
「姿勢が悪い」ってよく言われるんですが…確かに猫背な感じはありますかねぇ。
姿勢に対しての関心は人それぞれですが、少なくとも「姿勢は良いが良いのだろう」くらいの認識は誰もがお持ちだと思います。そこで今回はヒトの骨格の特徴を踏まえた上で姿勢についてを記事にしました。
先に私なりの答えをお伝えすると、絶対的に正しい姿勢はありません。ただし、日常生活を送る上で基本としたら良いであろう姿勢は存在すると思います。「どういうこと?」と思われるかもしれませんが、ぜひこのままブログを読み進めてください。
もくじ
はじめに:ヒトの骨格の2大特徴
ヒトの骨格の特徴を観察するには、他の生物の骨格と比較するのが早いです。ちょうどイヌの骨格の画像があったので並べてみました。

イヌ以外の生物との比較も重要ですが、そもそもヒトは完全な直立二足歩行をする唯一の生物です。この完全な直立二足歩行を行う上で以下の2つの特徴があると私は捉えています。
- 背骨のS字カーブ
- 完全に伸びきる膝関節
もちろん他にも骨格の違いがたくさんあるのですが、今回はこの2つの特徴についてをお伝えしていきます。
S字カーブの秘密
背骨は解剖学用語で脊椎もしくは脊柱と言います(脊椎は背骨そのものを、脊柱は脊椎が積み重なった状態を言います)。ところで「背骨はS字カーブをしている」と聞いたことがあると思いますが、もう少し細かく見ていきましょう。以下の画像では背骨が色分けされていますが、よくよく見るとカーブが4つあることがお分かりになるはずです

背骨はその部位によって名称が異なり、首の部分に7個の頸椎(赤色)、背中の部分に12個の胸椎(緑色)、腰の部分に5個の腰椎、骨盤の部分に5つの仙椎が癒合した仙骨(黄色)があります。そして画像の通り、前に反っている(前弯)は頸椎と腰椎に、後ろに丸くなっている(後弯)のが胸椎と仙骨となっています。
成長過程で作られるS字カーブ
このS字カーブは生まれつきあるものではありません。生まれたての赤ちゃんは全体が丸いC字カーブをしています。

このため、元から後ろに曲がっている胸椎と仙骨は一次弯曲と呼ばれ、成長過程で前に反ってくる頚椎と腰椎は二次弯曲と呼ばれます。
ちなみに頚椎の前弯は生後2〜3ヶ月頃の「首が座る(定頚)」の頃から形成され始め、腰椎の前弯はお座りやハイハイを生後6〜8ヶ月から形成され始め、さらに立ったり歩き始めたりすると強化されていきます。

その後も思春期にかけて背骨のカーブは成熟していき、成人と同等のS字カーブを獲得していきます。「早ければ10歳前後」という報告もありますが、「13〜15歳前後」という報告もあります。いずれにせよ、歩き始めくらいではまだまだ背骨の形状は発達途上ということがわかります。

S字カーブは天然の衝撃吸収装置
ところで、弯曲したアーチ構造は撓むことでバネのような衝撃吸収をする作用があります。これは歴史的な人工物でも見られます。

そしてヒトは地球上の生物でも珍しい縦に長い生物で、さらに体の頂上に平均約5kgという重たい頭を乗せています。

発達した脳とそれを収納する頭蓋骨の重さを支えるには、高層ビルなどの免震構造と同じように背骨の撓みを利用するのが効率的であり、そのためにS字カーブを獲得したと言われています。ここまでで背骨のS字カーブが重要であることは伝わったのではないでしょうか。
完全に伸びた膝がもたらす驚異の効率化
続いては特徴の2つ目、完全に伸びた膝についてです。

膝と言えばグルコサミンだとかコンドロイチンなどのサプリメントも販売され軟骨がすり減る関節というイメージがあるかもしれません。そもそも濡れた氷同士よりも摩擦係数が少ない、ツッルツルに滑る軟骨がなぜすり減るのか…というお話は今回はしませんが、ヒトの完全に伸びた膝は歩行に立つこと・歩くことにおいてとても重要なのです。
高い重心と脅威のエネルギー効率
突然ですが、ヒトの歩行のメカニズムはジェットコースターと一緒です。

ジェットコースターではコースの頂上まで引き上げられ、そこからは落下する勢い(エネルギー)で上がり下がりを繰り返します。小・中学生レベルの理科でお話をすると、位置エネルギーを運動エネルギーに変換しているというものです。ヒトはエネルギー変換を歩行において利用しています。

イラストでは上段で冗談で左足のかかと接地から始まり、右足のかかと接地まで、そして下段では右足のかかと接地から左足のかかと接地までを描いています。ちなみにこれを一歩行周期と言います。
ヒトの歩行では足が前後に伸び、必ず両足が接地している瞬間が現れますが、この時に重心の位置が1番低くなります(イラストの両端)。その後、片足立ちになる瞬間に重心が上がるようになります(イラストの中央)。この時の重心の垂直移動距離は平均3〜5cm程度とされています。イヌでは1〜2cm程度ということを比べれば、この重心の垂直移動距離はかなり大きいと言われています(体格などによっても左右されますが)。

