病院では治せない?医療の真実と5つの西洋医学 | 治療法の正しい選び方

何か困ったら〇〇病院に行きなさい!あそこの先生の言うことを聞いてれば何も問題ない!何でも治してくれるぞ!!

病院?行くわけないでしょう。病院に行ったって対症療法をするだけで治るわけないんだから。病院じゃ治せないですよ。

え、整体に行った?!そんな訳のわからない、根拠もない民間医療に頼るなんて危険極まりない!私ども医者の指示だけ聞いていればいいんです!

〇〇整体が良いわよ〜。私なんで病院に行っても良くならなかった腰痛がすっかり良くなったんだから。〇〇整体に治せないものなんてないわよ!

以上のような意見を持つ方が実際にどのくらいの割合でいらっしゃるかは分かりませんが、少なくとも私は実際に見聞きしたことがあります。私自身は理学療法士免許を保有した整体師ですので、過去に勤務先の医療現場で患者様のリハビリをさせていただいておりましたし、現在は個人経営の整体院でお客様の対応をさせていただいています。すると、必然的にさまざまな意見を耳にします。

今回は以前からまとめておきたかった医学・医療の種類とその利用方法についてをブログ記事にしました。なお、あくまで一般論をベースとし、私なりに「分かりやすく」を意識してまとめたため、造詣の深い方や専門家の方からはツッコミ所もあるかとは思いますが、どうか広い心で読み進めていただければ幸いです。

病院治療の真実:知っておくべき医学の多様性と選び方

一般的な医学・医療と言えば手術室などのイメージでしょうか。

冒頭の会話劇のように、世の中には極端な意見を持つ方がいらっしゃいます。食べ物の好みから応援するスポーツチーム、政治思想に至るまで、さまざまな意見(好み)があって良いと思いますが、現在の私の仕事環境では時に「病院では病気を治せない」という意見を持つ方がいらっしゃいます。

そこで、底意地の悪い私は「では骨折しても、内臓破裂しても、病院には行かないのですか?」と質問します。すると、どのような方でも「いや、それは…」と言い淀みます。さすがに命のかかる場面では病院に行かれるはずです。

また、ありがたいことに整体師をしていると「宮森先生なら何でも治してくれる」と仰ってくださる方もいらっしゃいます。しかし、それができたら田舎町で整体師などやらずに、奇跡の技でも編み出して大儲けしていると思います。そうなっていないということは、誰であれ「何でも治せる」なんてことはないのです。

今回はまず、医学の多様性とそれぞれの特徴についてお伝えしていきたいと思います。

意外と知らない!西洋医学5大流派の特徴

日本においては西洋医学が主流と言われていますが、実は西洋医学には五代流派と呼ばれるものがあるのをご存知でしょうか。それぞれを簡単にまとめました。

1.アロパシー

語源はギリシャ語のallos(異なる)+ pathos(病気)。日本語訳は対症療法基本原理は症状とは反対のもので治すというもの。ほとんどの国で現代医学の主流となっています。

2.ホメオパシー

語源はギリシャ語のhomoios(似た)+ patheia(病気)。日本語訳は同種療法。 基本原理は似たような症状を引き起こすもので治療するというもの。

3.サイコセラピー

語源はpsyche(心・精神)+ therapy(治療)で、日本語訳は心理療法。 心と精神に焦点を当てた治療法でカウンセリングなどが代表的な手法です。部分的にアロパシーに組み込まれています。

4.オステオパシー

語源はギリシャ語のosteos(骨)+ pathos(病気)。 日本語訳は古くは整骨医学とされていましたが、現在はオステオパシーとそのまま使用。骨格系・内臓系・頭蓋系の調整による治療を主とし、体全体のバランスを重視しています。アメリカなどではアロパシーの医師(Medical Doctor : M.D.) と同等の資格(Doctor of Osteopathy:D.O.)とみなされています。

5.ナチュロパシー

語源はnatura(自然)+ pathos(病気)。日本語訳は自然療法。自然の力を活用した治療法で、食事療法やハーブなどを使用します。

それぞれの歴史を振り返ると古くは紀元前にまで遡るものもあり、また理論背景の変遷もさまざまなため、まずここでは「西洋医学と一言で言ってもいろいろあるのだな」ということを知っていただければと思います。

