
天気が崩れる前には古傷が痛むんですよね…。
このような経験はないでしょうか。このような天候の変化(主に曇りや雨の時)に伴って生じる不調は、現在では「気象病」「天気痛」と呼ばれています。
今回は気象病について、医学的な根拠から日常でできる対策まで、私の臨床経験も交えながら詳しく解説していきます。なお、気象病の研究は現在も進行中であり、すべてのメカニズムが完全に解明されているわけではありません。また、症状の出方には大きな個人差がありますので、あくまで参考としてお読みいただければと思います。
もくじ
気象病とは何か?その定義と歴史
「雨の日は体が重い」「低気圧が近づくと調子が悪い」といった訴えをよく耳にします。以前は「気のせい」と片付けられることもあった天候と体調の関係ですが、近年の研究により、そのメカニズムが少しずつ明らかになってきました。
実は、日本人の多くが何らかの形で気象の影響を受けているという調査結果もあります。あなたの「なんとなく不調」も、もしかしたら気象病が関係しているかもしれません。
気象病の定義
気象病とは、天候や気象の変化によって引き起こされる、または悪化する身体的・精神的な症状の総称です。具体的には以下のような症状が含まれます。
- 頭痛
- めまい
- 首や肩の痛み
- 関節痛
- 腰痛
- 古傷の痛み
- 倦怠感
- 気分の落ち込み
これらの症状が、気圧・気温・湿度などの気象条件の変動に伴って出現したり、悪化したりする状態を指します。

どれくらいの人が悩んでいるのか?
日本で行われた調査(16,482名が対象)によると、次のような結果が報告されています。
男性:
- 確定診断:20%
- 疑い診断:27%
女性:
- 確定診断:43%
- 疑い診断:35%
つまり、女性の約8割、男性の約半数が何らかの形で気象の影響を受けている可能性があるということです。
また、症状別に見ると、頭痛が最も多く(51.0%)、次いで首肩痛(13.4%)、関節痛(12.8%)、腰痛(7.2%)という順になっています。

気象病の歴史
実は天候と健康の関係は、医学の歴史において非常に古くから認識されていました。
- 紀元前460年頃:ヒポクラテス
「医学の父」と呼ばれるヒポクラテスは、『空気、水、場所について』という著作で、気候と疾病の関係について詳しく記述しています。彼は「病気を神々の罰ではなく、環境要因の結果である」と主張し、医学を迷信から科学へと導きました。
- 19世紀:医学気象学の発展
19世紀のヨーロッパでは、正確な気象測定が可能になったことで、医師たちが気象データと疾病の関連性を体系的に研究し始めました。しかし、当時の研究方法では明確な関連性を証明できず、一度は衰退してしまいます。
- 20世紀後半から現在:科学的再評価
1990年代以降、ドイツを中心に気象医学(biometeorology)の研究が再び活発化しました。ドイツでは国の気象サービスが医師向けに日々の天気予報と健康アドバイスを提供するまでになっています。
日本国内の調査(2023年愛知医科大学・田中佑美氏らの報告)では、低気圧と頭痛・関節痛の関連がみられると報告されています。
気象病が起こるメカニズム

なぜ天気が変わると体調が悪くなる人がいるの?
当然このような疑問が生じると思いますが、私が調べた範囲で現在わかっていることを解説します。
内耳(前庭器官)が気圧を感知する
気象病の主要なメカニズムとして、気圧変化が内耳の前庭器官を刺激することが動物実験で明らかになっています。
研究例:
マウスを使った実験で、気圧を1013 hPa(標準気圧)から973 hPa(マイナス30 hPa)まで約50分間かけて低下させたところ、脳の平衡感覚を司る部分(上前庭神経核)で神経活動が有意に増加することが確認されました。
つまり、私たちの耳の奥には「気圧センサー」のような機能があるということです。

どのくらいの気圧変化で症状が出るのか?
日本人の片頭痛患者34名を対象とした研究では、次のような結果が報告されています。
- 気圧が1003〜1007 hPaに接近したとき
- または6〜10 hPaの低下があったとき
このような気圧の変化があった時に頭痛を感じることが多いとされています。これは標準気圧(1013 hPa)よりも少し低い圧力レベルです。
自律神経のバランスが崩れる
気圧の変化を内耳が感知すると、その情報が脳に伝わり、自律神経系に影響を与えます。
自律神経とは?
- 交感神経:体を活動モードにする(緊張・興奮)
- 副交感神経:体をリラックスモードにする(休息・回復)

