【四十肩・五十肩】痛む場所は肩だけ?腕も痛いのはなぜ?

右肩痛男さん

いたた…病院で五十肩って言われたけど、二の腕まで痛い…これって変なのかなぁ?

宮森

二の腕まで痛くて大変そうですね。実は四十肩・五十肩でも二の腕や前腕、手まで痛みやしびれ、重だるさがある人はいらっしゃいますよ。

右肩痛男さん

え、そうなんですか?一刻も早く良くしたいけど…とりあえず、なんで二の腕が痛くなるのか教えてください!

宮森

分かりました!では今回は四十肩・五十肩において二の腕や前腕部に症状が現れるメカニズムについてお伝えしていきますね!

四十肩・五十肩で腕も痛いのはなぜだろう?

一般に四十“肩”・五十“肩”と呼ばれ、正式な病名としては“肩”関節周囲炎と言われますが、実際のところは二の腕や肘から先の前腕部、手首、手、指先にまで痛みやしびれ、重だるさを訴える方もいらっしゃいます。このように病名に“肩”とついていますが、腕に症状が出ることは珍しくありません。

以前のブログ記事でも取り上げましたが、五十肩の語源は少なくとも江戸時代にまで遡り、当時の俗語や方言、ことわざを集めた国語辞典とも言える俚言集覧りげんしゅうらんに次のような記載されています。

俚言集覧りげんしゅうらんの五十肩に関する記述

「凡、人五十歳ばかりの時、手腕、関節痛む事あり、程過ぎれば薬せずして癒ゆるものなり、俗にこれを五十腕とも五十肩ともいう。また長命病という。」

このように「五十腕」とも呼ばれていたことから、江戸時代の方々も腕の症状に悩まされていたようです。そのため、四十肩・五十肩と言われて腕に症状があったとしても、ある意味では普通のことだと言うことです(痛みでお悩みなので問題ないとは言えませんが…)。

今回は冒頭の会話劇の通り、二の腕などに痛みが生じるメカニズムや、なぜ腕に痛みなどの症状が出現するのかを人体の構造(解剖学的な視点)からお伝えしていきます。

【そもそも話】四十肩・五十肩で痛みが生じるメカニズム

痛みを理解する上では、痛みが発生している周辺にどのような神経があるのかを知っておくことが大切です。

そもそも神経には筋肉に指示を与える役割だけでなく、触覚、温覚、冷覚、痛覚、圧覚などを知覚する役割があります。この中でも四十肩・五十肩においては痛覚に関するお悩みが多いと思います。

痛みが生じるきっかけもさまざまですが、分かりやすいのは誰もが経験したことがあるであろう何らかのケガをしてしまって炎症反応が起きた時でしょう。

四十肩・五十肩は炎症を本態とする病気ですので、肩関節周囲の組織にトラブルが生じてしまった結果(多くの場合は加齢による組織の変化を基盤として筋肉などの損傷が生じています)、炎症反応が起きてその刺激を神経が知覚して痛みが生じます。これは特に四十肩・五十肩を発症した直後に感じる痛みです。

さらに四十肩・五十肩においては炎症反応が落ち着いた後も緊張した筋肉による血行不調による痛みや、神経自体が緊張した筋肉に挟まれることによっても痛みが生じます。このように四十肩・五十肩においては基本的に炎症による痛みが生じ、その後に二次的、三次的な痛みが重なっていることが多いです。

ここまでは「四十肩・五十肩は炎症(ケガそのもの)による痛みと、血行不良や神経の挟み込みによる痛みがあるのだ」と覚えておいていただければ十分だと思います。

肩関節周囲の神経を知ると痛みがわかる

イラストにあるように肩関節には非常に多くの神経が張り巡らされています。イラストでは肩関節だけでなく指先まで届く神経も描かれていますし、さらにこれらの神経は枝分かれをしていくので実際のところはもっと複雑な構造をしていますです。

これらの神経を全てを語ると膨大な量になってしまうので、誠に勝手ながら四十肩・五十肩においてトラブルが生じやすい神経を痛みの部位別にピックアップしてお伝えしていきます。

