【四十肩・五十肩】右側が痛いとき、左側が痛いときの違いとは?

左肩痛子さん

うーん…五十肩になって左肩が動かないし、痛い…。

右肩痛男さん

私は右肩をやってしまって腕まで痛いんですよ…。

宮森

同じ五十肩なのに左右差があるのって不思議ですよね。中には両方とも痛くしてしまう人もいらっしゃいますが、左右でどんな違いがあるかご存知ですか?

肩痛子さん

確かに、私は右利きなのに左肩が痛くなってる…たくさん使ってるとかは関係ないのかも…。

右肩痛男さん

私はてっきり利き手だからなったのだと思っていました。違いがあるなら教えてください!

宮森

分かりました!もちろん確実なことは言えないのですが「そんなところからも肩に影響が出るの?!」と驚かれるようなお話をしていきます。これを知ると日常生活を振り返るきっかけにもなりますから、参考にしていただけると思います。

四十肩・五十肩に左右差が出る理由

冒頭の会話劇でお伝えしたように四十肩・五十肩でも右側が痛い方、左側が痛い方、両方とも同時に痛くなる方とさまざまいらっしゃいます。

この左右差が生じる原因にはさまざまあり、個人個人でその原因は違い、重複していることが考えられることが多いです。

四十肩・五十肩の原因としてすぐに思いつくのは利き手の左右差が挙げられます。日常生活や仕事、スポーツなどの場面でたくさん使う利き手の方が疲労が溜まりやすく、肩に負担がかかることが考えらます。

他にも姿勢、体の動かし方の癖、骨格の左右差(足の長さが違う)などの結果として肩の負担の左右差につながっていることも考えられます。

しかし、今回はブログではまた別の視点で五十肩の左右差が生じる原因についてお伝えしていきます。

四十肩・五十肩の左右差が生じる原因の1つとは、すばり内臓です。

内臓の状態は肩関節に影響をする

「内臓から四十肩・五十肩につながるの?」と思われるかもしれませんが、実は内臓の状態は肩に限らず全身に影響を与えます。

この内臓と全身(今回は肩)のつながりをお話をする上では解剖学的なつながりをいくつかお話しないといけないのですが、先に結果をお伝えします。

右側の四十肩・五十肩は肝臓、胆嚢、右肺と関係が深く、左側の四十肩・五十肩は胃、心臓、左肺と関係が深いことが多いです。

この後はいくつかの例を挙げつつ、肩関節と内臓の解剖学的なつながりのお話を交えつつ、一般的な対処法もお伝えしていきます。

あまり細かいことをお伝えすると難しくなり過ぎますので極力簡単にまとめるように努めましたが、ご説明をする上では少しばかり専門用語を使用しました。

簡単なまとめは小見出しごとの最後の文章で赤文字にしてあるので、その部分だけでも読み進めていただければと思います。

肩関節と首とのつながり

肩関節にはたくさんの筋肉や靭帯などの組織があり、それらには血管や神経が張り巡らされていますが、ヒトの肩から指先までに張り巡らされている神経は主に首から出てきます。

首から出てくる神経は第1頸髄神経から第8頸髄神経の計8本あるのですが、そのうちの第5頸髄神経けいずいしんけい〜第8頸髄神経けいずいしんけいとその1つ下から出てくる第1胸髄神経の計5本の神経が合わさった腕神経叢わんしんけいそうという神経の束になったものから、再度枝分けれした神経が肩から指先まで張り巡らされています。

腕神経叢のイラスト。イラスト中の”C”はcervical=頚椎・頸髄神経を意味します。

この腕神経叢わんしんけいそうから枝分かれした神経が肩関節より下の筋肉などの組織に張り巡らされ、筋肉に指令を与えたり、触覚や痛みなどを感じ取ったりしていきます。

ここまでの段階では「肩関節の神経は首からきているのだ!」と覚えておいてください。

横隔膜と首、肩とのつながり

内臓についてお話をする前にもう少しだけお付き合いください。今度は内臓と関係の深い横隔膜についてお伝えします。

横隔膜といえば肋骨や腰椎に付着している呼吸に関わる(息を吸うときに働く)筋肉としてご存知の方も多いでしょう。

横隔膜の3Dイラスト。ちなみに焼き肉で言うと肋骨に付着する部位は「ハラミ」で、腰椎に付着する部位は「サガリ」と呼ばれています。

実はこの横隔膜は横隔神経という神経に支配されており、横隔神経は第3頸髄神経から第5頸髄神経で形成されます。

ここでお気づきになるかと思いますが、肩から指先にいく神経の束である腕神経叢わんしんけいそうと横隔膜にいく横隔神経に共通する神経として第5頸髄神経があります。要は根元が同じなのです。

以上のような神経のつながりがあることから、横隔膜まわりに何か問題が起きればその情報が第5頸髄神経をたどり、腕神経叢わんしんけいそうに合流する第5頸髄神経けいずいしんけいにも影響するのです(その逆もまた然りです)。

