夏になると関節が痛くなる?暑さが体に及ぼす影響とその科学的メカニズム

運動中に膝を痛めた男性
膝関節痛に悩む中年男性

暑くなると関節が痛い気がするんです…気のせいですかね?

暑い時期になると、一定数このようなご相談を受けるのですが、実は、気温上昇と痛みにも複数の科学的なメカニズムが関係していると考えられています。

一般に寒い時期の冷えによる痛みは知られていたり、実際に体感したりする方が多いように思います。以前の記事「寒くなるとつまずきやすくなる?寒さが体に及ぼす影響とその科学的メカニズム」では、寒さが体に与える影響についてお伝えしました。

今回はその逆、夏の暑さと関節の痛みの関係について、医学的・科学的な知見をもとに解説していきます。

なお、現代の医学的観点で確認されている情報をベースにしていますが、医学知識は常に更新されます。あくまで参考程度にお読みいただき、ご自身の健康について不安な点がある場合は、必ず医療機関でご相談ください。

暑いと関節が痛くなるのは気のせいなのか?

まず最初にお伝えしたいのは、「暑くなると関節が痛くなる気がする」という感覚は、単なる思い込みとは言い切れないということです。

気象条件と痛みの関連については、長年にわたり複数の研究が行われてきました。ある系統的レビューでは、気温を含む気象要因全般が関節の痛みと関連することが報告されています。

一方で、別の研究では気温と痛みの間に明確な関連は見られなかったという結果も出ており、学術的にはまだ結論が一致していない領域であることも事実です。

つまり、「暑さで関節が痛くなる」という現象は、一部の痛みのタイプでは比較的よく説明できる一方、痛みの種類によっては関連がはっきりしないという、少し複雑な状況にあるのです。

頭痛でこめかみを抑える女性
気象病といえば、低気圧と頭痛も一般にイメージがあると思いますが、この関連も複雑です。

暑さが痛みに影響する4つのメカニズム

ここからは、暑さが体にどのような影響を及ぼし、痛みにつながる可能性があるのか、具体的な仕組みを見ていきましょう。

1. 脱水と関節・血管への影響

暑い環境では、発汗によって体から水分と電解質が失われます。

軽度の脱水であっても、関節液の状態や血流に影響を与える可能性があることが指摘されています。また、暑さによる血管の拡張が、手足のむくみや腫れっぽさにつながり、これが関節の違和感を強める一因になることも考えられています。

熱中症の高齢男性

2. 温度を感じるしくみと痛みのしくみが似ている

体が温度を感じる仕組みと、痛みを感じる仕組みは、実は神経のレベルでかなり近いところを通っています。

温度や痛みの情報は、主に細い感覚神経を通って脊髄に入り、脊髄視床路と呼ばれる同じ経路を通って脳に伝わることが分かっています。さらに、熱を感じるセンサーの一つであるTRPV1(温度受容体タンパク質の一種)は、条件によって痛みの感覚にも関わることが分子レベルの研究で明らかになっています。

このように、「暑さを感じる回路」と「痛みを感じる回路」が神経のレベルで一部重なっていることが、暑さが痛みとして感じられやすくなる背景の一つと考えられています。

外側脊髄視床路
専門的に、温度覚と痛みは外側脊髄視床路という経路を通ります。

3. 炎症がある部位では暑さが「痛み」に変わりやすい

関節に炎症があると、通常なら「ただ暑い」と感じるはずの温度刺激が、痛みとして強く感じられやすくなることが指摘されています。

これは、炎症によって神経の感受性が高まる「感作」という現象が関係していると考えられており、関節に炎症を持つ方ほど、暑さの影響を痛みとして自覚しやすい可能性があります。

いろいろな部位の痛み

4. 尿酸値の上昇(痛風に関連する痛みの場合)

関節の痛みの中でも、痛風に伴う痛みについては、暑さとの関連を示す研究が比較的多く報告されています。

高温・高湿度の環境では発汗による脱水が起こりやすく、これが血液中の尿酸値を上昇させる一因になるとされています。実際に、夏季に痛風の症状が増加する傾向を報告した研究も存在します。

痛風発作が出ている右母趾

特に暑さの影響を受けやすい痛みのタイプ

暑さと痛みの関連は、痛みの種類によって強さが異なると考えられています。学術的な報告を整理すると、以下のような傾向が見られます。

痛みのタイプ暑さとの関連の傾向参考にされている考え方
痛風に伴う痛み比較的関連が指摘されやすい脱水による尿酸値の変化
関節に炎症を伴う痛み関連が指摘されることがある炎症部位での神経の感受性亢進
慢性的な痛み全般個人差が大きい温度と痛みの神経経路の重なり
加齢に伴う関節の違和感研究によって結果が分かれる気象要因の影響は一定しない