肩関節まわりの痛みと神経

書籍によっても少しずつ記載は異なるのですが、肩関節の内部に枝を伸ばすのは肩甲上神経けんこうじょうしんけい腋窩神経えきかしんけい肩甲下神経けんこうかしんけい外側胸筋神経がいそくきょうきんしんけいです。そしてこれらの中でも特に腋窩神経えきかしんけいは肩関節まわりの筋肉や皮膚に枝を伸ばします。

腋窩神経とその枝(上外側上腕皮神経)の図。HUMAN ANATOMY ATLASより

上記の画像で水色に変わっているのが腋窩神経えきかしんけいとその枝(上外側上腕皮神経じょうがいそくじょうわんひしんけい)です。腋窩神経えきかしんけいは筋肉と骨に囲まれたスペースを通過する際に挟まれやすいと言われています。

そのため、肩関節内の炎症や筋肉の緊張によって腋窩神経が挟まれたりすると肩関節まわりや二の腕の上側の方に痛みが生じることがあります。

二の腕の後ろ側や外側の痛みと神経

先ほどの腋窩神経えきかしんけいに近いところを橈骨神経とうこつしんけいが通過していくのですが、この神経は二の腕の後ろ側や外側、さらに前腕部や手の甲側の筋肉や皮膚にまで枝を伸ばしていきます。

橈骨神経とその枝(下外側上腕皮神経)の図。筋肉の奥で色が変わっている部位。HUMAN ANATOMY ATLASより

橈骨神経とうこつしんけいが通過するまわりの筋肉が緊張して神経が挟み込まれると、上記した部位の痛みや重だるさを感じることがあります。

四十肩・五十肩においても腋窩神経えきかしんけいと同じくらいの割合でトラブルが生じやすい神経であり、二の腕の痛みや重だるさのお悩みは橈骨神経とうこつしんけいを解放していくと解消されやすい印象があります。

前腕部の痛み

これまでは肩の後ろ側を通って二の腕や前腕部の後ろ側や外側に出る症状を取り上げましたが、手を後ろに回す動作を行った際に前腕部の親指側に痛みを訴える方もいらっしゃいます。

この症状には筋皮神経きんぴしんけいが関わっていることが多いです。

筋皮神経とその枝(外側前腕皮神経)、右側の二の腕の上で水色に変わっている部位。HUMAN ANATOMY ATLASより。

筋皮神経きんぴしんけいは二の腕の力こぶの筋肉(上腕二頭筋、上腕筋、烏口腕筋)に枝を送って筋肉を動かしますが、実は前腕部の親指側の皮膚にもその枝を伸ばしていきます。これを外側前腕皮神経がいそくぜんわんひしんけいと言います。

肩関節の炎症やインナーマッスルの損傷によって肩関節の安定性が低下した際に力こぶの筋肉が緊張が高まったりするのですが、その際に筋皮神経きんぴしんけいが挟まれることで前腕部の痛みが生じることがあります。

今回の参考書籍

Richard L. Drake 著, A. Wayne Vogl 著, Adam W. M. Mitchell 著, Richard M. Tibbitts 著, Paul E. Richardson 著, 秋田恵一 監修, 翻訳. グレイ解剖学アトラス第2版(2015)エルゼビア・ジャパン株式会社

本日のまとめ:四十肩・五十肩で腕に痛みが出るのはある意味で普通

今回は四十肩・五十肩において二の腕や前腕部に痛みやしびれなどの症状が出ることや、そのメカニズム、トラブルを生じやすい部位についてまとめてみました。

今回の記事は私の経験上の独断と偏見でトラブルが生じやすい部位と神経の関係について取り上げましたが、以前のブログ記事にしたように内臓の不調からも四十肩・五十肩に発展していくことも考えられますので、以下の関連記事もぜひご覧ください。

四十肩・五十肩に限った話ではありませんが、人の体は複雑であるため痛み1つ取ってもさまざまな要因が重なって出ていることが考えられます。改善に向けたアプローチもいろいろと試行錯誤をしていくことがあったりもします。

近日中に本日ご紹介した神経を解放していく方法を投稿いたしますのでお楽しみに!

神奈川県伊勢原市の整体院すいっちでは四十肩・五十肩にお悩みの方に選ばれ、施術させていただいています。ぜひ、以下の画像をタップして当院のホームページもご覧になってみてください。

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