
太極拳歴は数十年!太極拳の正しい姿勢で日常生活も送っていますよ!
私の仕事柄もあって、「正しい姿勢」という言葉を見聞きしたり質問されたりします。私自身はヨガインストラクターの資格を保有しておりますし、お客様で太極拳を習われている方もいらっしゃっいます。それぞれを比較すると「なるほど、姿勢も動きも狙いも違うものだなぁ」と思うことがあります。
先に私なりの答えをお伝えすると、絶対的に正しい姿勢はありません。とは言え、この答えはヨガや太極拳を否定するものではありません。そして、それぞれで取る基本的な姿勢にはメリット・デメリットがあるというお話を今回はさせていただきます。

なお、ブログタイトルにvs.とありますが、対決や優劣を競う意図はありません。私なりに公平な視点で考えてみたいと思います。また、これまでに立った姿勢(立位姿勢)についてと、座った姿勢(坐位姿勢)についてのブログを書いてきたのでこちらのブログも併せてご覧ください。
もくじ
はじめに:正しい姿勢は本当に存在するのか?
「良い姿勢を保ちましょう」「背筋を伸ばして座りましょう」といったアドバイスを見聞きしたことがある方も多いと思います。しかし、すでに答えを出していますが、私は絶対的に忠姿勢は存在しないと考えています。

現代社会では、長時間のデスクワークやスマートフォンの使用など、座ったまま過ごす時間が増えています。その結果、腰痛や肩こりに悩む人が増えており、「正しい姿勢」を探し求める声が高まっているのでは…と個人的には考えています。しかし、「これが唯一の正解」という姿勢は存在せず、状況や目的に応じて異なるアプローチが大切です。
今回のブログでは、ヨガやピラティスに多い生理的弯曲保持型アプローチと太極拳などの武術に多い弯曲平坦化型アプローチという2あつの姿勢改善法を比較し、それぞれのメリット・デメリットを明らかにしていきます。そして、「正しい姿勢」をどのように使い分けるべきかについて解説します。腰痛や肩こりに悩む方はもちろん、日常生活で疲れにくい体を作りたい方もぜひ参考にしてください!
生理的弯曲保持型アプローチ vs. 弯曲平坦化型アプローチ
何だか長ったらしい名前で分かりにくいと思いますが、まず押さえていただきたいのは「ヒトの背骨はS字カーブをしている」と見聞きしたことがあると思います。

このS字カーブ(弯曲)のことを生理的弯曲と言います。背骨は変形したり、手術などで固定したりしない限りは動きますのでそのカーブの程度を可動域内で変えることができます。
そして(誠に勝手ながら)この生理的弯曲を保持するアプローチと弯曲を平坦(フラット)にするアプローチの2つに大別して、それぞれのメリット・デメリットをお伝えしていきます。
前提知識:姿勢の安定性に関わる支持基底面と重心の関係
両タイプの比較をする前に前提知識として支持基底面と重心のお話をさせてください。ちょっと小難しい物理のお話ですが、なるべく平易になるように意識しました。

支持基底面とは?
支持基底面とは、体が接地している部分で囲まれた範囲のことです。この範囲が広いほど安定性が高まり、狭いほど不安定になります。例えば立っている姿勢でも…
- 足幅を広げると支持基底面が広くなり、安定性が増します。
- 足を閉じて立つと支持基底面が狭くなり、不安定になりやすい。
他にも立っている時よりも座っている時や寝ている時の方が体が接地している部分で囲まれた範囲が広くなるので安定性が増します。ただし、動きやすさとは別です。
重心とは?
重心とは、体全体の質量が集中している点です。重心が高い位置にあるほどバランスを崩しやすく、不安定になります。一方で、重心が低い位置にあると安定性が増します。例えば:
- 背筋を伸ばして立つと重心は高めになり、安定性が減ります。
- 膝を軽く曲げたり腰を落とすと重心が低くなり、安定性が向上します。
他にも立っている時よりも座っている時や寝ている時の方が重心位置が低くなるので安定性が増します。
支持基底面と重心の関係
ここでもう一度、下のイラストをご覧ください。

イラストを左右で比較すると、左は支持基底面が狭く、重心位置が高いため安定性に欠け、右は支持基底面が広く、重心位置が低いため安定性が増しているということが分かります。このように支持基底面と重心の2つの要素は密接に関連していることが分かります。
ただし、これもどちらが良い・悪いというお話ではありません。今回はこれらの前提知識を踏まえた上で、生理的弯曲保持型アプローチと弯曲平坦型アプローチの比較を行っていきます。
生理的弯曲保持型アプローチ:自然なS字カーブ維持とその特性
ヨガやピラティスで採用される生理的弯曲保持型アプローチは、ヒト本来のS字カーブ(脊柱の生理弯曲)を維持した姿勢は基本姿勢となっています。例えばヨガでは、足を閉じた姿勢や直立したポーズ(例:山のポーズ)が多いです。