そしてこの第5頸髄神経の線維が主に張り巡らされるのが肩関節まわりなのです。

ここまでの段階では「横隔膜の神経も首から出てきて、その一部分が肩にいく神経と共通しているのだ!」と覚えておいてください。

内臓横隔膜、首、肩とのつながり

お待たせしました!いよいよ内臓のお話です。

一般的ではないかもしれませんが、内臓はお腹や肋骨の中にそのまま収納されているのではなく、膜組織でさまざまな部位と連結しています。

今回取り上げる肝臓、胆嚢、胃は横隔膜の下にありますがそれぞれ膜組織で横隔膜に連結していますし、心臓と肺は横隔膜の上にありますがこれらも膜組織で横隔膜に連結しています。

分けて描かれていますが肝臓、胃、心臓、肺は横隔膜と直接的に膜組織で結合しています。

つまり、横隔膜に付着している臓器に何らかの問題が生じた場合にはその刺激が横隔膜に伝わり、その情報が横隔神経を伝って第5頸髄神経けいずいしんけいに、そこからさらに腕神経叢わんしんけいそうを通じて肩関節まわりの組織へ刺激がつながっていくのです。

以上のような神経を介したつながりから、内臓の問題が四十肩・五十肩に発展することも十分に考えられるのです。

ここまででの段階で「内臓は横隔膜とつながっていて、内臓の状態が横隔膜の神経を通じて首に戻り、そこからさらに肩に波及していくのだ」と覚えておいてください。

他にもある内臓と横隔膜、首、肩とのつながり

ここまでは内臓〜横隔膜〜首〜肩関節の神経のつながりを中心にお伝えしてきましたが、他にも構造的なつながりもあります。

まず、お伝えしたように肝臓や胃は横隔膜と膜組織で直接的につながっています。

例えば肝臓は大量にお酒を飲んだ翌日や薬などを常時服用していると腫れるという反応をします。胃も食べ過ぎれば負担がかかりますし、精神的なストレスで胃が痛くなった経験をした方もいらっしゃるでしょう。

このように病院で診断されるような病的な状態ではなくても肝臓や胃に不調があると、横隔膜を下に引っ張ることになります。

すると、心臓や肺も横隔膜に膜組織で直接的につながっているため、下に引っ張られることになるのですが、実は心臓や肺は肋骨や胸骨、そして頸椎(首の骨)とも直接的に膜組織でつながっているのです。さて、ここまでの流れを整理すると…

STEP

肝臓や胃の不調が起き、横隔膜が下方に牽引される

STEP

牽引された横隔膜に引かれて、心臓や肺も下方に位置する

STEP

心臓や肺と膜組織でつながっている頚椎(首の骨)が下方に牽引される

STEP

頸椎の位置異常が起き、頸椎から出る神経(頸髄神経けいずいしんけい)に刺激が入る

STEP

頸髄神経けいずいしんけいの刺激が肩関節まわりの組織に波及して、筋肉が緊張したりする

このような構造的なつながりは一般的ではないかもしれませんが、これまでお伝えしたように「内臓の不調が遠いところの不調として表現されることがあるのだ」と覚えておいてください。

このようなさまざまなつながりから、内臓の不調が体の別の部位の痛みとして表現される例として関連痛かんれんつうというものがあります。以下のイラストは関連痛の出る場所の典型例です。

私も学生時代にストレスで心臓が悪くなった際、左腕をのたうち回るほど傷んだ経験があります。

内臓の不調が出てしまう理由

これまでお伝えしたようなお話をする決まって言われることとして以下のようなものがあります。

右肩痛男さん

肝臓が悪いって…お酒は飲まないのですが…。

左肩痛子さん

内臓の不調と言っても…血液検査も特に問題ないって言われてますけど…?

しかし、先ほどお伝えしたように内臓の不調とは病的なものだけを指すものではありません。

また、血液検査で問題がないとしても、それは基準値内に収まっているだけであって正常値ではないことを知っておくことが大切です。血液検査で全てが基準値内の人でも不調を抱えている方はいらっしゃいます(これについてはまたの機会に)。

以下に内臓に不調が現れる理由についていくつか簡単にまとめてみました。

飲食物

お酒(アルコール)、カフェイン、甘いもの、精製された炭水化物、食品添加物、タバコ、牛乳など、個人差はあってもいわゆる嗜好品は内臓の働きを鈍らせ、ダメージを与えるものが多いです。

「お酒といえば肝臓でしょ?」と思いつくかもしれませんが、肝臓の働きはお酒の分解だけではありません。肝臓の働きは細かく分ければ2000種類もの仕事があるとも言われています。ギュッとまとめるだけでも、体に必要な栄養の合成や貯蔵、タンパク質や脂質などの合成と分解、アルコールや薬物など有害物質の解毒・分解、食べ物の消化に必要な胆汁の合成・分泌などがあります。

肝臓ほどではないにしても、内臓は1つの臓器で複数の役割を担っています。意外なことが内臓に不調の原因になっていることがあります。

少し踏み込んだお話をすると、例えばお酒は社会において1番許容されている毒物だと考えられます。「酒は百薬の長」とも言われますが、以前のブログでご紹介したように二日酔いの原因にもなるアルコールの代謝の過程で出てくるアセトアルデヒドは炎症を起こしやすくする物質でもあります。

