
親子で歩き方がよく似てるって言われてます!

兄弟で顔とか体つきが似てるってよく言われます!
このような話を聞いたり、実際に感じたことはありませんか?
以前の記事(股関節が硬い原因は筋肉だけじゃない!|骨格の個人差と個性を理解しよう!)では、大腿骨の前捻角(ぜんねんかく)という骨格の個性によって、あぐらのしやすさや前屈のしやすさ、歩き方の特徴が変わる可能性があることをお伝えしてきました。
また、前回・前々回の記事では骨格の個性と体の動かし方の関係についてまとめてきましたが、今回はさらにその続きとして、そもそも骨格の個性はなぜ生まれるのかを発達・遺伝・生活習慣という3つの視点からわかりやすく整理していきます。
なお、本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の症状の診断や治療を行うものではありません。痛みや強い違和感、成長に伴う明らかな変形などが気になる場合は、まず医療機関へご相談ください。
もくじ
結論:骨格の個性は「遺伝」か「習慣」かではなく、その両方で決まる
結論からお伝えすると、骨格の個性は遺伝だけでも、生活習慣だけでも決まるわけではありません。 生まれ持った骨格の傾向があり、そのうえに成長期の荷重、姿勢、運動習慣、周囲の環境が重なって、最終的な形が作られていくと考えるのが自然です。
これまで大腿骨の前捻角(ぜんねんかく)を取り上げた記事を2週続けて更新してきましたが、実は骨格の個性の話は大腿骨(股関節)だけの話ではありません。
他にも、肩の上腕骨後捻、骨盤の形、臼蓋の向き、足部の構造なども含め、私たちの体は「設計図」と「使われ方」の両方の影響を受けながら成長していきます。
骨は「硬くて変わらないもの」ではない
一般的には「骨は、硬くて、一度できたらもう変わらないもの」というイメージが強いかもしれません。しかし、実際の骨は、思っている以上に”生きた動的な組織です。
古い骨が少しずつ壊され(骨吸収)、新しい骨に作り替えられる(骨形成)というサイクルを、私たちは一生続けています。


そして、成長期にはこの作り替えのスピードが特に速く、立つ・歩く・走る・座るといった日常の動きの中で、「どの向きから、どれくらいの力が、どのくらいの期間かかるか」に応じて、骨の太さや向き、内部構造が少しずつ変化していきます。
このことから、骨格の個性は「変えられない宿命」ではなく、少なくとも成長期終了までは発達の過程で作られていく側面があるということです。
Wolff の法則:骨は力のかかり方に応じて形を変える
この「骨は力のかかり方に応じて形を変えやすい」という考え方は、古くからWolff(ヴォルフ)の法則として知られています。この法則を簡単に表すと、「骨において、よく使われて負荷がかかるところは強く・太くなり、あまり使われないところは痩せていく(細くなっていく)」というようなものです。
最近の研究でも、成長期の荷重環境や筋の張力が骨の発達に影響することが示されており、この古典的な考え方は現代でも骨格の発達を考えるうえで重要な枠組みのひとつです。


しかし、このWolffの法則があるからといって、「毎日しっかりとストレッチをして骨の形を整えていきましょう」という話ではありません。
むしろ大切なのは、日常において同じ方向だけに負荷がかかり続けないように、姿勢や動きにバリエーションを持つことだと私は考えています。
Hueter-Volkmann の法則:成長期の偏った圧は骨の発達に影響しうる
もう少しだけ専門的な話をすると、成長期の骨には骨端線(こったんせん:別名、成長軟骨)という部分があります。


この骨端線(成長軟骨)の部分が分裂・増殖して骨に置き換わることで、骨が縦に伸び、身長が伸びるのですが、実は骨端線は圧のかかり方にも敏感です。
そして、長い期間にわたって片側だけから強い圧縮がかかると、その側の成長がわずかに抑えられることが報告されており、専門用語でこれをHueter‑Volkmann(ヒューター・フォルクマン)の法則と呼びます。
これを聞いて


え!子どもが右足に体重を乗せてるんですけど、今すぐ直させなきゃダメですよね?!
と、焦る必要は必ずしもありません。このHueter‑Volkmann(ヒューター・フォルクマン)の法則は、あくまで長期スパンで見たときに、同じ方向だけに強い負担をかけ続けると、成長パターンに少し影響しうるというイメージです。
だからこそ、子どもでも大人でも、「いつも同じ座り方・いつも同じ立ち方・いつも同じ片側重心だけ」にならないように、姿勢や動作のバリエーションを持っておくことが大切だと私は考えています。
骨格の個性の例:大腿骨前捻角は成長とともに変化する
前回までの記事でもお伝えした大腿骨前捻角は、出生時には比較的大きく、成長とともに小さくなっていくのが一般的です。多くの場合、成人になるころには標準の範囲(8〜25°程度)に落ち着きますが、その最終的な落としどころに個人差(個性)が生まれます。


