE BODY®︎ HUMAN ANATOMY ATLASより。

大腰筋に限らず腰方形筋もですが、横隔膜と非常に近い位置にあります。また、横隔膜の右横隔膜脚みぎおうかくまくきゃくは第3腰椎、左横隔膜脚ひだりおうかくまくきゃくは第2腰椎に付着します。このことから大腰筋の状態は横隔膜の状態にも影響しますし、その逆もまた然りと言うことが言えます。

少しリスクがありますが、横隔膜のセルフケアとしては以下の方法があります。手前味噌ですが動画を貼り付けておきます。

横隔膜のほぐし方をご紹介しています。

腸腰筋を鍛えたい場合はこちら

今回のブログでもお伝えしましたが現代人は腸腰筋が弱化している方が多いでしょう。

参考までに腸腰筋をはじめとした股関節周囲を鍛える運動をご紹介しております。しんどい・きついと感じる方が多いと思いますが出来そうなものがあったら試してみてください。

腸腰筋を含めた股関節周囲の筋トレをご紹介している動画です。

まとめ

今回は脊柱管狭窄症の治し方として主に腰痛や足の付け根の痛み・しびれに関連しやすい腸腰筋のセルフケアをご紹介してきました。

お伝えしてきた通り、腸腰筋はトラブルを生じやすい筋肉であり、その原因も非常に多岐にわたります。そのため腸腰筋だけをケアしても解決しない場合もありますが、可能性の高いと思われるものをご紹介してきましたので参考にしていただけたら幸いです。

今後も脊柱管狭窄症において問題の起こしやすい筋肉を取り上げながら、その検査やセルフケアの方法をご紹介していきます。今回のブログ記事も脊柱管狭窄症の症状改善につながれば幸いです。

また、当院では脊柱管狭窄症をはじめ、腰痛や足のしびれなどにお悩みの方を多く施術させていただいております。当院のホームページは以下の画像をタップしますとご覧いただけます。

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