このように、すべての関節の痛みが同じ理由で暑さの影響を受けるわけではないという点は、ぜひ知っておいていただきたいポイントです。

学術的には「まだ議論が続いている」領域

ここまで暑さと痛みの関連についてお伝えしてきましたが、再確認としてまとめると、この分野の研究結果は完全に一致しているわけではありません。

あるレビュー研究では、気象と慢性的な痛みの関連を調べた研究のうち、約7割で何らかの関連が確認された一方、残りの研究では有意な関連は見られなかったと報告されています。

これは、痛みの原因や個人の感受性が非常に多様であることを反映していると考えられます。

そのため、「暑さ=関節痛の直接的な原因」と単純に結びつけるのではなく、「暑さが痛みを感じやすくする一因になりうる」という、少し慎重な理解の仕方が適切だと言えるでしょう。

日常生活でできる暑さ対策

暑さによる体への影響をできるだけ軽減するために、日常生活で取り入れやすい対策をご紹介します。

1. こまめな水分・電解質補給

脱水は痛みだけでなく、様々な体調不良につながる可能性があります。

  • 喉が渇く前にこまめに水分を摂る:一度にたくさん飲むのではなく、少量をこまめに補給しましょう。
  • 汗をかいた時は電解質も意識する:大量に汗をかいた場合は、水だけでなく塩分やミネラルも一緒に補給すると良いとされています。
  • 冷たい飲み物の摂りすぎに注意:冷えすぎた飲み物は胃腸に負担をかけることがあります。
スポーツドリンクを飲みつつ汗を拭く黒人男性

2. 室内環境の温度管理

暑い環境に長時間身を置くことは、体への負担につながります。

  • 室温の目安:一般的には28℃前後を目安に、エアコンや扇風機を上手に活用しましょう。
  • こまめな換気:室内の熱や湿気がこもらないよう、換気も心がけましょう。
  • 就寝時の室温管理:夜間も適切な室温を保つことで、睡眠の質の維持につながります。
エアコンで快適な室内で作業をしている女性

3. 無理のない範囲での運動

暑い時期は運動を控えがちですが、適度な活動は関節の動きやすさの維持に役立つと考えられています。

  • 涼しい時間帯を選ぶ:早朝や夕方など、比較的涼しい時間帯に軽いウォーキングやストレッチを行いましょう。
  • 室内での軽い運動:冷房の効いた室内でのストレッチや軽い体操も選択肢の一つです。
  • 無理のない範囲で継続する:痛みが強い場合は、無理をせず休むことも大切です。
天気の良い公園をウォーキング(散歩)をしている老夫婦の後ろ姿

4. 衣服・生活面での工夫

  • 吸湿性・速乾性のある衣類を選ぶ:汗をかいてもべたつきにくい素材が快適です。
  • 直射日光を避ける:外出時は日陰を選んだり、日傘や帽子を活用しましょう。
  • 十分な休息を取る:暑さによる疲労は、体全体の調子に影響を与えることがあります。
麻の服
私も夏場はリネン素材の服をよく着ます。

整体による身体のメンテナンスの役割

ここで、整体師という立場からお伝えすることとして、整体の施術は、直接的に痛みの原因となる病気を診断したり、治療したりするものではありません。整体は医学的な治療ではなく、身体のメンテナンスを目的としたものです。

しかし、整体施術は、以下の点で間接的に「暑さに負けない体づくり」に役立つ可能性があります。

筋肉の緊張緩和による体の負担軽減

暑さによる自律神経の乱れは、無意識のうちに体に力が入りやすい状態をつくることがあります。

整体の施術により筋肉の緊張が緩和されると、関節への余計な負担が軽減される可能性があります。

関節可動域の維持による動きやすさのサポート

普段から関節の動きをスムーズに保つことは、日常動作の負担を減らすことにつながると考えられます。

整体の施術により関節の動きがサポートされると、日常生活での快適さにつながる可能性があります。

リラクゼーションによる自律神経へのアプローチ

施術による身体のリラックスは、ストレスホルモンの軽減と副交感神経の優位をもたらすと考えられています。

これは、暑さによる体調の乱れを整えるサポートにつながる可能性があります。

以上のように整体は「暑さ対策の直接的な手段」ではなく、「暑さに負けない体づくりを支援する、身体のメンテナンス」として役立つ可能性があります。

整体で運動を受けている様子

ここまでお読みいただく中で

疑問を浮かべる女性

自分でできる暑さ対策はないだろうか?

