四十肩・五十肩の夜間痛対策 〜痛みで眠れない時の寝方のコツ②〜

肩痛子さん

うーん…やっぱり肩が痛いなぁ…。タオルや抱き枕で二の腕の高さを調整したりしたんだけど…。

宮森

なかなか五十肩の夜間痛やかんつうが改善しないようですね。それでは枕の高さを調整してみてはいかがでしょうか?

肩痛子さん

え、枕の高さも夜間痛に関わってくるんですか?早く枕の調整の仕方を教えてください!

宮森

分かりました!では今回は枕の高さ=首の位置によって夜間痛が出るメカニズムと対策についてまとめていきます。ちなみに以前も夜間痛対策については記事を書きましたので、まだお読みになっていない方は関連記事もぜひご覧になってくださいね。

夜間痛の原因は首にあるかもしれない

「肩や二の腕が痛いのに首が悪いの?」と思われるかもしれませんが、肩や二の腕の痛み・しびれ・重だるさなどと首は切っても切り離せない関係にあります。

今回はこれらをご説明するために少しだけ解剖学的なお話を交えてお伝えしていきます。

しかし「そんなことより手っ取り早く枕の調整法を教えてよ」という方は以下の動画をご覧ください。動画より下の記事では夜間痛の原因が首からくる理由や、首に原因があるかどうかを大まかに把握する方法などもご紹介していきます。ご興味があれば最後までお付き合いください。

首で注目するのは斜角筋

斜角筋しゃかくきんは一般にはなかなか聞く機会のないマイナーな筋肉だと思いますが、実は肩や腕の痛み・しびれ・重だるさに関わってくる重要な筋肉です。しかし、その一方で見逃されやすい印象のある筋肉でもあります。

斜角筋は前斜角筋・中斜角筋・後斜角筋の3つに分けられ、第1、2肋骨から首の骨に付着します。この付着部から首を曲げる、首を横に倒す、首を横に回す、第1・2肋骨を持ち上げるという作用があります。

このことから首の動きおよび呼吸にも関わる筋肉の1つであることがわかります(細かい解剖学は以下の表をご参照ください。専門的に書いてあります)。

名前起始部停止部働き
前斜角筋第1肋骨第3〜第6頸椎横突起頸椎の屈曲、同側側屈、反対側への回旋、第1肋骨の挙上
中斜角筋第1肋骨第2〜第7頸椎横突起頸椎の屈曲、同側側屈、第1肋骨の挙上
後斜角筋第2肋骨第5〜第7頸椎横突起頸椎の同側側屈、第2肋骨の挙上
参考書籍:ジョセフ・E・マスコリーノ 著, 丸山仁司 監修(2017). 改訂新版 筋骨格系の触診マニュアル エルゼビア・ジャパン株式会社

斜角筋は神経を圧迫しやすい

前斜角筋・中斜角筋の間は斜角筋間隙しゃかくきんかんげきと呼ばれ、この斜角筋間隙には肩から指先まで届く神経の束(腕神経叢わんしんけいそう)が通過します。下記画像は首を右前から見たものですが、白丸で囲まれている部分が斜角筋間隙で、通過している太い黄色い線維が腕神経叢です。

斜角筋が緊張して斜角筋間隙で神経が圧迫されてしまうことで痛みやしびれ、重だるさの原因になるとされています斜角筋症候群しゃかくきんしょうこうぐんと呼ばれます)。

斜角筋が原因で生じる症状

斜角筋が原因で生じる典型的な症状としては胸部、背中、二の腕、手首、指先にかけての痛み、しびれ、重だるさがあります(部位は下図参照)。症状はこれら全ての部位に出るのではなく、一部分のみに出ることもあります。

画像:Muscle TriggerPoint Anatomy

このほかにも首を回した時や首を横に倒した時の可動域制限や痛みの出現、指のこわばりや力が入りにくくなる(不意に物を落とす)などがあります。

斜角筋が緊張してしまう原因

斜角筋が緊張してしまう原因としては以下のようなものが挙げられます。

  • 斜角筋に過剰な負荷がかかる(重いものを持つ、強度の高いスポーツを行うなど)
  • 悪い姿勢をとる(猫背、高さの合わない肘掛けを使用するなど)
  • 頭部に強い衝撃を受ける(交通事故や頭を打ったことによるムチウチ症など)
  • 不適切な呼吸をしている(猫背姿勢での呼吸や、風邪や呼吸器系疾患を患っているなど)
  • 骨格が非対称である(肋骨が非対称になり、斜角筋の緊張にも左右差が出る)