次に、西洋医学の主流であるアロパシーについて、もう少し深掘りをしていきます。単に「病院に行く」となれば、それはほとんどの場合アロパシーを利用することになります。1番身近な医学について知識の整理をしていきましょう。

アロパシーの実力と限界

日本を含むほぼ全ての国で主流な医療システムとして確立されているアロパシーは「エビデンスに基づく医学」が基本となっています。ここ数年でエビデンス(Evidence : 科学的根拠)という言葉も市民権を得たため、見聞きした方も多いと思います。

アロパシーの歴史を遡ると紀元前にまで至りますが、医学会において現在のようなある種の独占的な地位を築くようになったのは19世紀以降にロックフェラーの支援を受けたことが大きいとされています(これについても語ると長くなります)。日本語訳は対症療法としましたが、主な手法は手術療法・薬物療法にあり、以下のような状況で特に力を発揮すると考えられます。

  • 骨折や重度の外傷
  • 内臓の損傷
  • 重度の感染症
  • 重度の関節変形や欠損
  • その他の生命に関わる緊急事態 など

もちろん、その他にも適応範囲はあるのですが(現在の細分化された診療科の数を考えればキリがないほどですが)、主だったものを挙げれば上記のようなものだと私は考えています。

ところで、それでも「病院では良くならなかったけど、〇〇整体(その他、鍼灸や漢方などアロパシーでないもの)で良くなった」という声を耳にしたことがあると思います。実際に起こり得ることなのですが、これは決してアロパシーを否定するものではありません。むしろ、それぞれの医学に得意分野があることを示していると私は捉えています。

「治る」の本質を考える

突然ですが、「治る」とは、どのような状態を指すのでしょうか?

おそらく多くの方は、不快な症状がなくなった時や、疾患による何らかの制限から解放された時に「治った」と感じるのではないでしょうか。

アロパシーは症状を抑えることが得意分野です。そのため、しばしば処方される薬として痛み止めや湿布などがありますが、それらによって不快な症状がなくなり、それによって制限から解放されれば多くの方が「治った」と感じることでしょう。

しかし、本当にそれで良いのでしょうか。少し長くなりますが、2つ例を挙げて一緒に考えてみたいと思います。

例① 風邪:症状は体からのメッセージである

一説には、人が一生涯で風邪をひく回数は平均200回だそうです。

ここ数年で大騒ぎをした例のウイルスも風邪の原因ウイルスの一種に数えられます。風邪のほとんどはウイルス性とされており、それぞれのウイルスの特徴や発症者の状態によって症状や重症度もケースバイケースですが、一般的な症状は以下のようなものが挙げられます。

  • 喉の痛み
  • 鼻水・鼻づまり
  • 発熱
  • 倦怠感
  • 筋肉痛
  • 寒気(悪寒)

ここで注目していただきたいのは、風邪の原因は病原体(多くはウイルス)ですが、症状自体は私たちの体が生じさせているという点です。つまり、風邪の症状とは、体が病原体(多くの場合はウイルス)と戦っている証なのです。では、なぜ体はこのような症状を出すのでしょうか。

風邪症状を体が出す理由

一般に風邪における症状は以下の理由で出されるとされています。

  1. 体温を上げるために筋肉を緊張させる(これによって強張りや筋肉痛が発生)
  2. 体温上昇で免疫機能を活性化する
  3. 高温でウイルスを弱らせる
  4. 増殖したウイルスを体外に排出する(鼻水・鼻詰まり・咳など)

繰り返しになりますが、風邪の症状は体が全力で戦っている状態が表現されているわけです。

さて、このことを踏まえると、風邪の際に処方される(もしくは市販薬でも販売されている)解熱剤や咳止めなどは体の防衛反応を抑制していることになると考えられます。この場合の薬物療法は、果たして体にとって良いことなのでしょうか。

注意すべき症状の見極め方

ここから注意深くお読みください。

さて、疑問を投げかけたところですが、かと言って全ての症状を「体が病原体と戦っている証拠だから」と放置して良いわけではありません。特に、以下のような場合は要注意です。

【発熱の場合】

  • 乳幼児:24時間以上の発熱
  • 成人:3~4日以上続く場合
  • 高齢者:2日以上継続
  • 特に41度以上の高熱(体のタンパク質が変性する可能性が高まる)

