
孫の座り方とか姿勢が気になるのよねぇ…

子どもが習い事でスポーツを始めたんだけど、ケガが心配で…
このような疑問をお持ちの保護者の方、多いのではないでしょうか。私の姪っ子も生後10ヶ月で歩き始めましたが、少々心配になってハイハイやるように姉(姪の母)に進言したことがあります。
実際、子どもの運動発達(乳幼児が首のすわり、寝返り、おすわり、ハイハイ、つかまり立ち、一人歩きといった、日常生活で必要な身体の動きを段階的に獲得していく過程のこと)には「早ければいい」というものではなく、適切な段階を経ることが将来の運動能力や健康に大きく影響することが分かってきています。
今回は理学療法士免許を持つ整体師として(そして時に叔父として)、私がこれまでに経験した4つのケースを通じて、子どもの運動発達で気をつけたいポイントを科学的根拠とともにご紹介していきます。なお、これらは一般的な傾向であり、個人差があることをご理解ください。お子様の発達で心配なことがあれば、必ず小児科医や専門家にご相談することをお勧めします。
もくじ
早く歩けることが必ずしも良いとは限らない理由
結論から申し上げますと、1歳未満での歩行獲得は、必ずしも良いことばかりではない可能性があります(歩行の獲得時期は個人差があるものの、教科書的には1歳前後から「歩き始める」とされています)。

え?!早く歩けるのは発達が良いってことじゃないの?!
と驚かれるかもしれませんが、最新の研究では以下のことが明らかになっています。
ハイハイ期間の重要性
早期に歩行を獲得した子どもの多くは、以下の運動経験が不足する傾向があるとされています。
- ずり這い:お腹を床につけて進む動作
- ハイハイ:四つん這いでの移動
- 高這い:熊歩きや雑巾がけのような動作
これらの手足で体を支えて体を動かす四肢支持運動は、実は以下の発達に極めて重要な役割を果たしているとされています。
- 体幹(お腹や背中)の筋肉の発達
- 肩甲骨周りの安定性
- 股関節の安定性と可動性
- 左右の協調性

学童期への影響
私の経験上、早期に歩行を獲得した子どもが学童期になってスポーツを始めた際に、以下のような特徴がみられることがあります。
- 体幹が不安定で転びやすい
- 競技特有の動き(例:野球であれば投球や打撃のフォーム)の習得に時間がかかる
- バランス感覚に課題がある場合がある
これらの観察は、海外の研究でも支持されており、乳幼児期に発育・発達の過程で自然と獲得する運動の土台となる経験の重要性が科学的に証明されているようです。
運動発達の「やり直し」は効果的
もし、子どもたちの運動発達に気になる点があった場合、運動発達の「やり直し」のアプローチが有効である可能性があります。

原始反射との関係
生まれたばかりの赤ちゃんには「原始反射」という自然な反応があります。通常、成長とともにこれらの反射は統合(消失)されていきますが、時として残り続けることがあります。

原始反射の残存は、以下の影響を与える可能性があります。
- 運動の協調性への影響
- バランス能力への影響
- 学習能力への影響(集中力など)
つまり、原始反射が残存することは運動能力以外にも影響が出ることがわかっているということです。
効果的な「やり直し」運動
研究により、以下のような運動を積極的に行うことで改善効果が期待できることが分かっています。
- 寝返り運動
- ずり這い(匍匐前進のような動き)
- 四つ這い動作
- 高這い(雑巾がけのような動き)
これらの運動を継続的に行うことで、運動協調性や体幹機能の改善が期待できます。

ただし、これらの運動を行う際は、子どもたちの状態を十分に観察し、無理をさせないことが重要です。心配な場合は、小児の発達に詳しい専門家に相談することをお勧めします。
習い事や文化活動での姿勢・動作が体に与える影響
子どもたちが習い事でスポーツや文化活動を始めた場合、競技特性や演奏姿勢に合わせたケアは非常に重要です。私の臨床経験では、長期間特定の姿勢や動作を繰り返すことで、様々な身体の変化を観察してきました。
スポーツ以外でも起こる身体の適応
私がこれまで担当した子どもたちの中で、以下のような事例を経験しています:
- 音楽活動による身体への影響