この変化は、単に年齢が上がるから自動的に起きるというより、立つ・歩く・走る・座る・方向転換するといった日常の運動経験の中で、骨に繰り返し力が加わることと深く関係していると考えられています。
そのため、同じ年齢でも前捻角にはかなり個人差があります。この前捻角の個人差(個性)によって、ある人は股関節の内旋可動域が大きく、外旋可動域が小さいまま成長したり、別の人は比較的バランスのよい回旋可動域を持つようになります。


この可動域の違いは、単なる筋肉の柔軟性などからくる「体の硬さ」では説明できないことがあります。
遺伝はどこまで関係するのか
骨格の個性を考える際、遺伝の影響は無視できません。家族で足先の向きが似ていたり、歩き方や座り方の傾向が似ていたりするのは、単なる真似だけではなく、もともとの骨格傾向が共通している可能性があります。


例えば、股関節周囲の形態や臼蓋形成不全(股関節の受け皿側の深さが不足している状態)の研究でも、股関節の形には遺伝的背景が関与することが示されています。最近の遺伝学研究でも、股関節形状に関連する複数の遺伝的要因が報告されており、骨格の個体差がかなり多因子的であることがわかってきています。


実際、私が過去に担当させていただいた股関節痛の親子(お母様と娘様)は、撮影した股関節のレントゲン画像がそっくりだったことがあります。これはあくまで私が担当した1組の例ですが、遺伝による影響をよく感じるエピソードでした。
ただし、ここで大切なのは「遺伝だから変えられない」と考えすぎないことです。遺伝はあくまで傾向であり、実際の動き方や負担のかかり方は、その後の環境によって大きく変わります。
胎内環境や出生前の姿勢も影響しうる
骨格の個性は、生まれた後だけでなく、胎内での姿勢や負荷環境の影響も受ける可能性があります。大腿骨のねじれや股関節まわりの形態は、出生前の発育過程でも変化しており、子宮内での体位や成長環境が一定の影響を与えると考えられています。
ただし、「この姿勢だったから必ずこうなる」といった単純な話ではなく、出生後の成長環境と合わせて理解する必要があります。
生活習慣は本当に骨格を変えるのか
結論から言うと、成長期の生活習慣や荷重環境は骨格の発達に影響する可能性があります。 ただし、何か一つの姿勢だけで骨格が大きく決まる、とまでは言い切れません。
たとえば、毎日の歩き方、座り方、片脚重心の癖、スポーツでの反復動作などは、関節の使い方に偏りを作ります。その偏りが、筋力バランスや回旋の使い方、骨盤や脊椎の代償パターンに影響し、結果として「この人らしい骨格・動作の個性」を強めていくことがあります。
ここで大切なのは、習慣は骨そのものだけでなく、筋・関節周囲組織・神経系によるコントロールも含めた”動きのクセ”全体に影響するという視点です。骨格と動作習慣を切り離さずに見ることが大切です。
女の子座りは「原因」なのか、「結果」なのか
親御さんからよく聞かれる質問と以下のものがあります。


うちの子、女の子座りばっかりしているんですけど、股関節が悪くなったりしませんか?
実はこれは非常に重要なテーマです。これは女の子座り(専門的には割り座、W sitting)に限った話ではなく、他の座り方(あぐら、横座りなど)でも同様にご質問をいただきます。


まず、現時点では、特定の座り方そのものが股関節形成異常や障害の原因になると断定できる強い科学的根拠は十分ではありません。
私が調べた限り、2025年の系統的レビューでは、女の子座りを避けるべきとする科学的根拠は見つからず、股関節形成不全との因果関係も確認されませんでした。つまり、「女の子座り=悪い座り方」と単純に決めつけるのは、現在の科学的理解とは少しずれています。
一方で、私の経験上、女の子座りをしやすい子ども(もしくは幼少期にその習慣があった成人)に過前捻傾向や内旋優位の可動域が見られることは珍しくありません。そのため、女の子座りは”原因”というより、もともとの骨格や回旋の個性が表面に出た姿勢と捉える方が自然かもしれません。
つまり、現時点では、特定の座り方を「絶対に禁止」にするのではなく、いろいろな座り方ができること、多様な動きを経験できることが大切と考えるのが、現時点ではバランスのよい理解だと私は考えます。
スポーツは骨格の個性を強めることがある
骨格と習慣の関係を理解しやすい例として、上腕骨後捻があります。野球、テニス、バレーボールなどのオーバーヘッドスポーツを成長期に続けた人では、利き腕側の上腕骨後捻が大きくなりやすいことが、複数の研究で示されています。
2018年の系統的レビューでは、投球側の上腕骨後捻は非投球側より大きくなる傾向があり、これに伴って内旋可動域の低下や後方関節包の変化なども見られることが報告されています。