【その他の注意すべき状況】

  • 重度の頭痛や意識障害を伴う場合
  • 心臓病や糖尿病などの基礎疾患がある場合
  • 妊娠中の方
  • 免疫不全の方

病原体の排除に働く免疫応答(炎症反応)とは言え、このような場合は体に(最悪の場合は不可逆的な)悪影響を及ぼす可能性があるため、適切な医療介入が必要になります。

乳幼児や子どもは免疫機能(主に獲得免疫系)が未発達なため、自然免疫系が活発になって高熱が出やすい傾向にあります。ただ、それだけに基本的には速やかに体温が下がるはずですが持続する場合は注意が必要です。一方、基礎疾患がある方や免疫不全の方は免疫系の調整がうまくいかず、慢性化したり別の感染症を併発したりするので注意が必要です。

このように風邪と言ってもその症状の重症度を見極めをする客観的で普遍的な知識も定期的に調べてご自身の中でアップデートしておくと良いと思います。ここまででは風邪を例にしましたが、症状の捉え方とその対応について改めて考えるきっかけにしていただけたら幸いです。

例② ケガ・関節痛:炎症反応は回復の見方

これは皮膚炎の写真ですが、炎症反応が目に見えて分かりやすいのでこの写真にしました。

風邪の例でお話しした炎症反応は、実はケガや関節痛の時にも重要な役割を果たします。古代ローマの医師ガレノスが提唱した炎症の五徴候を見てみましょう。

  1. 発赤:炎症部位が赤くなる
  2. 腫脹:腫れが出る
  3. 熱感:熱を持つ
  4. 疼痛:痛みが出る
  5. 機能障害:動かしづらくなる

これらは一見すると困った症状に見えますが、実はこの場合の炎症反応とは、損傷した組織の回復の初期段階なのです。なぜなら、これらの症状はケガをした部位に血流を増加させて、

  • 損傷した組織を排除したり、傷口から侵入してきた病原体を倒す免疫細胞を集める
  • 新しい組織を構築(組織を回復させる)ために必要な栄養などを運ぶ
  • 損傷部位を不用意に動かして損傷を広げさせずに保護する

ための働きだからです。

炎症を抑えることの是非

例を変えますが、関節痛などで病院に行くと、多くの場合は痛み止め・湿布薬などの炎症を抑える抗炎症薬が処方されます。

関節痛のある部位に湿布を貼ったり、冷やしたりした経験はあると思います。

しかし、炎症が回復過程の一部だとすれば、それを抑制することは本当に正しいのでしょうか?先に答えをお伝えすれば、それはケースバイケースとなります。

【抗炎症薬が有効な場合】

  • 損傷が広範囲な場合
  • ケガが重度な場合
  • 糖尿病などの基礎疾患がある場合
  • 炎症が慢性化している場合(数週間から数ヶ月に及んでいる)

これらの場合は炎症反応を抑えないと、組織破壊の方が進んでしまう可能性が高まります。では一方で、抗炎症薬の使用に注意が必要な場合を考えてみましょう。

【抗炎症薬の使用に注意が必要な場合】

  • ケガが軽度の場合
  • 自然治癒が期待できる場合

なぜなら、必要以上に炎症を抑えると、組織の完全な回復が妨げられてしまうためです。抗炎症薬などの使用により、その場では痛みなどの不快な症状が取れ、それこそ「治った」と思っても組織は壊れて脆いままになっています。そのため、何かの拍子に組織損傷(ケガ)が再度起きて、炎症が起きる可能性が高まることが考えられます。

この辺りの炎症を半端に治してしまって再発するという流れについては五十肩のブログで書きましたので、お時間があれば以下の関連記事もお読みください。

また、以下のYouTube動画でも炎症時の対応についての変遷を踏まえてお伝えしています。アロパシーの世界でも炎症に対する対応は変わっていっていることがお分かりになると思います。

10分程度の動画になります。

ケガ・関節痛でアロパシーをどう活用すべきか

以下はあくまで私見を含みますが、ケガ・関節痛などでアロパシーが最も力を発揮するのは以下のような場面だと考えられます。

【緊急性の高い状況】

  • 重度の外傷
  • 骨折
  • 内臓の損傷
  • 深部もしくは広範囲に及ぶ熱傷
  • 著しい関節変形
  • 四肢の欠損

つまり、命に関わる場合や、明らかに体の部位が「壊れてしまった」場合です。例えば、以前に命に関わる腰痛の例をブログ記事にしましたが、このような場合もアロパシーの活用が重要です。