気象の変化により、この2つのバランスが崩れることで、さまざまな症状が現れると考えられています。
特に、気圧が低下すると副交感神経が優位になりやすく、これが倦怠感や眠気、頭痛などを引き起こすメカニズムの一つとされています。
ストレスホルモンの変動
気候変動は、体のストレス応答システム(視床下部 – 下垂体 – 副腎系)を活性化させ、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌に影響を与える可能性も指摘されています。

神経伝達物質への影響
季節性の気候変動は、セロトニンやドーパミンなどの神経伝達物質の代謝に影響を与えることも研究で報告されています。これが気分の変動や精神的な不調につながる可能性があります。
気象病になりやすい人の特徴
気象病には明確な「なりやすい人」の特徴があることがわかっています。
1. 性別:圧倒的に女性に多い
前述の日本の調査でも明らかなように、気象病は女性に多く見られる傾向があります。
- 女性の確定診断率:43%
- 男性の確定診断率:20%
女性の方が2倍以上高い結果となっています。
なぜ女性に多いのか?
女性ホルモン(エストロゲン)の変動が自律神経系や気圧感受性に影響を与える可能性が指摘されています。特に月経周期、妊娠、更年期などホルモンバランスが変動しやすい時期は注意が必要です。

2. 既往歴・基礎疾患がある
以下のような疾患を持つ方は、気象病になりやすいことが報告されています。
- 片頭痛
- 関節リウマチ
- 線維筋痛症
- 変形性関節症
- メニエール病(めまいや耳鳴りを伴う内耳の病気)
私の経験でも、これらの疾患がある方は天候による症状の変動を訴えることが多い印象があります。「明日は雨だなぁ…関節の痛み具合で天気予報できるんだよ」なんておっしゃる方もいらっしゃいました。
3. 心理的な特徴
気象病のリスクを高める心理的特性として、次のようなことが研究で同定されています。
- 自己効力感が低い:「自分では痛みに対処できない」と感じやすい
- 破局的思考:痛みを過度に否定的に捉える傾向がある(「この痛みは一生続くのではないか」など)
- 恐怖回避信念:動作への恐怖が強い
これらの心理的要因があると、実際の気象変化に対する体の反応が増幅される可能性があります。
4. 内耳の感受性が高い
内耳の前庭器官が気圧変化に対して過敏な方は、気象病になりやすいと考えられています。例えば、次のような方が挙げられます。
- 乗り物酔いしやすい
- 高い場所が苦手(高所恐怖症)
- エレベーターやエスカレーターで気分が悪くなる
これらに当てはまる方は、前庭器官の感受性が高い可能性があり、気象病にもなりやすいかもしれません。
私の経験から見える個人差の重要性
整体師として多くの方の施術をさせていただく中で、気象病については以下のことを強く感じています。
1. 症状の出方は本当に人それぞれ
同じ気圧変化でも、症状の出方は大きく異なります。
- Aさん:頭痛が主な症状
- Bさん:古傷の痛みが増す
- Cさん:とにかく眠くて倦怠感が強い
- Dさん:特に何も感じない
このように、気象の影響を受けやすいかどうか、どんな症状が出るかは個人差が非常に大きいのです。
2. 「閾値」がある
私自身の経験や観察から、気象病には「閾値(いきち:感覚を起こさせるのに必要な、最小の強度や刺激など量)」があると感じています。
つまり、「この程度の気圧変化なら平気だけど、これを超えると症状が出る」という個人ごとのラインがあるということです。
3. 体調や疲労度で変わる
同じ人でも、その時の体調や疲労度によって気象の影響の受けやすさが変わります。
- 疲れているとき
- 睡眠不足のとき
- ストレスが多いとき
こういった体調の時は、普段は平気な気圧変化でも症状が出やすくなる傾向があるように思います。
4. 生活習慣の影響
日頃から運動習慣がある方や、規則正しい生活を送っている方は、気象病の症状が比較的軽い印象があります。
気象病への対策方法
ここからは、気象病への具体的な対策方法を、医学的アプローチと整体的アプローチの両面からご紹介します。
医学的アプローチ
まずは現代医学的に一般的に行われているアプローチをご紹介します。
1. 予防的な薬の使用
天気予報で気圧の低下が予測される場合、事前に以下のような薬を服用することで症状を軽減できる可能性があります:
- 抗めまい薬
- 鎮痛薬(頭痛がある場合)
※ただし、薬の使用については必ず医師や薬剤師に相談してください。整体師の立場から、特定の薬をお勧めすることはできません。

