
五十肩の原因は多岐に渡りますが…例えば、肩甲下筋はほとんどの人が硬くなっているんですよ。

肩甲下筋?また聞き馴染みのない筋肉ですが、教えてください!

承知しました!では肩のインナーマッスルの最後で肩甲下筋をピックアップしてセルフケアの方法をご紹介します!
四十肩・五十肩でポイントとなる肩甲下筋
以前のブログ【四十肩・五十肩】痛む場所は肩だけ?腕も痛いのはなぜ?でもお伝えしたように、四十肩・五十肩は何らかのきっかけで肩関節の組織が傷つき、その傷の修復を行うべく起きる炎症を本態とする病気です。炎症が起きている間に生じる強い痛みやそれに伴う可動域制限、また炎症後には組織がカサブタのように硬くなってしまうことによる可動域制限などが生じます。
また炎症による痛みが生じると関節がずれないように(傷口がそれ以上広がらないように)筋肉が強く収縮し、炎症が治った後も収縮が持続してしまうことがあります。この筋肉の持続的な収縮は血行障害や神経の挟み込みなどを引き起こし、二次的・三次的な痛みや可動域制限を生じさせます。ここまでのお話は以下の関連記事にて詳しくお伝えしています。
こういった知識を前提とし、今回は四十肩・五十肩でトラブルが起きやすい筋肉として肩関節のインナーマッスルの中から肩甲下筋をピックアップし、四十肩・五十肩の治し方として棘下筋のセルフケアなどをお伝えしていきます。

肩甲下筋の場所と作用

図はVISIBLE BODY®︎ HUMAN ANATOMY ATLASより。
小円筋は肩関節のインナーマッスル(回旋筋腱板:棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の総称)の1つです。肩関節を動かす際に安定させたり、肩を外側に回旋させる(なんでやねんの動き)役割があります。
付着部:肩甲骨肩甲下窩〜上腕骨小結節
支配神経:肩甲下神経(第5〜6頸髄神経)
作用:肩関節の内旋
肩甲下筋と痛み・可動域制限
肩甲下筋による痛みは主に肩の後ろ側から肩甲骨、二の腕の後方にかけての痛みが出現します。また、手首の甲側にも痛みが出現することもあります。

図はMuscle Trigger Point Atlasより。
肩甲下筋の収縮やストレッチがうまくいかないなくなると、肩の高さよりも上方に腕を上げられないなど、強い可動域制限の原因にもなります。また、腕を外側に回す「なんでやねん」をするような動きの強い可動域制限を生じます。
四十肩・五十肩では肩関節の組織が硬化し、外旋可動域が制限されやすいです。
肩関節の外旋が制限される理由として肩甲下筋以外の組織も考えられるため、下記関連記事もご参照ください。
肩甲下筋が傷つくきっかけ
典型的な例としては腕を上げるなどの反復動作を行(何かを持ち上げる、クロールで泳ぐ、ボールを投げるなど)、前屈みの姿勢をとり続ける、、転倒を防ごうとして手をつくなどの過剰な負荷がかかる動作をする、長期間ギプスや副木で固定しているなどが肩甲下筋が傷つくきっかけになります。
ただし、上記のようなきっかけがなくても加齢によって筋肉の水分量が減ってしまっていたり、筋力低下があったりすると、日常生活の何気ない動作の反復でも傷ついて炎症につながることが考えられます。
肩甲下筋の検査(必ず行いましょう)

肩甲下筋のセルフケアをする前に検査を行うことをおすすめします。
肩関節周囲の痛みの原因は多岐に渡りますが、インナーマッスルのいずれか(もしくは複数)の筋肉が損傷もしくは断裂している腱板損傷や腱板断裂を引き起こしている場合もあります。腱板断裂が生じている場合に無理にストレッチなどを行うと病態がより悪化することが起こりえます。
肩甲下筋を検査する方法はいくつかあります。ひとりで確認できるものから、2人1組で行うものもありますのでご紹介していきます。
Bear Hug Test *ひとりで行える検査です
Belly Press *2人1組で行う検査です
Lift-Off Test (Gerber’s Test) *2人1組で行う検査です
患者さんは背中に手を置くように、肩を内回しさせます。
その後、患者さんは手を背中から離すようにします。この動作を行える場合は、検査者は患者さんの手を押し返し、筋力をチェックします。
左右で明らかに筋力差があったり、痛みが生じてこの検査を行えない場合や背中から手を離すこと自体ができない場合は肩甲下筋の損傷が疑われます。
これらの肩甲下筋の検査で痛みが生じたり、筋力低下がが確認できても、腱板損傷・腱板断裂によるものなのかはMRI検査を受けないと最終的には分かりません。しかし、検査が陽性だった場合には以下のセルフケアを行わず、念のために医療機関への受診をおすすめいたします。
四十肩・五十肩においては大抵の場合で様々な方向への可動域制限や様々な筋肉の筋力低下が認められますが、腱板が機能していればその時点の可動域範囲内で肩を保っていられたり、ゆっくり上げ下ろしができたりすることが多いです。逆に動かせても保持が難しい場合は医療機関への受診を検討してください。
四十肩・五十肩の治し方 肩甲下筋のセルフケア
小円筋に対するセルフケアは①ほぐす、②伸ばす(ストレッチ)の順番で行うことをおすすめいたします。
筋肉に持続的な収縮やコリが発生している場合、いきなり伸ばそうとしても筋肉の全長が伸びずにある部位は縮み、ある部位は伸びるといったことが起こり得ます。すると、伸びすぎた部位に傷がつくと行ったことが起こり得ますので、まずは硬そうな部位を探し出してほぐすのが良いでしょう。
肩甲下筋のほぐし方
突然ですが、肩甲下筋を自分でほぐすのはかなり難しいです。それは肩甲下筋が肩甲骨の内側に付着しており、肋骨との境目に位置しているためです。