一方で、正直なところ、慢性的な症状についてはあまり効果を発揮しないことも間々あるように思います。しかし、繰り返しになりますが、アロパシーの否定ではありません。それぞれの医学に「得意分野」があることを今回のブログではお伝えしたいと思っています。

整体師の視点から見る医学

整体師は何をどのようにアプローチしているのでしょうか。

これまではアロパシーを中心に考えてきましたが、では、日本における民間医療の提供者は何をしているのでしょうか。ここでは整体師を例に考えてみますが、整体師といっても幅広く、さまざまな手技を用いる方がいらっしゃいますが、例えば:

  • わずかな関節のズレの修正
  • 筋肉のコリや緊張の調整
  • 内臓の調整
  • 頭蓋骨の調整

などを行っていると考えられます(本当に細かくはさまざまな手技や理論があるため、イメージ程度に捉えてください)。

病院の検査では原因が明確にならない不調をきたすものは機能障害と呼ばれ、時に強い症状を引き起こします。整体師などの民間医療提供者は主にこの機能障害に対してアプローチしていることが考えられます。むしろ、民間医療提供者は自身の専門分野以外の分野、例えばアロパシーの範囲である緊急事態や体の一部が「壊れてしまった」状態には手を出してはいけないと私は考えています。

私も日々、お客様を担当させていただいて、本当に施術をして良いか判断に迷うことがありますが、その場合は医療機関の受診をお勧めしています。それは現状把握が目的です。医療機関の検査で問題がはっきりしないということは、まだ体が「壊れた状態」には至っていないと判断でき、さまざまな可能性を探っていけるからです。また、逆に私の知りうる限りの検査法で明らかな異常が見られた場合や緊急性が高いと判断できた場合はすぐに医療機関の受診を勧めるようにしています。

ところで少し話は変わりますが、民間医療では医療機関でハッキリとした原因のわからないもの(機能障害)に対してアプローチをしているということは、同時にアロパシーの基準での高品質なエビデンスの構築が困難(というかほぼ無理)ということも言えます。ただし、これも優劣ではなく、専門領域の違いであると捉えていただければと思います。

医学は他にもある:伝統医学から学ぶこと

伝統医学の中では漢方が日本人にとって馴染み深いと思います。

これまでアロパシーを中心にご紹介してきた西洋医学以外にも、長い歴史を持つ様々な医学があります。いくつか例を挙げましたので、それぞれの特徴を見てみましょう。

中医学

陰陽の調和を基本概念とし、気の流れを重視します。鍼灸・漢方・食事療法を組み合わせ、体全体のバランスを見ていきます。

漢方医学

中医学を基礎に日本で独自発展し、体質や症状に合わせて漢方を処方します。副作用が比較的少ないとされ、予防医学の側面も持ちます。

アーユルヴェーダ

インド発祥の伝統医学で、ヨガや瞑想、食事療法を取り入れます。心身の調和を目指します。

チベット医学

ハーブ療法を得意とし、食事療法と物理療法の組み合わせます。精神面のケアも重視しています。

これらの伝統医学の共通点は、その土地の文化や哲学との結びつき、全人的なアプローチを目指しています。また、予防医学の視点を持ち、心と体の関連性の重視しています。

ただし、アロパシーの基準のエビデンスの構築が難しく、日本においては民間医療という枠組みになりますが(漢方や鍼灸は部分的に例外)、国外では伝統医学やアロパシー以外の4つの西洋医学が政府が認めている正式な医療システムとして確立されている国もあります。

まとめ:医学の選び方

ここまで様々な医学についてお話ししてきました。私見を含みますが、大切なのは

  1. それぞれの医学には得意分野があること
  2. 症状や状況に応じて適切な選択をすること
  3. どれか一つを絶対視しないこと

だと考えています。選び方の参考例としては

  • 緊急性の高い症状→アロパシー(いわゆる病院
  • 慢性的な不調→漢方や整体
  • 予防や健康維持→伝統医学のアプローチ

という具合に、状況に応じて使い分けることが賢明だと私は考えます。

今回のブログを通して医学の多様性を理解し、それぞれの特徴を活かすことで、より効果的な治療の選択をしていただければ幸いです。そして最後に強調したいのは、どの医学も「完璧」ではないということです。それぞれの限界を知り、適材適所で活用することが、不調からの回復の最短距離を通れるのではないでしょうか。

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