これらの観察は、最新の医学研究でも支持されており、他にも楽器の特徴によって次のような身体変化や影響が報告されています。
- 弦楽器演奏者の身体変化
- 管楽器演奏者への影響:
成長期特有の問題
そもそも成長期の子どもは、大人とは異なる特徴があります。
- 骨がまだ軟らかく、反復される姿勢に適応しやすい
- 筋肉や靭帯も発達途中で、偏った使い方の影響を受けやすい
- 長期間の特定姿勢により、骨格の非対称な発達のリスクが高い
実際、取るに足らないように感じる些細なことでも、継続もしくは反復するような姿勢・動作の影響を受けてその形態や機能に影響が出る可能性があります。そして、その影響は成長期終了後の生涯にわたって影響する可能性があります。

その他の成長期における身体適応
本記事を書くにあたり、いろいろと調べてみたところ、さまざまな競技・文化活動によって身体への影響が報告されていました。
- 習字・書道:
- ダンス・バレエ:
- スポーツ全般:

座り方が将来の骨格に与える影響
これまでは運動発達やスポーツ、文化活動などが子どもたちの身体に与える影響についてお伝えしてきました。
ここからは日常生活における姿勢が身体に与える影響の例として、座り方に注目してお伝えしていきます。実は、幼少期の座り方や運動習慣は、骨の形にも影響を与える可能性があります。
割り座(W-sitting)と股関節への影響
割り座(英語でW-sitting)とは、お尻を床につけ、両足を外側に曲げて座る姿勢のことです。一般には「女の子座り」とか「ぺたんこ座り」と呼ばれていると思います。

この座り方を長期間続けることで、以下のような影響が考えられます。
- 股関節の内旋(内向き)の習慣化
- 大腿骨前捻角への影響の可能性
- 将来の運動パフォーマンスへの影響
ただし、これらは必ずしも病的なものではなく、適度であれば問題ありません。重要なのは多様な座り方や姿勢を経験させることです。
Wolffの法則と骨の適応
骨は「Wolffの法則」により、加わる力の方向や強さに応じて形を変える性質があります。このことから以下のことが言えます。
- 繰り返される姿勢や動作パターン → 骨の形に影響
- 成長期は特に影響を受けやすい
- 適切な運動経験 → 健全な骨格発達
このドイツの解剖学者ユリウス・ウォルフ(Julius Wolff 1836~1902年)の提唱したWolffの法則は現在でも医学界で認められており、成長期の姿勢や運動習慣が骨の成長と形態の変化を起こす重要性を示す1つの根拠とも言えます。上述した私の上腕骨後捻角増大もこのWolffの法則が働いた例の1つと考えられます。
予防のための具体的方法
本記事で子どもの運動発達や骨の形態の変化について関わる要因についてお伝えしてきたことから、重要なのは「不調が出てからの対処」ではなく、「予防」だと私は考えています。そのためには以下に挙げるような方法がおすすめです。
- 定期的な姿勢チェック:月1回程度の専門家による評価
- 反対動作の実施:楽器演奏とは逆の動きを意識的に行う
- 全身ストレッチの習慣化:特に首・肩・背骨周りを重点的に
- 体幹トレーニング:姿勢を支える筋肉の強化
- 適切な休息:長時間の連続練習を避ける
- 楽器の調整:身長に合った楽器サイズや演奏環境の整備

早期発見・早期対応の重要性
研究により、成長期における適切な介入は以下の効果があることが分かっています。
- 構造的な変形が起こる前の修正が最も効果的
- 多職種連携(音楽指導者・理学療法士・医師など)により予防効果が向上
- 継続的なセルフケア教育により長期的な健康維持が可能
繰り返しになりますが、重要なのは「痛みが出てから対処する」のではなく、「予防的なアプローチ」を取ることです。子どもたちが真剣に取り組む習い事だからこそ、長く健康的に続けられるよう、早めの専門家への相談をお勧めします。
よくあるご質問
ここからはよくある質問に対する回答をご紹介します。これまでの復習代わりにもお読みください。