ヒトも赤ちゃんの時は膝関節が通常時は曲がっています。歩き始める生後1歳3ヶ月前後でも膝が曲がっており、手を高く上げるなどしてバランスを取るようにして歩きます。

この時はまだ他の骨格や神経の発達なども未熟ですので効率的な歩行とは言えません。背骨のS字カーブと同様、だんだんと成熟していきます。
試しに膝を曲げて歩いてみると、太ももやふくらはぎ、お尻の筋肉が緊張しっぱなしで長時間歩くことが難しいことがすぐにわかると思います。常時スクワットしながら歩いているようなものだと考えれば、完全に伸びた膝というものがいかに重要かがお分かりになると思います。
背骨のS字カーブと伸びた膝が失われると…
ここまでヒトの骨格の2大特徴である背骨のS字カーブ・完全に伸びきる膝が失われるとどうなるでしょうか?とても良いイラストがありました。

ギリシャ神話で登場するスフィンクスが出したという「朝は四本足、昼は二本足、夕方は三本足。この生き物は何だ?」という世界最古のなぞなぞを思い出しますが、背骨と膝関節はとても深い関係があります。背骨のS字カーブと完全に伸びた膝は連動しており、どちらかが失われるともう一方も失われやすくなります。
ヒトが600万年かけて獲得した効率的な完全直立二足歩行を維持するには2大特徴の維持が重要になります。
S字カーブと完全に伸びた膝を意識する運動
背骨や膝に対する運動はたくさんありますが、今回は姿勢がテーマでもあるので姿勢に大きな影響を与える骨盤の傾きをコントロールする運動をご紹介します。
以下では動画を画像で切り抜いてステップバイステップで骨盤の傾きのコントロールをお伝えします。骨盤の傾きをコントロールしつつ、背骨や膝の角度の変化を感じながらやってみてください。
まずは基準となる骨を探します。股関節(足の付け根)の上にある骨の出っぱり(上前腸骨棘)を下がりましょう。

続いて、上前腸骨棘から斜め下中央にある恥骨を探しましょう。

STEP1・2で探した上前腸骨棘と恥骨で骨盤の前に三角形を作ってください。

骨盤の前に作った三角形が床(地面)に対して垂直にある状態が基準となります。ちなみにこの時に背骨のS字カーブや完全に伸びた膝が保持できていると下腹部に自然と引き締まる感覚が出たりします。

三角形が下を向くと反り腰になりやすくなります。

一方、三角形が上を向くと猫背になりやすくなります。

できれば骨盤の傾きも自在にコントロールできるようになると良いと思います。

動画・画像をご覧になるだけでも、骨盤の傾きが背骨や膝の角度に影響を与えていることがお分かりになると思います。姿勢では背骨だけ・膝だけではなく、全体をコントロールすることが重要です。
ちなみに姿勢は肩関節にも影響を与え、肩こりや五十肩などの問題に発展することがあります。お時間とご興味があればこちらのブログも併せてお読みください。
余談:腰の反り(腰椎前弯)はヒトだけ?
ちなみに猿回しのサルは直立歩行をする時間が長くなると腰の反り(腰椎前弯)が生じるそうです。

ただし、サルは完全に膝が伸びきらず(30°ほど曲がっているのが基準)、さらに股関節の後ろのばす可動域もヒトよりは制限されるようです。もちろん、筋肉のつき方も違いますので、ヒトと同じ歩行形態にはなりません。そもそも二足歩行ではなく、二手二足歩行と言われています。
まとめ:ヒトらしい骨格は重要!
ヒトの骨格は、直立二足歩行という特殊な進化を遂げた結果、背骨のS字カーブと完全に伸びた膝という特徴を獲得しました。この2つのメカニズムがあるからこそ、私たちは効率的に歩行し、日常生活を送ることが可能になっています。S字カーブは衝撃を吸収し、頭部や体幹を安定させる役割を果たし、完全に伸びた膝はエネルギー効率の良い歩行を実現しています。
しかし、これらの特徴が失われると、姿勢やバランスが崩れ、腰痛や膝の負担増加などの問題が発生する可能性があります。日常生活の中で背骨や膝の状態を意識しながら、適切な運動や姿勢改善に取り組むことが大切です。骨盤の傾きをコントロールする運動などを取り入れることで、姿勢改善だけでなく全身の健康維持にもつながります。
「正しい姿勢」とは一概に決められるものではありませんが、自分自身の体に合ったバランスの良い姿勢を探し、それを維持する努力が重要です。ヒトらしい骨格を最大限活用し、快適な生活を送りましょう!調子もぐっと良くなるはずです。今日からぜひ、意識してみてください!
神奈川県伊勢原市の整体院すいっちではさまざまなお悩みの方に選ばれ、施術させていただいています。ぜひ、以下の画像をタップして当院のホームページもご覧になってみてください。

姿勢を良くしたいんですけど、どうしたら良いか分からなくて…。