生理的弯曲保持型アプローチでは次のような特徴が考えられます。
支持基底面と重心から見た特性
- 支持基底面:足を閉じることで狭くなり、不安定になりやすい。
- 重心:背筋を伸ばし胸を張るため、高めになりやすい。
【メリット】
- 自然なS字カーブ維持によって椎間板(背骨の間にあるクッション)への圧が分散される。
- インナーマッスルの活性化により、動的安定性(体を動かせる際の安定性)が向上。
- 柔軟性向上やバランス感覚のトレーニングに最適。
【デメリット】
- 支持基底面が狭いため、不安定な環境ではバランスを崩しやすい。
- 重心が高いため、外部からの衝撃には弱い。
これらの特徴を踏まえると生理的弯曲保持型アプローチは、じっとして姿勢を保持することや柔軟性の向上を図る運動には適しているものの、不安定な環境下では注意が必要です(それでも不安定な環境下でさまざまなポーズをし、集中力や体のコントロール能力の向上を図るのもヨガだったりしますが)。
弯曲平坦化型アプローチ:体幹の剛性アップとその特性
一方で、太極拳などの武術や格闘技で採用される弯曲平坦化型アプローチでは、足を肩幅以上に広げた姿勢(例:騎馬立ち)が基本となります。また名前の通り、背骨の弯曲を平坦(フラット)になるようにするのが特徴です。

弯曲平坦型アプローチでは次のような特徴が考えられます。
【支持基底面と重心から見た特性】
- 支持基底面:足幅が広いため広くなり、安定性が増す。
- 重心:腰を落とすことで低くなるため、さらに安定性が増す。
【メリット】
- 支持基底面が広いため外部からの衝撃にも強い。
- 重心が低いため動作中でもバランスを崩しにくい。
- 安定した土台によって力強い動作(例:突きや回転)が可能になる。
【デメリット】
- 長時間この姿勢を維持すると下半身への負担が大きくなる。
- 柔軟性向上にはあまり適さない場合もある。
これらの特徴を踏まえると弯曲平坦化型アプローチは、外部から衝撃を受ける状況や体を動かす際には非常に効果的です。そもそもが格闘や防衛を目的としているはずなので、安定感がないと困るわけです。
正しい姿勢は1つではない!それぞれの特徴から考える使い分け
結論として、「正しい姿勢」は1つではなく、状況や目的によって使い分けることが重要です。以下は具体的な使い分け例です。
例1:デスクワーク中の姿勢
- 生理的弯曲保持型で自然なS字カーブを意識しながら座る。
- 長時間同じ姿勢にならないよう小まめに体を動かす。

例2:スポーツや武道中
- 弯曲平坦化型で足幅を広げて腰を落とし、安定した土台で力強い動きを実現する。

例3:不安定な環境下
- 支持基底面を広げて重心を低くすることでバランス能力を高める。

私たちはほぼ無意識的にその時々の状況や環境に適応しようとさまざまな姿勢を取りますが、このように客観的に分析をすることで、その都度「いまの私は最適な姿勢をしているか?」と体に問いかけてみるのも良いと思います。
ただし、歩行だけは注意かも?
最後に強調しておきたいのは、これまでお伝えしてきた通り、動いている時に安定しやすいのは弯曲平坦型アプローチです。しかし、ヒトの歩行はバランスを崩しながら行うという面もあるので、歩くときの基本は生理的弯曲保持型アプローチの方が良いであろうと私は考えています。

この辺りについては以下のブログをご覧いただければと思います。
まとめ:支持基底面と重心も考慮した最適な姿勢選ぼう!
今回の記事では、「正しい姿勢」の観点に加え、「支持基底面」と「重心」という物理的(運動学的)要素から2つのアプローチ(生理的弯曲保持型・弯曲平坦化型)を比較しました。それぞれには一長一短がありますので、ご自身の日常生活や運動習慣に合わせて柔軟に使い分けることが大切です。
最後にもう一度ポイントをまとめます:
- 支持基底面は広いほど安定しやすい。
- 重心は低いほど安定しやすい。
- 状況によって、生理的弯曲保持型と弯曲平坦化型のどちらか適切な方法を選択する。
今回のブログも参考になれば幸いです!
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ヨガを何十年とやっています。ヨガのお陰で正しい姿勢が取れるようになりました!