疑問を浮かべる男性のイラスト

できれば自分に合った方法を知りたいなぁ。

と感じている方も多いと思います。

当院では施術とは別に、ご自宅でのケアをサポートするオンライン専門の【セルフケアサポートLINE】をご用意しています。

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よくあるご質問

ここからはよくある質問に対する回答をご紹介します。これまでの復習代わりにもお読みください。

Q&Aの画像

暑さによる痛みの感じ方の変化は、上記のような複数のメカニズムが関係している可能性がありますが、痛みが強い、長引く、腫れや発熱を伴う場合は、自己判断せず医療機関を受診してください。

冷房自体が関節に悪影響を与えるという明確な医学的根拠は確立されていません。

ただし、冷えすぎた環境が体の緊張につながる可能性はあるため、適切な室温管理を心がけると良いでしょう。

暑い時期は脱水が尿酸値に影響しうることが報告されているため、こまめな水分補給が一般的に推奨されます。

ただし、持病がある方は必ず主治医の指示に従ってください。

  1. 気象条件(気温を含む)と変形性関節症(OA)の痛みに関連がある
    Wang L, et al. Associations between weather conditions and osteoarthritis pain: a systematic review and meta-analysis. Ann Med. 2023;55(1):2196439.
    https://doi.org/10.1080/07853890.2023.2196439
  2. 気温と痛みの関連は慢性的な筋骨格系疼痛全体では研究間で一致していない
    Beukenhorst AL, et al. Are weather conditions associated with chronic musculoskeletal pain? A review of methodology and findings. Pain. 2020;161(4):681-691.
    https://www.ovid.com/10.1097/j.pain.0000000000001776
  3. 温度と痛みの神経回路が重なっている(TRPV1チャネルの関与)
    Tominaga M. TRPV1 and thermosensitivity. J Pharmacol Sci. 2025;157(1):1-10.
    https://doi.org/10.1016/j.jphs.2025.01.005
  4. 環境温度と慢性疼痛の相互作用(最新レビュー)
    Weathering the Pain: Ambient Temperature’s Role in Chronic Pain. J Pain Res. 2025;18:1-18.
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11759284/

関連記事

本記事では暑さと関節の痛みについてまとめてきました。

冬場の体の変化については「冬になるとつまずきやすくなる?寒さが体に及ぼす影響とその科学的メカニズム」の記事でも解説していますので、季節による体の変化に興味のある方は、ぜひ合わせてご覧ください。

また、水分摂取と痛みについては「肩こり・腰痛は水分不足が原因かも?今日から始める水分補給とその重要性」の記事も参考になると思います。

カーペットに足を引っかけてつまずく女性
水分補給をしている女性

まとめ:暑さと上手に付き合い、夏を快適に過ごすために

ここまで、暑さが関節の痛みに与える影響とそのメカニズム、そして対策について解説してきました。最後に、重要なポイントをまとめます。

  • 暑さと痛みの関連は、痛みの種類によって強さが異なる
    • 痛風に伴う痛みは、暑さ(特に脱水)との関連が比較的よく報告されています
    • 変形性関節症などでは、研究によって結果が一致していません
  • 暑さが痛みに影響するメカニズムは複数考えられている
    • 脱水による関節・血管への影響
    • 温度感覚と痛覚の神経経路の重なり
    • 炎症部位での神経の感受性亢進
    • 尿酸値の変化(痛風の場合)
  • 学術的にはまだ議論が続いている領域である
    • 「暑さ=関節痛の直接的な原因」と単純に結びつけることは避け、一因の可能性として理解することが大切です
  • 日常生活でできる対策がある
    • こまめな水分補給、適切な室温管理、無理のない運動、生活面での工夫が役立つ可能性があります

夏場の関節の違和感は、「気のせい」「歳のせい」だけではなく、暑さという外的要因による影響が関わっている可能性があることを理解していただければと思います。そして、適切な対策を取ることで、暑さによる影響を軽減し、夏をより快適に過ごすことができる可能性があります。

整体院での施術も、このような「全体的な健康管理」の一環として機能する可能性があります。身体のメンテナンスを通じて、ストレス軽減や生活の質向上をサポートすることが、私の役割だと考えています。

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