2. 運動
気象病に対して、運動が有効であることが研究で示されています。
運動には「運動誘発性鎮痛(Exercise-Induced Hypoalgesia)」という効果があり、痛みの閾値を上げる働きがあることがわかっています。
おすすめの運動:
- ストレッチング
- ウォーキングなどの有酸素運動
- 筋力強化運動(無理のない範囲で)
重要なポイント:
研究によると、運動の強度や時間を自分で決定することが重要だとされています。無理に頑張るよりも、自分のペースで続けられる運動を選ぶことが効果的です。

3. 心理的アプローチ
気象病には心理的要因も関係しているため、次のような取り組みも有効です。
- 認知行動療法的アプローチ:痛みへの考え方を変える
- マインドフルネス:今の感覚に意識を向ける
- リラクゼーション法:深呼吸や瞑想など
気象病があることは事実ですが、自分の中で「天気が悪くなる=絶対に調子が悪くなる」という“決めつけ”がある場合は、それを緩めることも大切です。専門家によるカウンセリングも有効でしょう。

整体的アプローチ
整体師の立場から、気象病対策としてお伝えできることをご紹介します。
1. 首・肩周りのケア
気象病の方の多くは、首や肩周りの筋肉が緊張しています。
- 自分でできるケアの例:
これらにより、首周りの血流が改善し、自律神経のバランスも整いやすくなります。

2. 耳周りのマッサージ
耳のマッサージを行うことで、耳周囲の血流が良くなり、気象の変化による不快感が軽くなると感じる方もいます。医学的に確立した治療法ではありませんが、セルフケアとして安全に実践できます。
- 耳のマッサージ方法の例:
- 耳たぶを軽くつまんで、上下左右にやさしく引っ張る
- 耳全体を手のひらで覆い、円を描くようにマッサージ
- 耳の後ろ(乳様突起)を優しく押す
※痛みを感じない程度の力加減で行ってください。

3. 姿勢の改善
慢性的な不良姿勢は、自律神経のバランスを崩す一因となります。
- チェックポイントの例:
姿勢や筋肉のバランスを整える整体は、症状の軽減をサポートする可能性があります。ただし、医学的な治療が必要な場合は、医師の診断を受けてください。

姿勢については「正しい姿勢は存在するのか?ヨガvs.太極拳でメリット・デメリットを考える」という記事も書いておりますので、参考になさってください。
生活習慣での予防
医学的なアプローチや整体的なアプローチに加え、もちろん日常生活における習慣も重要です。
1. 規則正しい生活リズム
自律神経を整えるために最も重要なのが、生活リズムの規則化です。
- 毎日同じ時間に起きる
- 食事の時間を規則的にする
- 十分な睡眠時間を確保する(7〜8時間が目安)


2. 気象情報の活用
天気予報で気圧変化を事前に把握することで、心の準備ができます。
- 気圧予報アプリの活用
- 症状が出やすい日は予定を詰め込まない
- 早めに薬を準備しておく


3. 水分補給
気圧の変化は体内の水分バランスにも影響します。こまめな水分補給を心がけましょう。


水分摂取については「肩こり・腰痛は水分不足が原因かも?今日から始める水分補給とその重要性」という記事を書いておりますので参考になさってください。
4. 温度管理
急激な温度変化も自律神経に負担をかけます。
- 冷暖房の設定温度に注意
- 重ね着で調整できる服装を選ぶ
- 冷たいものの摂りすぎに注意