参考書籍

Valerie DeLaune 著, 伊藤和憲 監訳(2015). トリガーポイント治療 セルフケアのメソッド 株式会社緑書房

上記に挙げたような明確な原因(事故や強度の高い動作やスポーツをやっている)がない場合、五十肩にお悩みの方は基本的に姿勢が悪く、猫背姿勢になっている方が多いです。

猫背姿勢は肋骨が下方に落ち込みやすく、斜角筋を引き伸ばすような姿勢になります。12対ある肋骨の中でも、特に第1肋骨を持ち上げる働きは前斜角筋・中斜角筋による貢献が大きいため、猫背姿勢を取ることで前斜角筋・中斜角筋への負担は大きくなってしまうことが考えられます。

そのため、五十肩を改善していく上では姿勢の改善も大切になってくることが多いです。

斜角筋に問題があるかの確認法

斜角筋に問題があるかどうかを確認法として以下に挙げるの2つがあります。

これらの確認法(整形外科的検査)は医師や医療従事者が行う検査であり、検査者がいないと正確な検査はできません。しかし、明らかに斜角筋に問題がある場合は検査の手順を行ってみると痛みやしびれが再現されることがあります。検査手順がわかる動画も載せておきます。

Adoson Test(アドソンテスト)

手首で脈拍の減弱や消失を確認するテストです。

ひとりではできないテストですが、以下の手順か動画をご覧いただきながらやってみてください。

STEP

顔を痛みのある方に向け、上を向くように首を反らせる

※医療従事者は手首で脈拍を触知しておく

STEP

手順1のまま深呼吸を行うか、深く吸った後に息を止める

※医療従事者はこの時に脈拍の減弱や消失があるかを触知する

STEP

顔を反対側にも回して首を反らせて、手順2と同様に行う

※医療従事者はこの時に脈拍の減弱や消失があるかを触知する

STEP

確認中に脈拍の減弱や消失が確認できた場合、もしくは痛みやしびれが再現された場合は斜角筋に問題があることを疑う

日本語字幕機能があります。

Morley test(モレーテスト)

首の部分を指先で圧迫し、痛みやしびれが再現されるか、脈拍の減弱や消失を確認するテストです。

押す場所や力を慎重にしないといけませんが、以下の手順か動画をご覧いただきながらやってみてください。

STEP

鎖骨の中央部分の上か、胸鎖乳突筋の外側を指先で圧迫する

STEP

痛みやしびれが再現された場合は斜角筋に問題があることを疑う

日本語字幕機能があります。

参考書籍

吉田一也 編(2022). 整形外科的テスト ポケット手帳 株式会社ヒューマン・プレス

枕でできる夜間痛対策

個人差がありますが、私の経験では枕を高めに設定することで夜間痛が軽減できることが多いです。

特に猫背の方は枕が低めだと首が反った姿勢になりやすく、斜角筋が引き伸ばされて寝ている間も緊張してしまい、夜間痛につながっていることが考えられます。

この場合は枕を高めにすることで斜角筋を緩めることができ、斜角筋からくる夜間痛を軽減できると考えられます。

しかし、まれに逆に枕を低めにすることで夜間痛が軽減する方もいらっしゃるため、さまざまな枕の高さを試していただき、落ち着く高さを探してみてください。

肩の動かしやすさや痛みの具合も確認してみてください。

また、前述した通り前斜角筋・中斜角筋の間には腕神経叢が通っているため、組織を触りわけができない場合は直接圧迫してセルフケアを行うのは危険なことがあります。

手前味噌ですが、以下のストレッチが行える場合はこの方法でセルフケアをすることをおすすめめいたします。

本日のまとめ

今回は枕の高さ(首のポジション)に注目した夜間痛の原因と対策をお伝えしてきました。

しかし、以前のブログでお伝えしたように夜間痛の原因はさまざまで、大抵の場合は原因が重複していることが考えられます(詳しくは以下の関連記事をお読みください)。

夜間痛の原因や基本的な対策方はこちらをお読みください。

また、炎症が強く起きている時期では痛みをゼロにすることが難しいこともありますし、炎症が治った後には柔軟性の低下した筋肉や周辺組織をしっかりと回復させないと血行不良や神経の圧迫による痛みが継続することがあります。

ご紹介した夜間痛対策に加え、筋肉や周辺組織の柔軟性を回復させるアプローチが大切になってきます。

伊勢原市の整体院すいっちでは四十肩・五十肩にお悩みの方に選ばれ、施術させていただいています。ぜひ、以下の画像をタップして当院のホームページもご覧になってみてください。

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