これは非常にわかりやすい例です。成長期にどんな力が何度も加わったかによって、骨格の個性が強調されることがあるのです。股関節でも同じように、成長期の荷重環境や使い方が、もともとの骨格傾向を強める可能性があります。
スポーツや文化活動を成長期に継続することは、体の発育にとっても豊かな経験です。ただし、その活動特有の偏った動作や姿勢のクセを理解したうえで、それに合わせたストレッチや可動域ケアを習慣にしておくことが、長い目で見た予防として大切だと私は考えています。
臼蓋の向きや骨盤の形も「個性」の一部
ここまで前捻角を中心にお話ししてきましたが、股関節の動きを決めるのは大腿骨だけではありません。骨盤側の臼蓋(きゅうがい:股関節の受け皿)の向きや深さ、骨盤全体の形も、可動域や詰まり感に影響します。


股関節の形状には大腿骨側だけでなく臼蓋側の遺伝的背景も関与していることが示されており、股関節の個性は「前捻角だけで説明できるものではない」と理解した方が正確です。
この視点は、前回と前々回の記事でお伝えしてきた「同じストレッチが全員に合うわけではない」「足先の向きや前屈のやり方は人によって最適解が違う」という話にもつながります。
2つの法則が教えてくれる、シンプルな実践のヒント
今回ご紹介したWolff の法則とHueter‑Volkmann の法則は、どちらも「骨は生きていて、力のかかり方に少なからず影響を受ける」ということを教えてくれる考え方です。
ただし、それを「毎日限界までストレッチして骨を矯正しましょう」という方向には使うべきではないと思います。大切なのは、以下のような、日常の中で続けやすいシンプルな工夫です。
- 同じ姿勢・同じ動き方だけを毎日繰り返さない(座り方・立ち方・重心のかけ方にバリエーションを持つ)
- スポーツや文化活動をするなら、その活動特有の動作パターンを知る(どんなクセが出やすいかを理解する)
- そのクセに合わせたストレッチや可動域ケアを習慣にする(無理に「矯正」しようとするのではなく、バランスを整えるイメージで)
骨格の個性は「変えられない運命」ではなく、「生まれつきの傾向」と「これまでの使い方」の共同作品のようなものです。
だからこそ、自分の体の特徴を知ったうえで、無理なく続けられる範囲でケアや動き方を工夫することが、長い目で見たときの一番の予防になるのではないか、と私は考えています。


よくあるご質問
ここからはよくある質問に対する回答をご紹介します。これまでの復習代わりにもお読みください。


- 骨は力のかかり方に応じて形を変えうる(Wolffの法則・骨リモデリング)
Weinans H, Prendergast PJ. Growth Plate Mechanics and Mechanobiology: A Survey of Present Understanding. J Biomech. 2009;42(12):1793-1803.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2739053/ - Hueter‑Volkmann 法則:成長期の成長軟骨は圧縮に敏感で、長期の偏った荷重が成長に影響しうる
Stokes IAF. Do the “Hueter–Volkmann Law” and “Delpech’s Law” Apply to Children with Accelerated Growth? Eur Spine J. 2007;16(8):1258‑1263.
http://www.thespineinstitute.com.au/Research/files/23cf315966ae8da76055c229cf4d149c-24.html - 大腿骨前捻角は出生時に大きく、成長とともに減少する(骨格発達としての「個性」)
Femoral Anteversion. Orthobullets – Pediatrics. 2024 update.
https://www.orthobullets.com/pediatrics/4059/femoral-anteversion - 股関節形状・臼蓋形成不全などには遺伝的背景がある(「骨格の個性」と遺伝)
Jacobsen KK, et al. Genetics of Hip Dysplasia – A Systematic Literature Review. Acta Orthop. 2024.(PDF公開)
https://www.helse-bergen.no/4a8676/contentassets/796070d250b84fa08a4b37755e716a79/jacobsen-kk-genetics-of-hip..2024.pdf - 女の子座り(W-sitting)は股関節形成不全の直接原因とは言えない
Duman Ö, et al. W-Sitting in Childhood: A Systematic Review. J Pediatr Rehabil Med. 2025;18(1):xx‑xx.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11723520/ - オーバーヘッドスポーツは成長期の上腕骨後捻を増大させうる(スポーツが骨格の個性を強める例)
Cools AM, et al. Bilateral Asymmetries of Humeral Retroversion in Junior and Collegiate Tennis Players. J Athl Train. 2021;56(4):368‑375.
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8675307/
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まとめ:骨格の個性は「生まれつき」と「育ち方」の共同作品
本記事のまとめをします。
「体が硬い」「歩き方が変」「姿勢が悪い」とひとまとめに考えるのではなく、まずは自分の骨格の個性を知ることが、遠回りに見えて実は近道かもしれません。
神奈川県伊勢原市の整体院すいっちでは、このような骨格の個人差や動作の特徴を踏まえながら、お一人お一人に合った体の使い方を一緒に考えることを大切にしています。体の動かしにくさや姿勢、スポーツや文化活動でのお悩みがありましたら、必要に応じて医療機関とも連携しながら対応しておりますので、お気軽にご相談ください。
ぜひ、以下の画像をタップして当院のホームページもご覧になってみてください。


重要な免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断・治療を行うものではありません。股関節の強い痛み、急な歩行障害、成長とともに悪化する変形、発熱や外傷を伴う症状などがある場合は、自己判断せず医療機関でご相談ください。





















子どもの頃から内股だったんです…