そして何より四十肩・五十肩は炎症を本態とする病気ですので、炎症を起こしやすくするものを控えるのは肝臓を守るためにも、四十肩・五十肩の再発を防ぐ上でもとても大切だとおもいます。

この辺りは以下の過去記事でもお伝えしていますので、参考になさってください。

感情

「ストレスで胃が痛くなる」という経験をしたことがある方もいらっしゃるように、内臓と感情は切っても切り離せない関係にあります。これは解剖学的には自律神経のつながりもあるのですが、東洋医学の視点を取り入れてみても興味深いです。

下から3つ目の五志=感情の欄に注目です。

例えば、胃は「思」という感情とつながっているとされています。「思」とは悩みを意味するので、やはり精神的なストレスとの関係が深いようです。一方、肝は「怒」ですので、イライラしやすい人・怒りっぽい人は肝が傷つきやすいのかもしれません。

そもそも肩という部位は古くから「肩を怒らせる」「肩を落とす」「肩で風を切る」と言われているように感情が現れやすい部位のようです。

四十肩・五十肩に限った話ではないかもしれませんが、改善に向けては感情との付き合い方も大切になってくることがあります。

内臓の不調を良くする方法

どの内臓に不調があるかによっても対策は異なりますし、もし病的な状態にあれば医学の力を借りることが優先されますが、基本的には食事を中心とした生活習慣を見直すことが大切だと私は考えています。

また、食事においては「何を摂るか?」よりも「何と摂らないか?何を避けるか?」を大切にした方が良いでしょう(それだけ現代の日本は毒物で溢れかえっているとも言えます)。

あくまで一例ですが、当院のお客様には以下に挙げるものをお伝えすることが多いです。

日常生活で推奨されること

  • 水分を1日1ℓ以上を目安に摂取する(水分摂取が少ない人は特に)
  • カフェインや甘いもの、お酒などの嗜好品を控える
  • 精製された炭水化物(白米や小麦粉を使った食品)を控える
  • 保存食を避ける
  • 時間の経過した揚げ物を避ける(揚げ物はできるだけ調理直後を食べる)
  • 旬のものを摂取する
  • 調味料を伝統的な製法のもの天然素材のものに変える
  • 空腹を感じてから食べるようにする(時間で食べない)
  • 体(特にお腹)を冷やさないように常温か温かいものを摂取する
  • 睡眠時間を確保する
  • 睡眠前はリラックスする(深呼吸や睡眠前30分はスマホやテレビを避けるなど)
  • 体力・気力に余裕があれば1日30分のウォーキングなど軽めの運動を行う

「日常生活の改善は無理!」という方へ

こういった生活上の注意点を挙げていくと「そんなの無理!」「食べるものがなくなる!」「楽しみを奪うなんて人でなし!」と言われることがあります。

これまではあくまで整体師目線でお伝えしてきましたが、体のことを考えれば全てを実行できるに越したことはないと思います。しかし、一個人として考えれば、日常生活において好きなものを避け、楽しみがなくなってしまうのはかえってストレスかもしれません。

実際、私もお客様にお伝えする以上は普段はできるだけ気をつけて生活しておりますが、体調を崩さない程度にはコーヒーを飲んだり(それでもカフェインレスを選びますが)、外食をした際には揚げ物を食べることもありますし(一緒に出かけた人に気を遣わせたくないのもあります)、プレゼントでいただいた甘いものを食べることもあります。

ポイントは「体調を崩さない程度に」です。ご自身の心身の健康と生活の質(Quality of Life)とのバランスを考えながら取り組んでみてください。

今回の参考書籍

エリック・U・ヘブゲン 著, 平塚 晃一 監修, 池田 美紀 翻訳(2022). オステオパシーの内臓マニピュレーション ガイアブックス

本日のまとめ

今回は四十肩・五十肩の左右差が出る原因の1つとして、内臓との関係をお伝えしてきました。

あくまで1つの可能性であり、右肩だからといって肝臓が悪い、左肩だからといって胃や心臓が悪いとバッチリ当てはまるわけではありませんが参考になればと思います。

繰り返しになりますが、四十肩・五十肩の初期は炎症が本態である病気です。この炎症を速やかに治め、硬くなった組織の柔軟性を回復していけるかが改善の鍵です。

また、明らかに内臓に不調のある糖尿病の方などは炎症が治りにくいですし、栄養不足の方であれば炎症を起こした組織の材料になる栄養素が少ないわけですから回復が遅くなります。

どちらにせよ、四十肩・五十肩の改善においては内臓の状態はとても大切になってきます。改善に向けた1つの目安になるかと思いますので、今回のブログだけでなく過去のブログも参考になさってください。

神奈川県伊勢原市の整体院すいっちでは四十肩・五十肩にお悩みの方に選ばれ、施術させていただいています。ぜひ、以下の画像をタップして当院のホームページもご覧になってみてください。

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