- Adolph KE, Hoch JE. Motor Development: Embodied, Embedded, Enculturated, and Enabling. Annu Rev Psychol. 2019;70:141-164.
https://doi.org/10.1146/annurev-psych-010418-102836 - Libertus K, Violi DA. Sitting and reaching in 5-month-old infants. Infant Behav Dev. 2016;44:26-36.
https://doi.org/10.1016/j.infbeh.2016.05.003 - Melzer C, Hoffmann N, Heimann M, et al. A Physiotherapeutic Approach to Musicians’ Health – Data From 614 Patients From a Physiotherapy Clinic for Musicians. Front Psychol. 2021;12:568684.
https://doi.org/10.3389/fpsyg.2021.568684 - Goddard Blythe S. Attention, Balance and Coordination: The A.B.C. of Learning Success. John Wiley & Sons; 2009.
https://www.wiley.com/en-jp/Attention%2C+Balance+and+Coordination%3A+The+A.B.C.+of+Learning+Success-p-9780470723620 - Wolff J. Das Gesetz der Transformation der Knochen. Berlin: Hirschwald; 1892.
https://zenodo.org/record/1676103/files/article.pdf - Steinberg N, Siev-Ner I, Peleg S, et al. Injury patterns in young, non-professional dance students. J Sports Med Phys Fitness. 2011;51(2):343-350.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21427658/ - McEwen BS, Gray JD, Nasca C. Recognizing resilience: Learning from the effects of stress on the brain. Neurobiol Stress. 2015;1:1-11.
https://doi.org/10.1016/j.ynstr.2014.09.001 - Piek JP, Dawson L, Smith LM, Gasson N. The role of early fine and gross motor development on later motor and cognitive ability. Hum Mov Sci. 2008;27(5):668-681.
https://doi.org/10.1016/j.humov.2007.11.002
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今回の記事は子どもの運動発達をテーマにお伝えしてきました。なお、背骨の弯曲(S字カーブ)の具合は概ね10歳前後で成人と同じくらいになると言われています。子どもの発達を考える際には姿勢や座り方、背骨の構造、また今回の記事でも触れた股関節(前捻角)などについての知識も参考になるかと思いますので、以下のブログも併せてお読みください。
まとめ:子どもたちの健やかな発達のために
今回は、子どもの運動発達について4つのケースを通じて解説させていただきました。重要なポイントをおさらいしましょう。
- 早期歩行よりもハイハイ期間の充実:四肢支持運動は将来の運動能力の土台となります
- 多様な姿勢・運動経験:一つのパターンに偏らず、様々な動きを経験することが大切です
- 発達の「やり直し」は有効:適切なアプローチにより運動機能の改善が期待できます
- 成長期スポーツでの予防:科学的根拠に基づいた制限とケアにより、多くの障害は予防可能です
子どもの成長は一人ひとり異なります。「他の子と比べて」ではなく、その子なりの成長を見守りつつ、適切なサポートを提供することが大切です。
なお、慢性的な痛みや明らかな発達の遅れ、運動機能の問題などでお悩みの場合は、自己判断せず医療機関や信頼できる専門家での相談をお勧めします。個人の状態に応じたより専門的なアドバイスを受けることが重要です。
神奈川県伊勢原市の整体院すいっちでは、このような医学的根拠と臨床経験の両方に基づいたアドバイスとともに、お子様の発達に関するご相談も承っています。理学療法士の資格を持つ施術者が、一人ひとりに合ったアドバイスを提供いたします。お子様の成長や運動発達でご心配なことがございましたら、お気軽にご相談ください。
ぜひ、以下の画像をタップして当院のホームページもご覧になってみてください。






















うちの子、生後10ヶ月で歩き始めて…歩くのが早すぎるのは大丈夫?