5. ストレス管理
日常的なストレスは気象病を悪化させる要因となります。
- 趣味の時間を作る
- 十分な休息をとる
- 無理をしない


気象病との上手な付き合い方
気象病は完全に予防することは難しいかもしれませんが、上手に付き合っていくことは可能です。
1. 段階的なアプローチで改善を目指す
いきなり完璧を目指すのではなく、できることから少しずつ始めましょう。
ステップ例:
- まず生活リズムを整える
- 簡単なストレッチを習慣化する
- 耳のマッサージを取り入れる
- 必要に応じて専門家に相談する
2. 自分の「パターン」を知る
症状日記をつけることで、自分なりのパターンが見えてきます。
記録するとよい項目:
- 日付と天気
- 気圧の状態
- 症状の種類と程度
- その日の体調や疲労度
- 前日の睡眠時間
パターンがわかれば、対策も立てやすくなります。
3. 完璧を目指さない
「気象病を完全になくす」ことを目標にすると、かえってストレスになることもあります。
「症状が出ても、以前より軽くなったかも」
「回復が早くなったかも」
こういった小さな改善を喜ぶことも大切です。
4. 専門家との連携
次のような場合は、遠慮なく専門家に相談しましょう。
- 医療機関への相談が望ましいケース:
- 症状が日常生活に大きく支障をきたしている
- 持病や服薬中の薬がある
- 症状が徐々に悪化している
- めまいがひどく、転倒の危険がある
- 整体などの相談が向いているケース:
- 慢性的な首肩こりや姿勢の悪さがある
- 筋肉の緊張が強い
- 運動習慣がなく、体が硬い
- 自律神経のバランスを整えたい
※整体は医療行為ではありませんが、体の状態を整えることで症状の軽減をサポートできる場合があります。ただし、病気の診断や医学的な治療は医師にしかできませんので、まずは医療機関を受診されることをお勧めします。
5. 周囲の理解を得る
気象病はまだ十分に認知されていないため、「怠けている」「気のせい」と誤解されることもあります。家族や職場の方に、気象病について説明しておくことで、理解と協力が得られやすくなります。一つに絞るのは難しいですが、規則正しい生活リズムと適度な運動習慣が基本となります。これにより自律神経のバランスが整い、気象変化への適応力が高まります。
よくあるご質問
ここからはよくある質問に対する回答をご紹介します。これまでの復習代わりにもお読みください。


- Tanaka Y, Sato J, et al. Lowering barometric pressure induces neuronal activation in the superior vestibular nucleus in mice. Front Behav Neurosci. 2019;13:11.
doi:10.3389/fnbeh.2019.00011 - Blăjuț CM, Olaru M, et al. Meteoropathy: a review on the current state of knowledge. J Med Life. 2023;16(6):727–735.
doi:10.25122/jml-2023-0087 - Morimoto M, Tanaka Y, et al. Epidemiological study of meteorological factors and onset of chronic pain and headache in Japanese adults. PLoS One. 2024;19(10):e0311489.
doi:10.1371/journal.pone.0311489 - Tajika T, et al. Weather conditions and Ménière’s disease: A longitudinal analysis in the UK. Eur Arch Otorhinolaryngol. 2017;274(2):853–861.
doi:10.1007/s00405-016-4293-y - Paladini ER, et al. Weather-related pain or meteoropathy has been attracting attention: connecting climate and health. J Pain Res. 2021;14:3415–3428.
doi:10.2147/JPR.S325054
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今回の記事では気象病をテーマに、科学的な研究結果や私の経験を交えてまとめてきました。気象病の対策として、日常生活の見直しも重要であるケースも多いため、以下のような関連記事もぜひ参考になさってください。
まとめ:気象病は個人差がある
気象病について、これまでの内容をまとめると以下のようになります。
- 気象病は科学的根拠のある現象である
内耳の前庭器官が気圧変化を感知し、自律神経系に影響を与えることが研究で明らかになっています。「気のせい」ではなく、体のメカニズムとして起こる現象です。
- 気象病は個人差が非常に大きいものである
これらすべてに大きな個人差があります。他人と比較するのではなく、自分自身の体の反応を知ることが大切です。
- 気象病の対策は多角的に行いましょう
単一の方法ではなく、次の方法を組み合わせた総合的なアプローチが効果的でしょう。
- 生活習慣の改善:規則正しいリズム、十分な睡眠
- 運動習慣:ストレッチ、ウォーキングなど
- 体のケア:首肩のケア、耳のマッサージ、姿勢改善
- 気象情報の活用:事前の心構えと準備
- 専門家との連携:必要に応じて医療機関や整体の活用
- 完璧を目指さず、上手に付き合いましょう
気象病を完全になくすことは難しくても、症状を軽減し、影響を最小限にすることは十分可能です。
- 重要なのは…
最後に、症状が日常生活に大きく支障をきたしている場合や、徐々に悪化している場合は、必ず医療機関を受診してください。適切な診断と治療が最も重要です。
その上で、体の状態を整えるためのサポートとして、整体などの施術も選択肢の一つとなります。神奈川県伊勢原市の整体院すいっちでは、気象病でお悩みの方の体調管理もサポートさせていただいています。首肩のケアや姿勢改善、自律神経のバランス調整など、お気軽にご相談ください。
気象病と上手に付き合いながら、快適な毎日を送れるよう、一緒に取り組んでいきましょう。
ぜひ、以下の画像をタップして当院のホームページもご覧になってみてください。






















雨の日になると頭が痛くなってしんどい…。