図はVISIBLE BODY®︎ HUMAN ANATOMY ATLASより。
脇の部分の前方には大きな筋肉である大胸筋、後方には大きな筋肉である大円筋・広背筋があります。これらの筋肉と触り分けが必要になってきます。
触るコツとして肋骨に沿って脇の下に指を滑り込ませ、肩甲骨の内側を触るようにします。上記の画像を参考にしてと脇のほぼ中央付近を探ってみると、大抵は圧迫すると痛みの生じるコリッとした肩甲下筋を触ることができます。
痛みがある場合は許容範囲内に留め、30〜90秒を目安にほぐしていきます。
肩甲下筋のストレッチ
肩関節を内回しする(内旋する)筋肉は複数あり、肩甲下筋のみをターゲットに行うストレッチは困難です。そのため、肩関節内旋筋はある程度まとめてストレッチしていくことになります。
基本的には肩関節の外回し(外旋)をすることでストレッチされるので、以下の画像のような様々な角度で肩関節を外回ししていきましょう。

1stでは外側に、2ndでは上側に、3rdでは外側に肩関節を回すことで内旋金がストレッチされます。
なお、以下の動画では大胸筋をテーマにしていますが、肩甲下筋のストレッチにも使える方法ですので参考にしてみてください(動画より下の画像・文章では動画を切り抜いてご紹介していきます)。
肩関節を体の横に90°ほど挙げていきます。

STEP1の状態から肘から先を壁につけていきます。

肘から先は動かさないようにしながら体を開くようにして肩関節内旋筋をストレッチしていきます。

基本的にストレッチは痛みなく、反動をつけずに、30〜90秒ほどかけてゆっくり伸ばしていってください。

なお、肩関節の角度を90°よりも低くすれば上側の筋肉の線維が伸びますし、90°よりも高くすれば下側の筋肉の線維が伸びます。伸ばした感じや、可動域制限がある場合は現在のご自身の可動域に合わせて行うようにしてください。

その他の注意点
検査の項目でお伝えしたように、腱板損傷や腱板断裂が疑われる場合はセルフケアを行わずにまずは医療機関への受診をおすすめします。また、その他にも注意点があります。
肩甲下筋は広いのでさまざまな角度でケアをする
肩関節のインナーマッスル(回旋筋腱板)のうち、純粋な肩関節内旋筋は肩甲下筋のみです。一方、反対の作用を持つ肩関節を外回し(外旋)する筋肉は棘下筋・小円筋の2つがあります。
肩甲骨の前面(肩甲下窩)にベッタリと付着する肩甲下筋は上側から下側までさまざまな筋線維があります。これにより、肩関節のさまざまな角度でさまざまな筋線維が働くことができます。

図はVISIBLE BODY®︎ HUMAN ANATOMY ATLASより。
ストレッチの項目でお伝えしたように四十肩・五十肩の改善とともに可動域が広がってきたら、広がってきたその可動域内でしっかりとストレッチを行っていくことが大切です。
肩甲下筋はインナーマッスルの中でも特にさまざまな角度でケアをしていくことが大切な筋肉です。
肩甲骨の安定も大切
肩甲下筋を含めた肩関節のインナーマッスルは全て肩甲骨から上腕骨に付着しています。

このような構造上の特徴から肩甲骨が安定していないとこれらのインナーマッスルは効率的に働くことができません。そのため、これらインナーマッスルのケアをしつつ、肩甲骨もしっかりと動かせるようにするケアも同時に行うことが大切になります(今後ブログにしていきます)。
今回の参考サイト、参考書籍
【整形外科的テスト】肩関節に関するの28のスペシャルテスト
Valerie DeLaune 著, 伊藤和憲 監訳(2015). トリガーポイント治療 セルフケアのメソッド 株式会社緑書房
本日のまとめ:肩甲下筋のケアは重要!
今回は四十肩・五十肩の治し方をテーマにして問題を起こしやすい筋肉の1つとして肩甲下筋をピックアップし、検査やセルフケアの方法をご紹介しました。
検査の項目でお伝えしたように、四十肩・五十肩だと思っていても腱板損傷・腱板断裂などの別の病気であった場合もありますし、その場合は医療機関での対応が重要です。検査を行って怪しい場合や、ケアを行なって改善が見られない場合は医療機関への受診をして現状把握をまずすることをおすすめいたします。
今後も四十肩・五十肩において問題の起こしやすい筋肉を取り上げながら、その検査やセルフケアの方法をご紹介していきます。今回のブログ記事も四十肩・五十肩の改善につながれば幸いです。
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うーん、五十肩が良くならない。肩も上がらないし…。