
五十肩は痛みが落ち着いてもなかなか可動域も改善しにくいですよね。ところで「なんでやねん」の動きはできますか?

え、「なんでやねん」ですか?そんなの…あ、あれ?!できない?!なんで?!

そう、意外とできないんですよね。でも安心してください、五十肩ではある意味では「あるある」なんです。でも五十肩の改善にはとても重要な動きなのでご説明していきますね!
もくじ
四十肩・五十肩では硬くなるポイントとは
四十肩・五十肩において硬くなるポイントはいくつかありますが、その中の1つに腱板疎部という部位があります(下図の水色の部分)。

あまりにも聞き慣れない名前で「何のことやら?」だと思いますので、まずは腱板疎部とその周辺の肩関節の構造をざっくりとご説明した上で腱板疎部へのアプローチ方法をお伝えしていきます。
先に結論だけご説明しますと、腱板疎部が硬くなってしまうと「なんでやねん!」の動きができなくなってしまいます。そして肩関節において「なんでやねん!」ができないと、主に肩を上げる動きがしにくくなってしまうため、腱板疎部の柔軟性は重要なのです。
肩関節の構造① 肩を安定させる靭帯と関節包
肩関節に限ったものではありませんが、関節には骨と骨をつなぎ合わせる線維質な組織があります。これを関節包と言い、関節包が肥厚した部分を靭帯と言います。関節包と靭帯は筋肉と違い、自ら伸び縮みする作用はありませんが、硬い線維質なので必要以上に関節がずれないように安定させる作用があります。

ちなみに関節包や靭帯が正常な範囲を超えて伸びたり傷つくことを捻挫と言い、完全に断裂して関節がずれてしまった状態を脱臼と言います。
肩関節の構造② 肩を安定させるインナーマッスル
関節包と靱帯の上には4つのインナーマッスルがあり、これらも肩関節の安定化に寄与しています。
このインナーマッスルは棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋という筋肉で、まとめて回旋筋腱板と言います。単に腱板とも略されて呼ばれたりもしますし、英語ではRotator Cuffと言って日本でも単にCuffとも呼ばれます(つまりはみんな好きなように呼んでいるわけです)。

四十肩・五十肩においてはこのインナーマッスルの機能も悪くなることが多いのですが、それまた別の機会にお伝えしていきます。
肩関節の構造③ 腱板疎部は肩関節の弱点?
再び同じ図ですが、腱板疎部は下図の水色の部分を言います。

疎(まばら)という言葉の通り、腱板疎部とは回旋筋腱板の筋肉の隙間で関節包および靱帯が剥き出しになった部分を言います(より正確にいうと棘上筋と肩甲下筋の間で烏口上腕靱帯・上関節上腕靱帯がある場所になります)。ご覧の通り、筋肉による保護が得られないため、損傷が生じやすい場所とされています。
そもそも四十肩・五十肩は肩関節周囲組織の損傷をきっかけにして、損傷した修復を行うために炎症が起き、修復の結果として組織がカサブタのように硬くなってしまう病気です(詳しくは以下の過去記事をご参照ください)。
そして腱板疎部は肩関節の外旋(上腕骨を外にねじる動き)を制限する作用があるため、ここに炎症が起きて硬くなるとブログタイトルの通り「なんでやねん!」の動きができなくなるのです。
肩関節の構造④ 「なんでやねん」が肩の動きのカギ

四十肩・五十肩のお悩みの1つに「肩が上がらない」というものがありますが、実は肩関節は上げるときに上腕骨は外旋(外にねじる動き)をしています。試しに動きやすい方の肩で内旋(上腕骨を内にねじる動き)をしながら肩を上げようとすると十分に肩が上がらないことがお分かりになると思います。
このように肩を上げる動きには「なんでやねん(肩関節外旋)」が必要不可欠なのです。
ちなみに肩関節の外旋はいろんなポジションで行えることが大切です。

上図の通り、脇を締めた第1肢位(1st position)で行うもの、肩を真横に90度上げた第2肢位(2nd position)で行うもの、前方に90度上げた第3肢位(3rd position)で行うものです。全て行えるようになるのが重要ですが、四十肩・五十肩のように肩関節周囲の組織が硬くなっていると第2肢位、第3肢位をいきなり行うのは難しいため、まずは第1肢位での可動域を広げていくことをおすすめします。
できる範囲で「なんでやねん」ストレッチをする
肩関節の構造および今回の主役の腱板疎部の場所と特性についてお伝えしましたが、腱板疎部を伸ばすためにはストレッチが有効です。第1肢位で行うとなればまさしく「なんでやねん!」の動きを反復するように上腕骨の回旋を繰り返すのが良いです。

しかし、腱板疎部の柔軟性が低下している場合、いざ行おうとすると脇が開くようになってしまって腱板疎部に対して十分なストレッチを加えることができないことがあります。
このように本来の動作や運動を行うのに必要な機能以外で補って行う動作を代償動作(trick motion)と言いますが、脇が開いてしまう代償動作は脇にタオルを挟むようにすると抑えることができます。
腱板疎部が硬くなっていると驚くほど外旋動作ができませんが(5〜10°くらいしかできないこともザラです)、痛みが許容できる範囲・可動域も広げられる範囲で20〜30回程度を1セットとし、1日に3〜5セットくらいを目安に行ってみてください。
ただし、1度硬くなった腱板疎部の柔軟性が数日で改善するということはないため、気長に行うようにしてください。また、運動後に痛みが長引いたりする場合は運動を控えましょう。無理に行うと炎症が再発し、より悪化する可能性もあります。特に炎症を起こしやすいような習慣のある方は注意が必要です。詳しくは以下の関連記事もご覧ください。
ご注意!セルフケアでは限界があるかも…

「なんでやねんを行おうとすると脇が開くことがある」と代償動作の例をお伝えしました。こういった代償動作が生じる原因の1つには、四十肩・五十肩のように関節のある部位が硬くなってしまっていることが挙げられます。
これは物体が動く際には摩擦や抵抗が最小限になる軌道をたどるという法則によるもので、それは人体にも当てはまります。つまり、四十肩・五十肩のように組織が硬くなっている状態でストレッチをする際に代償動作が生じるのはある意味では当然であり、より効果的なストレッチ刺激を加えるには専門家による手を借りるのが手っ取り早いであろうことは間違いありません。
何でも自分でできるに越したことはありませんが、セルフケアでは限界があることもあります。
今回の参考サイト、参考書籍
医療法人社団 祐優会 奥野祐次先生のコラム
Shirley A.Sahrmann 著, 竹井 仁 翻訳, 鈴木 勝 翻訳(2005). 運動機能障害症候群のマネジメント理学療法評価・MSIアプローチ・ADL指導 医師役出版
本日のまとめ:四十肩・五十肩には「なんでやねん」が重要
今回は四十肩・五十肩で硬くなりやすい腱板疎部の構造と特性、そしてそのストレッチとして「なんでやねん(肩関節の外旋)」をご紹介しました。
硬くなってしまった腱板疎部にしっかりとストレッチが行えることができれば良いですが、なかなか上手に行えないこともあります。専門家の手を借りることも視野に入れつつ、気長に取り組んでみてください。
今回のブログ記事も四十肩・五十肩の改善につながれば幸いです。
神奈川県伊勢原市の整体院すいっちでは四十肩・五十肩にお悩みの方に選ばれ、施術させていただいています。ぜひ、以下の画像をタップして当院のホームページもご覧になってみてください。

うーん、五十肩の痛みは落ち着いてきたけど、なかなか肩が上がらないなぁ…。どうにかならないものかな…。